第1章5話:理由
次の日の俺の目覚めも衝撃と共に訪れた.
「だから,起きなさいって言ってんのよ!」
「グフッ!」
火凜の言葉と同時に,腹に衝撃が来て目が覚めた.
「何すんだよ!毎回,毎回!ちっとは普通に起こせよ!」
と腹を押さえつつ,火凜に抗議するが,火凜は気にせずに,
「さっさと着替えて来なさい.もうみんな待ってるのよ.着替えるまで外で待ってるから.」
と言うとすぐに外に出て行った.
「ったく,まあいつものことか.着替え着替えっと.」
と頭を切り替え,いつもの部屋のようにタンスに向かおうとするが部屋が違うことに気が付いた.
「そっか,別の世界に来たんだよな.」
と,言いながら昨日の宴会の後の話を思い出していた.
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昨日,宴会が終わると俺達はオレルアンから,ここで滞在するために部屋が与えられた.
そして,サラにそれぞれの部屋に案内された後,四人で話あった.
「火凜!何であんなこと言ったんだ!」
と俺が言うと,火凜はこともなさげに,
「あんなことって?」
「だから,ここに留まるとか,この世界のことを教えるとか,戦い方を教えるとかだよ!」
「ああ,そのこと.だったら逆に聞くけどここは何処?」
「何処って,アールヴヘイムだろ.さっき言ってたじゃないか.」
「違うわよ!おそらくだけどゲームに似た異世界よ.」
「「「えっ.」」」
火凜の言葉と共に俺達に衝撃が走った.
「さっきの話の中で王様が”迷い人”は別の世界から人達の総称だって言ってたのよ.それに少年少女が多いとも.推測だけど,私達にはこの世界に来る何らかの適性があったのよ.だから,私達はこの世界に来て,お父さんの捜査官達には何も起きなかったんだわ.」
俺達は言葉を失うしかなかったが,火凜はまだ話を続けていた.
「それにね,この世界を救うことが元の世界に無事に帰れる唯一の方法だと思うわ.生徒会室で行方不明者と意識不明者の話をしたわよね.推測だけど,このゲームに適性があるとこの世界に飛ばされるから,行方不明になる.そして,この世界でGAMEOVERになると元の世界に意識不明となって戻る.だから無事に帰るにはこの世界を救うしかない.」
俺達は今度は絶句するしかなかった.
「じゃ,情報を集めるためにここに留まるって言ったのか.それとこの世界に来た適性っていう原因も知るために.でも,戦い方を教えるってどういうことだ?」
と,火凜の行動が分かった所で,新たな疑問点を問いかけた.
「それは・・・」
「それは?」
「・・・・っ・・・たのよ.」
「何?」
「足手まといになりたくなかったのよ!」
と火凜は顔を真っ赤にして怒鳴った.
「あの森の熊の時,私はただ剣を持って逃げるだけで何も出来なかった.だから,戦い方を覚えたいの.無事に4人で帰るために.」
怒鳴りながらも,火凜の目には決意に満ちていた.
それに続けて,美南さんも
「火凜.私も頑張る.今日は駄目だったけど次は助けられるように.」
と続いた.圭介も
「そういうことなら俺も協力しよう.何かアドバイスできるだろうしな.疾風もいいよな.」
と言い,俺も頷いた.
「でも,戦い方なら圭介に言ったら今みたいに教えてくれるだろうに,何であの場で言ったんだ.」
と苦笑しながら言うと,火凜は,
「何でって.魔法も教えてもらわないといけないからよ.」
と返した.
「美南さんのためにか?」
と俺が言うと,
「それもあるけど,私達も使うのよ魔法.だって”MagicSoldiers”だもの.」
と言った.
すると,
「その通り~.いや~明日言うつもりだったんだけど,賢いね,君たち.」
とオレルアンが部屋に入ってきた.
「いや,君たちの明日から着る服を仕立てるから,サイズを教えてもらおうと君たちを探してたんだけど,4人で集まって,そんな話をしているとは.さすがは救世主たちかな.」
とにこやかな笑顔で答えていたが,急に真剣な表情になり,
「サラ達と仲良くしてくれるって言ったのは,魔法の情報を聞きやすくなるかな?」
と言った.俺達はオレルアンの威圧感に立ちすくんだが,火凜は,
「それも,会った最初は考えていたけど.違うわよ.城まで話しているうちにサラと仲良くしたいって思ったの.」
と答えた.
「なぜだい?」
とオレルアンが言うと,火凜は満面の笑顔で,
「なぜって,その方が面白いからよ.異世界で友達ができるなんて,あっちの世界でいたころには考えてもなかったんだから.」
と言った.俺達はその言葉を聞くと,吹き出した.
「面白いって,お前.確かにな,せっかく異世界に来たんだし,楽しむか.」
と俺が言うと,圭介も
「面白いかどうかはともかく,アルフレッドは一度戦わないと,熊を一刀両断できる奴と戦える経験は滅多にないからな.」
美南さんも,
「私もサラちゃんとは仲良くしたいな.そんなこと関係なく.」
といった.
オレルアンはその言葉を聞くと,
「そうか.なら,いいんだ.」
と素っ気なく言っていたが,その顔はにやけていた.
そして,顔を引き締め,
「まあ魔法のことは明日詳しく言うから服のサイズを教えてくれるかな?」
と言いだし,その日はそれでお開きとなり,就寝したのだった.
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「まあ,魔法ねえ」
と服を着替えて,つぶやくと俺は部屋を出た.そして,踏み出す足は軽やかでわくわくするのを止められなかった.




