第1話 その①
長坂青空
初めまして。今回、山葵大福さんと加良奈志翠さんと作らせていただくことになりました長坂青空です。普段は別サイトで読専してます。
物語を完結出来るように頑張るので、この作品をよろしくお願いします。
加良奈志翠
はじめまして。山葵大福さんと長坂青空さんとの合作に参加しました。加良奈志翠です。
よろしくお願いします。
何もコメントが思い浮かばなかったので、好きな食べ物を書いておきます。
キュウリのぬか漬け
二人からの一言
設定をドカドカに盛り、濃厚にしておきました
山葵大福
ナガサカ セイラ、カラナシ ミドリらしいです
ミドリは大学時代の友人、セイラは趣味で繋がった友人です
あー、元ネタは私ですが設定をもりもり、内容激濃にしたのは二人です
私が投稿した二作品の濃さだと思ってると胃もたれしますよ
満腹にトッピング全マシ豚骨ラーメンを食べるくらいの覚悟でオネシャス
セイラが脚本で書いたものを私が小説に書き直したので、文体は私です
気にする人はいないと思いますが、一応
あ、一部コピペしたのでそこはセイラです
軽度の流血表現あり
この国は政府から許しを得た者だけが創作を許されている。彼らは一律に創作者と呼ばれ、創作の為であればおおよそのことは許される。創作者でない者は、皆快く己の身を差し出している。それだけ創作者に選ばれることは大変光栄なことであり、拒む理由はないのだ。
男は遠近感がつかめないほど真っ暗な部屋を進んでいた。前方には唯一スポットライトで照らされた場所があり、腰程度の高さがある台が置いてある。台の前まで進むと、台の上には目もくれず、そこで片膝をついた。
「隠、参りました」
上の方から男の声で司令が飛ぶ。
「次の仕事だ。創作者の資格(我らからの許し)を得ずに活動している者を削除しろ」
「仰せのままに」
気配でスピーカーの電源を切られたのを確認すると、台の上をみた、
紙が一枚、置かれておりターゲットの情報が書かれている。
都内のマンション、五階の一室は井戸口 陽の自宅である。
スタンドライトのみ付けた部屋でカタカタとキーボードを叩いている。
「うー、んッ」
手を止めて思い切り伸びをする。時計を確認すると時刻は十二時を回ろうとしている。なんとなく書いている展開が気に入らず、いじっていたらこんな時間になっていた。
「本格的に行き詰まちゃったな」
コロコロとマウスホイールを操作してページを送るのを眺める。
「どうしよっかなあ」
座ったまま近くの戸棚をあけてあるものを取り出す。
「動くな」
首筋に何か冷たい気配がするのと同時に男の声でそう言われた。
しかし、陽は動揺どころか少し笑って言った。
「久しぶりの殺し屋さんだ。誰の依頼?」
冷たい気配が少し下に移動する。背もたれは布製なので、そのまま貫こうという考えなのだろう。
「誰で──も──いい」
そこまで言うと、ゴトンと何かが落ちた音がした。
「さすがに無味無臭無色透明なガスは防ぎようがないよねえ」
陽が殺し屋の顔を拝もうとイスを回転させると、顔にはガスマスクがはめられていた。
「いつの間に──ガスマスクなん──か」
男は四つん這いになり、何とか耐えているように見える。
「だって、この部屋を訪ねてくるのって君みたいなのか、何でも屋さんしかいないもん。何でも屋さんには今何も頼んでないからさ。まあ、一応ね」
「何──した──」
「安心して。ただの催眠ガスだから」
「この──」
男は陽の襟首を掴んだが程なくして力なく崩れ落ちた。
「今回はどうしようかなぁ……」
「いつっ……くうー……」
陽は朝食の準備中、左腕を抑えてしゃがみこんだ。
見ると左腕には痛々しく包帯が巻かれており、少しばかり血が滲んでいる。先日、同じように襲われ、なんとか撃退はしたのだが、前腕を全体的に縫う大ケガをしてしまった。
「ん……」
昨夜、襲ってきた殺し屋の男は両手足を拘束して床に転がしてある。
腕の痛みを耐えるためにしゃがんだことで、顔に日光が当たり、起きてしまったようだ。
「あ、おはよー、どう? 気分は?」
男は答えず縄抜けしようともがくが、対策として親指も拘束してあるので、難しいようだ。
「もしもーし。おくち、無くなりましたか?」
ツンツンと頬をつついてみるが、依然として返答はない。
「返事くらいしてくれてもいいのに」
不貞腐れた様子で、朝食の準備を再開した。
パンが焼けても、それを食べ終わっても男は一言も発しなかった。
男が縄抜け以外の行動をしたのは、陽が食後のお茶を半分ほど飲み終わったころだった。以前出版した仲間の小説を読んでいると何か硬いものが力強くこすられる音がした。何回か聞いている間に硬いものは歯だと予想がついた。
「お探しのものはこれ?」
陽は小説に目を落としたまま、小さな袋を男に見せた。
袋には液体の入ったカプセルが入っている。
「殺し屋ってだいたい自決用の毒を歯に隠してたりするもんねぇ。死なれると困るから外させてもらったよ」
男は「ははは」と自嘲気味に声を漏らした。
「望みはなんだ……」
「望み?」
陽はなおも小説に視線を落としたまま訊いた。
「任務は失敗した。抵抗も出来ず、自決用の毒もとられた今、私はただのゴミでしかない。戻っても処分一択。ターゲットに処分されていないのなら何か私にやらせる事があるのだと推測する」
パタンと手を合わせるように本を閉じる。すうっと目を細め、遠くを見つめたあと、男に訊いた。
「何かやらせるとして、何させると思う?」
「捕虜を捕まえてやることは二つ。一つは人質とするため。もう一つは道の情報確保のため。前者の場合、私はすぐさま自決を図るため違うと思われる。そのため、私に望むのは後者と思われる」
会心の笑みを浮かべると男を起こしてあげた。
「じゃあね、質問その一、君の名前は?」
「隠。隠れると書いて隠」
「その二、名前からして隠密が得意?」
「得意ではない。それしか任されたことがないだけだ」
「その三、私の暗殺は誰の指示?」
「それはターゲットのお前が一番良く理解してるはずではないのか」
「分からないから訊いてるんだけどなあ。私、非正規創作者ってだけで特に何もやって無いし」
隠は次の質問を待っているのか黙っている。
「それだけ分かればいいや。あ、ご飯食べる? トーストで良い?」
陽は立ち上がって隠の分のトーストを焼き始める。
「……それだけ、か? 依頼人の特定は?」
「特定してどうするのさ。目星はついてるし。さすがに1日とはいかないけど週に何人かはくるからさ、気にしてられないの。してる時間ももったいないし。逆に私に訊きたい事ある?」
「……お前は何故資格を取らずに創作をしている?」
「え、そんなの楽しいからに決まってんじゃん」
陽は何を当然のことを訊いているのだろう、という顔で答えた。
「創作ってね、世界の創造なんだよ? 自分の手で自分の世界を作り上げる、それの楽しさったらそれはもう一度味わったらやめられない。例えどんなに苦しくてもね。……それに暗殺者なら知ってるでしょ? 私の親、創作者だったって」
「資料で知った。非正規創作者に関わり死んだ、と」
陽はピタッと動きを止めた。空気が張り詰めたのが良く分かる。
「違うよ。国に殺されたんだよ」
「次いで問う。非正規創作者は何故、創作者の資格を取得しない?」
「あー、あったねぇ。そんなの」
「……れっきとした国家資格だと認識しているが」
陽は焼きあがったトーストにバターを塗る。塗った端から融けて染み込んでいく。
「資格……資格ねぇ。うーん、…………うん。だってアホらしいじゃん」
「アホらしい?」
「言っちゃえば創作は自分の妄想を形にしたモノだからねぇ。それをするのに国の許可がいるぅなんて考えるまでもなくおかしくない? アホらしくない? だから私は資格を取らない。取ろうとも思わない」
「理解不能……結局、最期まで非正規創作者の考えは理解できない」
「……最後?」
「私は今から処分される。尋問らしい尋問も無かった。お前じゃなくても帰れば確実に処分されるのが決まりだ」
「あー、覚悟してるとこ悪いんだけどなんの為に捕まえたと思ってるの?」
「私から情報を引き出し、創作に利用するためだと」
「違うよぉ、君を生かしたのは私の護衛になってもらおうと思ったからだよ」
「護衛? 私はお前を殺そうとした。そばに置く事の意味が不明」
「それでもいいんだよ。それに」
陽は鏡を持ってきて隠に向けた。
隠の首には幾本のコードが巻き付き、中央には黒い粉末が入った容器が吊るされている、爆弾付き首輪と形容するのがふさわしいものが巻き付いていた。
「それなら私を殺せないでしょ?」
「これで私を制するつもりか?」
「それ、私が死んだら爆発するようになってるから」
「生体認識付きは悪趣味だと思うが。後悔してもあとには戻れないが?」
「しないよ。あとに戻れないのはこっちも同じ」
隠のため息を了承と捉えた陽は拘束を解いた。
「さ、まずはご飯食べよ?」
陽が手を差し伸べると隠は掴んで立ち上がった。
「腹が減っては活動できぬって言うしね」
「訂正を求める。『腹が減っては戦ができぬ』」
「今の時代、戦も活動も同じだよ」
彼が来て数日が経った。
寝室で陽が着替えようとボタンに手をかけるとーー
「主、起きた──」
咄嗟に枕を手に取り投げつける。
「隠世、ノックをしなさい!」
「主の動きは気配で分かる」
彼には隠世の名を与えた。隠世はなんなく枕をキャッチしたあとに答えた。
「はあ……ノックは一般常識だよ」
「一般常識……」
「君はもう私のものになったんだから、これからは暗殺者としてじゃなく、一般常識を身につけて『人間』になってもらいたいんだけど?」
「名前も?」
「そう。由来は言ったでしょ?」
二日前に行われた闇の創作市、Black Culture Market 通称BCM。廃校舎で行われたそこで敵に襲われたのだ。それを名づけ前の隠が撃退した。
BCMはピエロが取り仕切っており、格好も話し方も道化そのものだが、その時だけは普通の話し方をしていた。普段と違う話し方をされるとそれだけで威圧感がある。
戦闘の結果、荒れた教室の中でピエロから告げられる。
「名付けを。隠はここで死んだ。それを我らに宣言せよ」
陽は少し考えて決めた。
「君の名前は、かくよ。隠れる世界と書いて隠世」
「隠世……彼岸」
隠世の意味を瞬時に察してくれた陽は静かに微笑んだ。
「でも意味は違うよ」
「意味?」
「創作を制限されたこの世界は、あの世と同じ。あの世から隠れて私も君も存在するって言う意味」
「隠世……」
隠は、隠世は自分の新たな名前を噛みしめた。
「『創作を制限された世界から隠れて存在する』……主、質問がある」
「おっ、良いねぇ。どんどん疑問を持って感情を育てよっか」
「表の世界から隠れるのに一般常識を身につける必要性が分からない」
「あー、確かに。表社会から弾き出されて生きてる私達は、一般の常識は必要無い、のかも知れない。けどね、だからこそ必要なんだよ」
「理解できない」
「まー要するに、擬態って事だね。表社会の常識に擬態する。そうすれば裏社会の人間ってバレることは少なくなるからさ」
隠世はどこか納得いかない様子だ。
「君の疑問もそのうち分かる様になるよ。さ、部屋から出た出た。私は今から着替えるんだから」
陽は隠世の背中を押して扉を向けた。
「……了解した」
隠世は押されるままに部屋を出た。
五年後ーー
陽は垂れ流しのニュース番組を聞きながら、パソコンで執筆していた。
何文字が入力し、入力しただけ消す。どうにも文章が気に入らず、ここ1週間ほど同じことを繰り返していた。
気分転換にBGMを音楽からニュース番組に変えてみたものの、気分が乗らず、変わらなかった。
今はどこだったかの国同士の戦争のニュースを流れている。
「今日未明、A国北部地域にG国が発射したミサイルが命中し──」
テロテロンと明らか番組とは別の音が鳴ったので、地震や竜巻などの自然災害でも起きたのかと、テレビ画面に視線を移すと画面上部にテロップが現れていた。
「都内の刑務所で非正規創作者・加藤悠三等級の刑が執行」
胸の奥が締め付けられる感覚がして手元のリモコンでテレビを消した。
免許を取らない創作は違法。それはわかっているが、取る気は無い。それは今も変わらない。が、どこの誰とも知らない仲間が国に殺されるのは辛い。
暗くなった画面は己の未来の暗示のようでさらに気が重くなり、ため息がでる。
「明日は我が身、かなあ」
再度パソコンに視線を移して執筆を再開した。
「入るぞ」
隠世は扉をノックして書斎に入った。机から扉まで距離があるのでいつも返事は待たない。
「順調か?」
陽の邪魔にならず、しかし、すぐ取れるところにマグカップを置く。
特にお礼も言わず陽はマグカップをすすった。中はカフェオレだった。
「んー? ……まぁねぇ」
隠世が覗くと一週間前から文字数が百字程しか増えて無いのがわかった。
「なんだ、進んでないのか」
「……なんかねえ。展開が気に入らない」
陽が再びマグカップをすすると、ビーッビーッと部屋に備え付けたスピーカーから警報が鳴った。
陽がカーソルを動かして別窓を開くと、外に付けてあるカメラの映像が流れだした。
隠世が画面を覗くと、ヘルメットやフェイスガードと明らかに武装をしている集団が映っている。
「招かれざるお客様が来たな」
「お仕事だよー」
「はいはい、わかりましたよー」
玄関外の武装集団に隠世は心当たりが、というか確実にそうなのたが、正体を知っている。
文警局創作取締局ー通称ソウトリ。武装集団は十中八九、そこの捜査課だろう。
今日は何番隊の誰だろうか。
それはそうと、毎回玄関を壊そうとしてくるのはいかがなものだろう。
隠世は特に何も持たず玄関を開けた。
「壊さなくても出るからやめて欲しいんだけど。直すのだってタダじゃねえんだよ」
玄関では既に武装集団が武器を構えていた。ざっと十人だろう。
「じゃあ、大人しく投降しろ」
決まり文句のようなその言葉に隠世は返答せず、武装集団を見渡した。腕章から察するに今日は捜査課第七部隊だろう。ふむ。今回も手こずることは無さそうだ。
「投降か……。それは主の望みじゃないから断る」
小馬鹿にした顔に苛ついたのか、隊長は号令をかける。
「非正規創作者撲滅法に則り、井戸口陽第二等級を逮捕する!」
それを合図にナイフ持ちの隊員が先陣を切る。
隠世は素早いスピードで手刀を打ちナイフを奪った。さすがに手ぶらで十人は辛い。だが、ナイフ一本あれば十人程度、どうとでも出来そうだ。それに、武器は拝借すれば良い。
「今、主の創作の調子が悪いんだ」
言葉を投げながらナイフの調子を確認する。
良く手入れがされた、俗にいうサバイバルナイフだ。刃渡りもちょうど良い。
「何人か創作に協力してくれるとありがたいんだけど」
ぽーん、ぽーんとジャグリングをするように投げて、手に馴染ませる。
「非正規創作者に協力する理由はない!」
「そーですか」
空中のナイフを掴んで構えるのと同時に脇腹を割いて一人目。
脇腹ついでに背後に回ったので、背中を掻っ捌いて二人目。
レート(発砲速度)が高いだけの下手な鉄砲は、ナイフを投げつけ暴発させた。これで三人目。
倒れている隊員から拳銃とナイフを拝借。
両手片足に撃ち、四人目。同じく五人目も処理する。
自爆特攻野郎はナイフで線を肉ごと切ってやる。
これで六人。
七、八人目は近接戦闘が得意なのか拳で向かってくる。筋がいいようだが、所詮その程度。鳩尾に食らわせてから顎に掌底を突き上げる。
これであと二人。
一人が「降参です」と手を上げるのと同時に隠世は、まだ残っている拳銃をだして、顔の前に掲げると、キンキンと音がした。
「手を上げるのと同時に暗器を放つ。あまりバレたことはなかったのですが」
「それは残念だな。俺はそこ出身でエリートだったからな。この手のことは知っている。ちなみにお前は今刺さっている針は気づいているか?」
九人目の顔から物理的に血の気が引いていく。
「ちょっとした抑制剤だ。二時間もすれば戻る」
「さすが、元暗部のエリート」
「褒めても何も出んぞ?」
「褒めてないさ。ったく。厄介なやつを引き入れたもんだ、あのガキは」
「主は既に二十二。成人だ。ガキじゃない」
「そうだな」
「それで? 無駄話してる間に俺を倒せるだけの策は練れたかよ?」
「バレていたか。わかった。今日は引き上げる。部下の手当後気絶でもさせてくれ」
「斬ったのは表面だけだ。見た目ほど重症じゃないだろうよ」
もちろん聴く義理はないので、一瞬のうちに距離を詰めて鳩尾に拳銃のグリップを食わせて気絶させた。死なれては困るので部下共の手当はしてやった。
隠世が第七部隊を拘束していると、陽が玄関から顔を覗かせた。
「終わった?」
「ん? なんだ、諦めたのか?」
「違うよお、息抜きにご飯食べようと思って」
「ヤオさんに連絡は?」
ヤオさんとは裏世界を生業にしている。何でも屋だ。意味と相違無く金さえ積めばなんでもしてくれる。本名は陽でさえ知らない。
「したよお。ご飯にしよっか」
「今日は何だ?」
話している間に隠世は第七部隊を全て縄で縛り終えた。十人の手足となるとなかなかに面倒だった。
「今日はねぇ麻婆豆腐だよぉ」
「お、良いねぇ」
毎週日曜日七時に五千字程度、キリが良い所で切って投稿します
お楽しみに




