表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

第一話 冒険者ギルドにて

昼から酒の匂いがして賑わうその場所は、王都の冒険者ギルド。

筋肉隆々の荒くれどもが、酒を交わしている。


ある丸いテーブルに、三人の冒険者が座っていた。


最も背の高い青年は、イケダという剣士。

そしてその隣に座る女は、魔法使いフライヤ。

そしてそして、その隣には少年、回復術師チゲ。


どうやら、三人浮かない様子でテーブルを囲んでいる。


「あ、あと一人。戦士が来ない」


イケダはテーブルに突っ伏した。


「回復術師は来てくれたんだけどねー」


フライヤもつられて、べちゃりとテーブルに張り付く。


「もう冒険に行ってもいいんじゃないか? 正直、行こうと思ってるダンジョンなら三人でなんとかなると思うんだけど……」


イケダはそう呟くが……


「──だめです。僕がこのパーティに入る条件を忘れましたか? 『必ず戦士職を連れていくこと』です!」

「結局それってなんでなの?」

「そんなの怖いからに決まってるじゃないですか。前衛が一人でダンジョンにいくだなんて危険です! イケダさんが倒れたらどうするんですか!!」


そう言って、チゲはテーブルをバンバン叩く。イケダとフライヤがその衝撃に、耳を痛そうにしながら顔を上げる。


「そもそも、まわりにいかにも戦士職みたいな筋肉だるまがいっぱいいるじゃないですか! 彼らの中から誘えばいいじゃないですか!」

「うん。そうだね、君の言ってることは正しい」


イケダはやけに素直にチゲの意見を取り入れ、後ろで酒を飲んでいる大男に話しかける。


「おい、ジョン。俺たちと一緒にダンジョン行こうぜ!」


だが、大男は酒が入っているとは思えないほど冷静に。


「は? 嫌だよ。なんでお前みたいな変態とダンジョンにいかなきゃなんねえんだ?」


その返答を受け、イケダはチゲのもとへ帰ってくる。


「──ほらね」

「ほ、ら、ね? え? どういうこと?」

「私が説明しよう、チゲくん」


となりから割って入ってくるのはフライヤ。口から酒がぷぅんと臭ってきて、チゲは思わずのけぞる。


「──イケダはね。性癖を隠せないんだ。だから、新たに仲間が来たら、セクハラまがいのことをして逃げられる。そんなことを繰り返してたらもうだれもパーティに入ってくれなくなっちゃったのさ。こんなの飲まなきゃやってられるかってな!」


そう吐き捨てて、フライヤはもう一度酒をぐびっといく。となりでイケダがうんうんと頷いていた。


「頷いてる暇があったらその悪癖を直してくださいよ……はぁ、入るパーティ間違えた。すみません。このパーティやめてもいいですか?」


チゲはそう聞くけれど、フライヤに肩から回された腕が取れない。


「──珍しい、このギルドにはほんとに珍しい新顔で、奇跡的にこのパーティに入ってくれたんだ。逃がさないよぉん」

「……終わったぁ。もう僕はこのままここに閉じ込められるんだ……」


頭を抱えるチゲだったが、テーブルの前に四つ目の影があることに気づいた。

続いて、イケダもフライヤも、その影に気づく。


なにやら背の高い女だ。暗い色の鎧を纏っている。


「ん? ──あ! またイケダがセクハラしましたか? あー、クレームは一度ギルドを通してからですね……」


フライヤが、なにかを察して話を進めるが──


「──戦士の募集を見てきた。私は戦士だ。私をこのパーティに入れてくれ」

「え、嘘」


フライヤは酔いが覚めたようで、酒の入ったコップを机から落とす。そんなに珍しいのか、このパーティに新メンバーが加わるのが。


「──歓迎しよう」


まだ名前も、詳しい素性も分からないが、イケダはその女の手を受け取る。

ずっと求めていた人材が来たのだ。逃す訳にはいくまい。

しかし、チゲは……


「お姉さん、このパーティは危険だ! やめた方がいい!!」

「こらこら、チゲ。今は冗談をいっている場合じゃないぞ!」


チゲはフライヤに口をふさがれそうになるが、なんとか振りほどき、女に伝える。

だが、その女は動じることなく、そしてなぜかチゲに顔を近づける。もう鼻と鼻がくっつくほどの距離。


「──え」


チゲは困惑するが、女はそのまま口をチゲの耳に近づけて──ボソ、と何かを呟いた。


「──!?」


呟かれた言葉を聞いたチゲは、俯いて黙り込む。

その様子を疑問に思ったイケダだったが、フライヤの方はもう乗り気で杖の手入れを始めていた。


「──君、名前は?」


イケダは一度冷静になって女に聞く。


「名前、か…………ニゲキだ。よろしく頼む」

「ニゲキさん、よろしく。俺は剣士のイケダ。こっちは魔法使いフライヤ。で、そこのちっさいのが回復術師のチゲだ。チゲは君と同じでこのパーティに来たばかりだから仲良くしてやってくれ」


「……チゲ、か」


ニゲキと名乗った女は、チゲの名前を復唱した。


「…………」


一体、何を囁かれたのか……チゲは震えながら俯いたままだ。


「うん。まぁ、親睦はおいおい深めるとして……早速いこうか」


パンと手を鳴らして、イケダは席を立つ。


こうして、剣士イケダ、魔法使いフライヤ、回復術師チゲ、戦士ニゲキは冒険者ギルドをあとにした。


なお、冒険者ギルドの筋肉だるまたちは、チゲとニゲキの背中を心配そうに見つめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ