弱者の末路と黒き力
「ころ、される…」
「そうだ、聞いた話ではあるが転生者は何らかの強さを持っていなければ害あるものとして政府に殺されるらしい。」
「良く知っているな。流石は国随一の情報屋だ。」
と、無言だったイケメンのスザクさんが口を挟む。
「昔の話さ。昔だったら金を取っていた。今はただの喫茶店店長だ。」
「そうか。さて、マエハラ。君が転生者であるならばその存在を秘匿した方が良い。転生者であるなら君はもう自由に生きれないからな。」
「でも、どうしたら…」
「ふむ。そうか、転生者だから金が無いのか。ならば俺についてこい。俺は一応冒険者だ。君を冒険者ギルドに連れていき、冒険者登録して、いくつかの依頼をこなしたり装備を整えさせたりは出来るだろう。」
「は、はい」
転生者は聖騎士か冒険者か死人になる。必ず転生者である事を隠そう。
そのまま喫茶店を出てスザクと一緒に歩いて冒険者ギルドに向かった。
そして着いた冒険者ギルドは…
「なんというか、銀行みたいだな」
思わずそう漏らしてしまうほど日本の銀行に似ていた。
「冒険者登録はこっちだ。」
とスザクに言われてそっちの方へ向かう。
「こんにちは、冒険者登録ですか?」
「はい。」
「分かりました。ではこちらの水晶に手をかざしていただけますか?」
「はい。これは…?」
「冒険者登録は身分証明証は必要無いのですが犯罪者が冒険者登録をすると困るため、魂紋を測定して指名手配者でないか調べます。また、同時にステータスも測定します。」
「なるほど。」
手をかざしてみる。魂紋というのは指紋みたいなものなんだろう。指紋と違って偽装ができなさそうだ。
「はい。ありがとう御座います。では測定結果はこちらです。」
「ありがとう御座います」
おそらくステータスの数値が書かれた紙を渡された。
その紙を見てみると…
────────────────────
名称:マエハラマコト
種族:人間
犯罪歴:無し
HP:250/250
魂力:0/0
力:50
防御:50
知力:140
スキルポイント:50
〈使用可能魂術〉
なし
────────────────────
これをスザクに見せると…
「これは酷いな」
と言われた。
「はい…。魂力とか言うやつも0ですし…」
「なに?魂力は生きている限り必ずあるぞ?魂紋を持っているということは例外でないはずだ。鑑定紙がなにかおかしいんじゃないか?」
と言われた。
「ふむ、だが…。そうだな、目を閉じてくれるか。」
「はい?はい。」
「そのまま意識を指先に集中させるんだ。そうしたら普通の人ならば光が灯るはず。」
と言われてやって見ると。
どす黒い何かを感じた。
「きゃぁ!」
「なんだなんだ!」
と言われて目を開けるとなにも無かった。
だけど、目の前には散乱した冒険者ギルドと、青ざめた顔で僕を見つめる沢山の人がいた。
「来い。」
と言われてスザクに手を引かれて路地裏にまた行く。
「さっきの黒いのはなんなんだ?普通は白色の球体が出るばすだぞ?しかもなんなんだあの大きさは…」
「えっと…?黒いもの?あと大きさって?」
「いいか、普通の人間は指先に意識を集中させるとどんな人でも白色ものが浮かぶ。持っている魂力によって大きさが変わるが、あの大きさはSランク冒険者並だぞ」
と詰め寄られる。
「そんなことを言っても…。僕の魂力は第一0でしたし…」
「確かにそうだが…。よし、これから依頼を受けてモンスター退治のために外へ向かう。そこなら広いからお前の力を十分に試せる。君の黒い力がなんなのかは分からないが、街の外で試してみる他無い。」
となって、街の外へ依頼で出ることにした。
この世界にもモンスターはいるのかと思ったが、それよりも大きな気がかりが出来た。あのとき、家族構成について語ろうとした時。何故か全く覚えてなかった。他の前世の事を思い浮かべようとしてもなにも思い出せない
僕は、僕は…。通り魔に殺される以前の前の世界での記憶が…無かった。