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我慢の果てに

我慢の果てに〜コンビニでの失態〜

作者: もる

朝7時、けたたましく鳴り響く目覚まし時計の音に目を覚ます。薄暗い部屋の中、カーテンの隙間から差し込む朝日が、眠気を誘うように優しく揺れている。意識が少しづつハッキリとしてくると、昨日履いたまま寝てしまったおむつが、ずっしりと重くなっていることに気づく。おねしょだ。

毎朝のように繰り返されるこの現実が、綾香の心に小さな影を落とす。布団の中でしばらくじっとしていると、重たいおむつの中で肌に張り付く感触が不快に感じられる。それでも、いつまでも逃げているわけにはいかない。ため息をつきながらベッドを抜け出し、重くなったおむつをそっと脱ぐ。濡れた感触が指先に伝わり、思わず顔をしかめる。丸めてゴミ箱に放り込むと、その重さが一日の始まりを象徴しているかのようだった。


シャワールームに向かい、蛇口をひねる。温かいお湯が頭から流れ落ちると、少しだけ気持ちが軽くなる。身体を洗いながら、昨夜の夢を思い出す。ぼんやりとした映像の中で、子供の頃の自分が笑っていた。おねしょなんて気にせず、無邪気に遊んでいたあの頃。いまの自分とはあまりにも違う。シャワーを終え、タオルで身体を拭きながら鏡に映る自分を見る。30歳という年齢は、もっと大人っぽく、もっとしっかりした自分を想像していたはずなのに、現実はこうだ。おむつを履いて寝るような自分が、どこか情けなく思える。でも、この朝のルーティンに慣れてしまっているのも事実だった。膀胱がスッキリした感覚とともに、気持ちを切り替えて身支度を始める。スーツに袖を通し、髪を整え、バッグを手に持つ。鏡の中の自分は、どこにでもいる普通のOLに見える。それでいい、と自分に言い聞かせ、家を出る。


会社に着くと、いつものようにデスクに座り、パソコンを立ち上げる。朝の静かなオフィスには、キーボードを叩く音と時折聞こえる同僚の話し声だけが響く。綾香は日中、飲み物をあまり口にしない。コーヒーやお茶を飲めば、その分トイレが近くなる。それが億劫で、水分を控えるようになった。業務は淡々と進み、書類の整理やメールの返信に追われる。何事もなく時間が過ぎ、正午を知らせるベルが鳴る。綾香はコンビニで買ってきたサンドイッチを手に、休憩室へ向かう。簡単な昼食を済ませ、ソファに腰を下ろして目を閉じる。30分の仮眠が習慣だ。以前、昼休みギリギリまで寝てしまい、少しおねしょをしてしまったことがあった。目を開けた瞬間、ソファに小さな染みができているのに気づき、血の気が引いた。幸い誰も見ていなかったが、あの時の冷や汗と動悸は忘れられない。それ以来、仮眠は30分と決めている。アラームをセットし、眠りに落ちる。短い時間でも、疲れた身体が少しだけ回復する感覚がある。


昼休みが終わり、午後の業務が始まる。デスクに戻り、再びパソコンに向かう。書類をチェックし、データを入力し、会議の資料を準備する。単調な作業が続く中、ふと下腹部に違和感を覚える。尿意だ。時計を見ると14時半を少し過ぎたところ。まだ我慢できる、と自分に言い聞かせる。でも、15時を過ぎる頃には、明らかに我慢が必要な状態になっていた。足を軽くさすってみたり、腰を少し浮かせてみたり、じっとしていられない。椅子の上で身体を小さく動かすたび、膀胱が圧迫される感覚が強まる。それでもトイレには行かない。なぜか、この尿意をどこかで楽しんでいる自分がいるのだ。我慢する緊張感と、限界に近づくスリル。自分でも理解しがたい感情が、心の奥で蠢いている。


18時の終業が近づくにつれ、尿意はピークに達する。動かなければ漏らしてしまいそうなほどだ。デスクで書類をまとめていると、上司が近づいてきた。「大丈夫か?この前みたいになる前にトイレ行けよ」と、低い声で言う。上司は、数ヶ月前、綾香がオフィスで少しおもらししてしまった現場を目撃したことがある。あの日、トイレに行くタイミングを逃し、我慢しきれなくなって漏らしてしまった。あの恥ずかしさは今でも鮮明に覚えている。上司はそのことを誰にも言わずにいてくれている。それ以来、綾香の秘密を知る唯一の人物だ。「大丈夫です。仕事が終わったら行きます」と、平静を装って答える。内心は限界に近く、声が震えそうだったが、なんとか取り繕った。


18時のベルが鳴り、同僚たちが帰り支度を始める中、綾香もバッグを手に持つ。尿意を抱えたまま、ゆっくりと立ち上がる。足取りが重く、一歩踏み出すたびに下腹部に圧がかかる。なんとかオフィスを出て、駐車場に向かう。車に乗り込み、シートに座った瞬間、膀胱が悲鳴を上げる。おしっこがしたくてたまらない。エンジンをかけ、帰路につく。家までは車で30分ほど。コンビニがいくつか道沿いに現れるたび、「まだ我慢できる」と自分に言い聞かせる。アクセルを踏み、スピードを上げる。でも、じんわりと下着が湿っている感覚が広がる。汗なのかおしっこなのか、もうわからない。尿意の限界がすぐそこまで迫っている。「次のコンビニでトイレを借りよう」と、ひとりでつぶやく。ハンドルを握る手が汗ばんでいる。


やっと見えてきたコンビニに車を停める頃、すでに少しおしっこを漏らしてしまっていた。下着に丸いシミができ、スカートの裏側にも湿り気が広がっている。「早くトイレトイレ」と心の中で叫びながら、車を降りる。足を踏み出した瞬間、太ももをおしっこが伝う感覚に襲われる。「だめ、まだ出ちゃ!」と思わず声に出してしまう。コンビニの入り口に向かうたび、じゅっ、じゅっと下着を叩く音が聞こえる。薄い布をあっさり浸透し、おしっこが床に滴り落ちる。おちびりがおもらしに変わる瞬間だ。トイレに一歩近づくごとに、我慢の糸が切れていく。コンビニの床に小さな水たまりを作りながら、必死でトイレを目指す。やっとトイレのドアに手をかけた時、ほぼ全てのおしっこが出てしまっていた。


同じくらいの歳の女性店員が慌てて駆けつけてくる。「大丈夫ですか!?早くトイレに!」と、綾香の腕を支えてくれる。優しい声に少しホッとするが、すでに尿意はなく、ただ濡れた下着とスカートが冷たく感じられるだけだ。トイレットペーパーで太ももや下着を拭き、なんとか身なりを整える。でも、スカートには大きな染みが残り、隠しようがない。恐る恐るトイレを出ると、先ほどの店員がモップで床を拭いている姿が目に入る。自分が漏らしたおしっこを、他人に掃除させている。その現実が急に胸を締め付け、涙が溢れ出した。「ごめんなさい、ごめんなさい」と、子供のよう泣きながら謝る。声を上げて号泣する自分が恥ずかしいのに、涙が止まらない。


店員さんはモップを手に持ったまま、優しく微笑む。「仕方ないですよ、そういう時もあります」と穏やかに言う。その言葉に、綾香の心が少しだけ救われる。泣きじゃくる綾香を、店員さんはそっと車まで連れて行ってくれた。「落ち着くまでゆっくり休んでくださいね」と言い残し、店内に戻っていく。綾香はシートに座り、濡れたスカートが冷たく感じられる中、20分ほどで落ち着きを取り戻す。涙が乾き、心が静かになる。店に戻り、店員さんに小さくお礼を言う。「ありがとうございました」と頭を下げ、濡れたままのスカートで車に乗り込んだ。

家までの道のりを、静かに運転する。あの優しさが、恥ずかしさで埋め尽くされた心に小さな光を灯してくれた。

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