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二人の少年


同じ病院で生まれて

誕生日も3日違うだけ

どっちも音楽が好きで

好きな曲のジャンルも一緒

頭の良さは…

未咲の方が圧倒的に良かったけど

僕だってそこそこできた

というか置いてかれないようにいっぱい努力した

結構共通点がいっぱいあって

幼馴染ってこともあって仲良くなるのは必然だった

毎日いっぱい遊んで学校でもずっと一緒

ニコイチだねだなんてそれがとっても嬉しかった


だから僕達はこのままだと思ってた

未咲の隣は僕だけで二人で一つだから

この幸せがなくなるなんて考えてもみなかった


なのに


僕は一人になった

お家の都合で引っ越しちゃうんだって

新しいお家からはここは遠すぎるから転校するしかないんだって

ボロボロ大粒の涙を大きくてとってもきれいなおめめから流しながらお母さんと一緒に伝えに来てくれたから

とってもとっても悲しいのに未咲が泣いてるから励ましてあげなくっちゃって

僕より少し背の高い頭をよしよしってしてあげて

そしたらもっとひどく泣き始めちゃったから

あれれ間違えちゃったかなってワタワタしてたら

僕のお母さんと未咲のお母さんが一緒に公園にでも行っておいでって言うから

僕は未咲の手を引いて公園まで歩いた


僕が明るく話しかけても

公園が近づいてきても未咲は泣き止まなくて

僕も耐えられなくなっちゃって泣き出しちゃったら

そんな僕を見て未咲はすごくびっくりした顔して


「れいくんもかなしいの?」


なんて聞くから何だかもっと泣けてきちゃって

声が出なくて必死でコクコク頷いたら

とってもとってもきれいに微笑んでおそろいだねなんて

僕は子どもながらあぁずるい人だなって思ったの

社会の授業で習った神様ってこんな人のことを言うんだろうなあって

僕が見惚れてたら未咲は小指を差し出して


「じゃあここで待ってて。俺絶対に帰ってくるから。れいくんのとこに帰ってくるから。」

「だからいい子で待ってて。」


約束ってさっきまで大泣きしてたのに

誕生日だって3日しか違わないのに

どこか大人びた雰囲気を纏ってそう言った未咲は

僕だけの神様で

とってもっとてもきれいで

僕はそうっと小指を未咲の小指に絡めた

そしたらとびきり嬉しそうな顔で笑うから

だから僕もニッコリ笑って

お顔がぐしゃぐしゃだ〜って二人でクスクス笑いながら気が済むまでお喋りをして

暗くなってきたからそろそろ帰らなくちゃいけないねって手をにぎにぎしながらお家に帰った



次の週の朝


大きな荷代ににいっぱい荷物を乗せたトラックを見送った未咲のお父さんとお母さんがそろそろ行かなきゃいけないよって言うから

あぁこれで本当にお別れなんだなって分かってすごくすごく寂しくて下をむいてたら


「れいくんおててかして!」


ってちょっと舌っ足らずな可愛い声で言って僕に写真を一枚握らせた

そこには僕と未咲が写ってて楽しそうに笑ってて

こんな写真写撮ったっけ?って首を傾げたら


「おかーさんが撮ってた写真なの全然気づかなかったよね。」


でもいい写真だと思わない?ってまたとってもきれいに笑うから

僕も寂しいのと泣きたいのをグッとこらえてニッコリ笑った

そしたら泣いて困らせない俺達とってもいい子だねって言うから

困らせないのがいい子なんだって

そっかじゃあ泣かないようにしなくちゃいけないって

いい子にしてたら未咲は帰って来てくれるって約束したから

だから笑顔でお見送りした



またねバイバイって未咲のお父さんが運転する車が見えなくなるまで手を降って

もらった写真をしわくちゃにならないように気をつけながらギュッと胸に抱いた

それでお空に向かってお願いした

どーか未咲が新しい場所で泣いちゃいませんように

どーか未咲が笑って楽しく過ごせますようにって

そして

どーか未咲が僕のところに帰って来ますようにって

ここでずっといい子にしてるからだから早く帰ってきてって



2月26日

もうすぐ5年生になるちょっと前に僕は神様と離れ離れになった

こんなにも心の中ではビュービュー雪が降ってるのにのに今日に限ってお天気が良くて

寒いのにあったかかった

東雲の表札がなくなったお家のご近所のお花が好きなおばあちゃんのお家の窓際で は真っ白く色づいたポインセチアが日向ぼっこをしていた

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