表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/17

実践演習 -1

「よし、チームはできたか〜?」



 進先生の確認に、皆から完了の返事が上がった。今日は実践演習だ。他チームが持つリボンを奪い合う、言うなれば鬼ごっこだ。期間は約二日。持ち点で勝敗は決まり、自チームのリボンが一点、他チームのリボンが三点だ。私は今回、飛鳥と聖と同じチームだ。



「真白、青、よろしくなー!」

「こちらこそよろしくね。」

「よろしく、二人とも。」

「リボン取りまくるぞー!」



 張り切る飛鳥を尻目に他チームを見渡す。百音と聖は同じチームのようだ。今回のチーム分けは三〜四人との指定だったため、五人同じチームは組めなかった。

 今回の会場は訓練所の隣の森だ。森といっても、開けた平原や岩場もある広大な土地だ。水場も食料となる木の実や野生動物もいる。今回は野営練習も兼ねているので、自分たちで賄わなければならない。



「それじゃあ、これから30分後に開始だ! 解散!」



 私たちはあえて水場から離れた所を拠点とした。程良く森の奥で、鬱蒼としていて身を隠しやすい。



「きっと水場周りは人が集中するから、拠点にするならこっちの方が正解だね。」

「真白が水属性魔法使えて助かるな!」

「そうだね。」



 魔法で出した水も飲み水に使用できる。水属性魔法の使い手がチーム内にいない場合は水源確保が必須になってしまうから、使い手がチーム内にいれば選択肢は大幅に増やせる。



「飛鳥は火属性、青は土属性が得意なんだよね。」

「おう! まだあんま使えねぇけどな!」

「僕もそこまで上手じゃないけど、造形物を作るのは比較的得意だよ。」



 うんうんと相槌を打ちながら鞄の中身と照らし合わせて、今日明日の食糧や身の隠し方を練る。水問題は解決した。寝床もどうにかなるだろう。火があるから調理も問題なし。



「真白は属性制限あるんだよね。」

「うん、水属性しか使えないの。」



 青にそう問われて苦笑したまま頷いた。結局私は全属性を問題なく扱えてしまうことが分かった。扱える属性が多いのは実践ではもちろん有利に繋がるのでとても良いことなのだが、訓練ではハンデが大きすぎた。進先生と相談した結果、こうした実践形式の訓練の場合は使用可能属性を決めることになった。今回は水属性だ。



「草属性が使えれば木の実や野菜を出せたんだけど…。」

「何言ってるの、水があるだけありがたいよ。」

「おう! 俺めちゃくちゃ食べ物見つけるの上手いから任せろ!」



 確かに飛鳥は野生の勘か何かで見つけるのが上手そうだ。拠点の確保ができたため、まずは腹ごしらえのための木の実を探すことにした。本当は肉を食べたいけれど、移動範囲が少ない状況で火を使っての調理は避けたい。

 宣言通り飛鳥が大量の木の実や果物を見つけてきてくれ、魔法で出した水と、持っていた乾燥肉を食べながら作戦を練ることにした。



「まずそれぞれが腰のベルトにリボンを挟んでいて、自チームのものであれば一点だったね。」

「このリボンを死守してもいいけど、他チームのリボンを取れば三点が加算される。もし自分たちのリボンが全滅しても、一本他チームのリボンを取れれば巻き返せる計算ね。」

「となると自分のチームのリボン必死に守るより、他チームのリボン集めた方が良くねぇ!?」

「最後にボーナスポイント! 最後まで死守してたら十点追加! とか言い出さなきゃそうだね。」

「うぐっ…! 確かにその可能性もナシじゃねーな…!」



 結局私たちは自分たちのリボンを守りつつ、他チームのリボンを取りに行くことにした。他チームのリボンには興味を示さず、自分たちの三点を守り抜こうとするチームも出てくるかもしれない。〇点のチームの可能性を考慮すると、最下位回避の可能性も出てくる。

 ベルトに挟んだリボンを何の気なしにいじり始めたとき、刺繍が入っていることに気がついた。



「お花の刺繍が入ってる。」

「本当だ。桜だね。」

「すげー! 細かい! 他のチームのも入ってんのかな!?」

「入ってそうだね。後で百音に訊いてみよう。」



 白地の布に白糸で施された刺繍は決して目立つものではないが、華やかで素敵だった。



「桜の花言葉は純潔。素敵だよね。」

「青物知りだなー!」

「僕の家、花も育ててるから自然と覚えちゃって。」

「かっけー! 月桂樹は!?」

「勝利だよ。」

「勝利…。」



 月の国の紋章は月桂樹がモチーフだ。太陽の国に勝つという心意気がその由来なんだろうか。もう戦いが始まって長く、そもそもの原因なんて分からなくなってしまった。けれど太陽の国は定期的にこちらに攻め込み、派手にその存在を主張する。だから月の国の民は戦う目的を見失わずにここまできた。この戦いは、どちらかの国が滅んだときに終わるのだろうか。



「真白!」



 飛鳥に声をかけられてハッと我に返った。



「そろそろ出よーぜ! この拠点がバレても厄介だしな!」

「う、うん。」



 いけない。今は目の前の演習に集中しなくては。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ