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放浪の始まり 04アスアッド

ドラウドの一族は、南の大陸から移住して来ていた。

きっかけは、大陸の北の中央部で発生したドラーザ同士の戦い。

ドラウドの国は、ファスタバを大事に扱い他国から流れ混んでくるほどだった。

だが、戦いでは不利な状況で、自領のファスタバが大集団を結成して南へ移動し始めた。

この一団を守る様に南へ南へと移動するドラウド達。

追われたのだ。

追い立てたのはアスアッド。


初めはちょっとしたイザコザだった。

それが、急に拡大した。

互いの領地を食い合う様に、戦いが始まってしまった。

戦うのはドラーザ同士。

ファスタバに武器を持たせても、麦を刈るのと一緒だ。


特に近隣の領主を襲い始めたのは

【アスアッド】

ドラウドの祖父の弟が領主であったが、その叔父が亡くなって残忍な領主【アスアッド二世】に代わってしまう。

ファスタバを、かつての様に農奴として扱い搾取と迫害の対処にした。

僅かな荷物を持って、逃げ出すファスタバ。

当然、ドラウド領を目指す。

この間にある領は、いわば緩衝地帯。

必死に、アスアッド二世を宥めにかかる。

だが、一度恐怖に駆られたファスタバは、夜になると準備しておいたのか一斉に逃げ出す。

より遠くへ!

誰より先に!

彼らに組み込まれた生存本能。

南へ!

ドラーザは、北からやって来ている。

南には、ドラーザがやって来ていない土地がある。

こうして、南へ逃げる。

ドラウド国は、この自領のファスタバをアスアッドから守る様に、移動を開始するしか無かった。

幸い麦は刈り終え、籾にして袋詰めまで出来ていた。

これを、荷台に乗せて馬か、自らが引いて南に移る。

夜も出来るだけ移動する為に、ファスタバと馬に引かせ、昼はファスタバも乗せた荷車をドラーザが引く。

こうすれば、後方から追って来るアスアッドは食料が無くなり追って来れない。

殿(しんがり)には、ファスタバの中でも罠に詳しい者が、夕方になると仕掛けを作って足止めを計る。

アスアッドもファスタバを先攻に出せば良いのだが、何度も、そのままドラウドの一団に逃げ込まれて、昼間しか追わない事になった。

そして、冬を控えて引き返していく。

しかし、ドラウドのファスタバ達は止まらない。

後を追うしかないドラウドの一団。


一方、アスアッド。

侵略した農地にファスタバを押し込め、朝早くから夕方まで監視をして働かせ、食料を増産して遠征する準備をする。

ファスタバも逃げ出したいが、子供を人質に取られている。

中には子供を捨てて、逃げ出す一家も出てしまう。

こうなると、残された子供には悲惨な最後が訪れる。


祖父は悔やむ。

「やはり、父が止めても無理矢理、叔父の鱗を抜くべきだった!」

長寿と複数の妻のせいで、ややこしいがアスアッド二世はドラウドよりも年下で叔父にあたる。

だが、もう身内とは思ってもいない。

兼ねてから凶暴性を持って居たアスアッド。

そして、その子アスアッド二世。

ドラウドが与えたドラウーサ(優しい)と言う幼名だったが、アスアッド(勇猛)にすぐさま名を変えた。

兼ねてからファスタバを、完全に奴隷化すると口にして居た。

多くの文官をドラウドから派遣して、領内をまとめて来たがドラウド二世になってから全員が戻されていた。


「二度とアスアッド領には行きたくない」

「我らにまで、竜人(ドラーザ)の姿で生活する事を強要する」

「食事は手掴み。大皿に載せられた生肉を喰らう。昼間っから酒を飲む。誰もが逆らえない」

「前は、あんなに凶暴ではなかった。体付きも大柄になっている」

「夜になると何やら怪しげな煙を吸っているそうだ。

『その為に、幼体(ファスタバ)の姿に戻れなくなった』

と向こうの文官が教えてくれた」

「どこからか攫って来たファスタバの娘を、ドラーザの姿で陵辱して食っていると聞いた事がある」

「そんな姿で、身体を重ねるなんて・・・・・妻に迫ったら絶対に鱗に手をかけられてしまう」

「だからだ、あの城にはドラーザの女は居ない」

「アスアッド国を宣言・・・・恐ろしい国になってしまった」

「前領主様がアスアッド様か、ドラウーサ様の鱗を抜かれておられれば・・・・・」


噂話は、ドラーザの間だけで済むわけがない。

かつて、食事の後の片付けに城に出向いたファスタバは、

『大皿に盛られた肉は、ファスタバ・・・・・』

こんな話を聞いて終えば、逃げ出す事になってしまう。

しかし、南に向かうドラウドのドラーザの中からも、翌朝になると消えている者がいた。

夜が苦手なドラーザが、ファスラーザの手を借りて逃げ出す。

逃げる事に疲れた者か、ドラーザの奥に流れる凶暴な血を思い出した者がアスアッドに膝を突く。


こうして、相当な距離を冬の間に稼いで南下して、やっとの思いで海を背にした大陸の果てへ辿り着いた。

ファスタバの数は膨れ上がり、現地のファスタバと共に開墾を開始した。

トーガの様な片側の肩に掛けた布で身を包み、ベルトの様々な色合いで身分を教える。

ドラウドは、戦士以外にはファスタバ(幼体)の姿で生活している様にさせた。

この方が、食料消費が抑えられる。

ドラーザの姿では、どうしても腹が減る。

アスアッド軍は、当面押し寄せて来ないだろうが、砦を設けて狼煙で連絡を取り合う」


その頃、アスアッドは南では無く、東西へ、その侵略を開始していた。

特に東は、広大な草原が続く。

アスアッド二世は、兼ねてから、この方向へ何度も自ら飛んでいた。

肉になる動物がいて、それに槍で仕留めて喰らう。

ファスタバに比べれば硬いが、それでも仕留めた甲斐を見出せる味をしている。

当面は、この辺りまで開梱させて、ファスタバの人口を増やすか・・・・・

【ファスラーザ】を、この地に入植させるか?


ファスラーザ 

ドラーザが、ファスタバの女に産ませた子供。

以前は、生まれてくる事もなかった。

相手をさせている間に、女が死ぬか流産をする。

産まれても、川に流されるか荒野に置き去りにされた。

だが、産まれた子供に使い道があった。

第一に成熟が早い。

筋力も、ファスタバよりある。

そして何より、ドラーザでは無い。

ファスタバでも無い。

明らかに違うその耳。

尖った耳

ドラーザの耳。

ファスタバからは、忌み嫌われ城で預かる事にした。

戦士に仕立て上げる。

前線では使えないが、守備兵か門番程度には使える。

ドラーザは、成人まで30年近くかかるが、ファスラーザは16年で成人する。

労働力とするなら、もっと若い12歳でファスタバ並みの筋力がある。

これで、労働力と麦の収穫は保障された。

アスアッド二世は、息子達と一緒に今日も狩りに出る。



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