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エピローグ  放浪の始まり

地球、ファルトン、そしてアーバインに人類が【誕生】する前の話になります。

その又、前の話かもしれません。

しばらく、本編に合わせてお付き合いお願いします。

sakaジ


遥か昔。

この宇宙の彼方。

【トウラ】と言う星が有った。

そう、かつて存在したのだ。


その星に棲む【ファスタバ】は、二本の足と手を使い、知恵と器用さで農耕を行い、狩った獣を飼い慣らし家畜化して肉と卵を得た。

川や海に繰り出し、小さな船に帆を張り風を読んで船を操り網を使って漁をする。

これにより人口が増加。

小さな集落が、大きな町になった。

互いの領地を巡っての諍いは、武器や防護の為の鎧や兜を作る為に金属加工を発展させる。

共通の文字言語を使い、文明を築き、文化が花開いた。


だが、その町を空から襲う奴らがいた。

突如、現れた異質な存在。

【ドラーザ】

ファスタバの身体に翼と尻尾を持ち、槍や矢で射ても貫けない鱗。

そして、両腕と脚に鋭く太い爪を持つ。

隠しても仕方無い。

そう、ドラーザは竜人であった。


絶対的な支配者。

一匹で、百のファスタバに対抗する。

空を飛ばれては、その足で蹴り倒されて、その爪で胸や目を突き刺されて虐殺される。

網や罠を仕掛けて捕らえて返り討ちにしたが、次第に、その罠を見抜き反撃をする。

民家や荷車を襲って破壊し、剥き出しになった柱や車軸を空中から落として攻撃してきた。

特に小麦の収穫に時には、見張りを常に立てて農民を逃すのが役割の兵士が必要になった。

更に知恵をつけ、ファスタバと同じ様に会話をし槍と弓と矢を奪い、より強力な武器に仕立てて空からファスタバを襲う様になる。

次第に縮まる、その知識。

ファスタバは恐れる。

ドラーザの進化を。

だが恐れるのは、それだけでは無い。


ドラーザは、ファスタバを喰う。

捕らえたファスタバを貪り喰う。

だが、ファスタバはドラーザを喰わない。

それは、戦いで死んだドラーザは死ぬと胸と頸の鱗を残し、羽と尻尾そしてツノが消える。

手足も次第に小さくなり、あれだけ硬く鋭い爪も次第に小さくなてファスタバと変わらない姿になる。

恐ろしい事に、ファスタバと同じ姿になるのだ。

コレは、悪夢だ。


ファスタバにも医師が居る。

その一人が意を決してドラーザを解体した。

オスもメスも。

細部までそれこそ、頭の先から爪先まで詳細に調べた。

そして告げる。

ドラーザは、ほとんどファスタバだ。

ファスタバから産まれたと言って良い。



紛糾するファスタバの集落。

「羽は、どうして出来ている。何故消える?」

「羽は、肩甲骨が急激に成長した物。

ここを見てみろ。

肩甲骨が、外に飛び出している」

「まるで、歯や爪みたいだな。これは?」

「これが肩甲骨に当たる」

「黒い固い石みたいだな。

羽の様な鱗の紋様が浮き出ている」

「もしかして、ドラーザの姿の時には、この肩甲骨が急激にデカくなるのか?

羽や鱗はこの紋様が、一つ一つの羽や鱗になるのか?」

「恐らくそうなのであろうな。

尻尾も尾骶骨が飛び出していて、同じ様な石になっている。

鱗の様な模様が細かく有るのが、その証拠だろう。

鱗がある部分の皮膚を見てみろ外側の筋に従って、同じ様な鱗模様が見える。

爪も黒く光っているが、我々の爪と一緒だ。

だけど、どの指にも硬い一筋線が入っている。

ドラーザの姿になると、これらが急激に硬く鋭い爪や鱗に変わるのだろう。


網で落とし、やっとの思いでドラーザを仕留めた者は言っている、

「空から引き摺り下ろした時に、羽と尻尾は黒い粒となって消えていった」


「内臓は?」

「我々と変わらぬよ。肺が幾分大きいか」

「牙も死んだら引っ込んでいる」

「そんな、馬鹿な!」

死んで一日も経つとドラーザの死体は、ファスタバと見間違う日度になった。



「子供は、どうやって増やすんだ?

鱗を生やしているんだ!

蛇や蜥蜴のように卵で生まれるんじゃ無いのか?」

「いや、卵巣も子宮も我々と同じだ。

この、ドラーザは子供を産んだ経験があるようだ。

同じように死んだ若いメスより乳首がデカく、乳腺も発達している。

卵の殻が成長する様な、場所はなく我らと同じ様にして生まれるのだろう。

「子種を作るオスの睾丸もそうだ。最も、これは鳥でも一緒だがな」

「オスもメスも我らと外性器の作りも、大きさも一緒だ」

「交尾をして、子を腹に収めて時が来たら産むわけか?」

「あぁ、他に面白いのが、胸の中央に有る。この一番大きな鱗だ」

「この硬い鱗か?」

「あぁ、この鱗を抜いたら心臓が真下にあって、筋肉が柔らかく普通の剣でも易々と心臓に届く」

「だけど、この鱗は硬いぞ!」

「おい、このドラーザ。おかしくは無いか?肩甲骨が縮んで、尻尾も隠れている」

「あぁ、そうなんだ。この工具を使って、この真ん中のデカい鱗を下方向に向けて引っ張ってくれ。

力がいるが抜ける

その前に、背後の肩甲骨と尻尾に額のツノを見ていろ!」

「まさか!」

「そうまさかだ。目にした方が早い!」

言われた通りに、真ん中のデッカい鱗を抜くと、もう何処を見てもファスタバとしか見えなかった。




周囲を海に囲まれ、高い山々に張り付く様にして耕作地を持つ島国。

他国に比べて耕作地が狭く、ファスタバの数も少ない。

そこに、海を渡って逃げてきたファスタバが伝えたドラーザの力。

その残虐さ。

もう、海を隔てた隣国では、多くのファスタバが喰われていると言う。


だが、この国にも一匹のドラーザが降り立った。

胸に縁取りが黄金に輝く濃紺の鱗を持ち、柔らかに町の広場に舞い降りた。


町の広場に降り立ったドラーザを囲み槍を構える。


そして、ファスタバ達は驚く。

聞いてはいた。

聞いてはいたが、信じていなかった。

ドラーザが、ファスタバの言葉を喋る。

あの、トカゲの様な姿でファスタバの言葉を知って喋る?


その、翼を持ち大きな尾と四肢を持つ者が、海に面した町の広場に降り立ったドラーザ。

このドラーザは違っていた。

ドラーザ達が鱗に覆われた裸体でいるのに、肩から布を纏いファスタバと同じ様に衣を身に纏う。



大きな【声】が響く。

咆哮ではない。

声だ。

「我はドラウド。この地を統べ、民となる者達を守る一族の長だ。

ファスタバの民よ。

我は、無駄な殺戮は好まない。

代表者を五名。出すが良い!」

ファスタバ達は恐れ慄く。

ドラウドと名乗った、この異質な生き物はファスタバ達が使う言葉を流暢に話すでは無いか!

恐る恐る、その町の代表が前に出る。

長と、その二人の息子に、農村から一人、海辺の村から一人。

戦士であった者が、槍を置いて出て来た。

「勇気あるものよ。

我も、爪と翼をたたみ、尾を仕舞おう」

そう言うとドラーザの、羽と尾が消え胸と首筋を除いて鱗も消えた。

顔も恐ろしげな姿からファスタバと同じ顔になり、現れ出た成人男性の裸体。

それを恥じる事もなく衆人の前に晒し、胸の鱗を見せて落ちた布を体に巻いた。

「どうじゃ?

『我らは、お主らと同じ一族であった』

と言い伝えられている。

先程、見たであろう?

だが、この姿でも、お主らには私を傷ひとつ付けることは出来ない」

それを証明する為か、戦士の槍を空高く投げ上げ、その下に身を晒す。

悲鳴が上がる。

誰もが槍が胸を突き刺すと!

だが、ドラウドの胸は槍を弾き飛ばす。

「こう言うわけだ。

だが案ずるな。

我は、この地を守ろう。

お前達を守ろう」


ファスタバの長が問う。

「流れきた者が伝えるには、ドラーザはファスタバを狩り、その身を喰らうと聞いている。

お前は、どうしてドラーザの姿で居続けない?」

「先ほども言ったであろう。

元は同じファスタバであったと。

だが、いつの日からか、この様に羽と尾を持ち、盾となる鱗を持った。

槍や剣よりも強き爪を持つ。

だが我の一族は、獣では無い。

元はファスタバで有った者が、ファスタバを食い殺して良い訳が無い。

もう一度言う。

我が一族は、お主達を守る」

「だが、それが本当だと、どうやって証明する」

「確かにな。

だが、信じる信じないのに関わらず我は強者だ。

寝首を掻いてみるか?

それとも、毒を煽らせるか?

だが、もう時間がない」

「なぜだ?」

「隣国を蹂躙したドラーザが、海を渡る準備をしている。

我が一族は、海上でこれを撃破するつもりだ」

「なぜだ? なぜドラーザ同士が闘う?」

「同じドラーザと言えども、ファスタバと同じで憎しみは有るのだよ。

住む地を持たぬ我等一族は、この地でファスタバの諸君と共に歩むしか生きる道がない」

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