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10話 コアAI

 シキたち三人はシアニスから三十メートルほど離れた位置まで下がり、魔獣が現れるのを待つ。

 樹海の中でもこの辺りは開けているので、辛うじてシアニスの姿及びその前方が確認できた。

 ここはシアニスの待機場所なので、切り拓いて戦いやすくしてあるのだろう。


 レーダーが示す通りに前方から飛び出してきたのは、先日も見た猪に似た巨大な魔獣だ。

 全高が二メートル、全長は四メートルくらいあるだろうか。

 ワンボックスカーくらいのサイズ感だ。


「あれは猪突牙獣(ちょとつがじゅう)ね。熟練の第三位階冒険者パーティーでようやくいい勝負が―――」


 エリンの解説を立て続けに鳴った三発の銃声が遮る。

 シアニスの装備したアサルトライフル〈メタリア AKX160〉が火を吹いたのだ。

 非表示のシアニスに気付いていなかった猪突牙獣が音に驚き動きを止めたところを、バースト射撃された全ての33.5×215mm弾が頭部に突き刺さる。


 銃弾は頭蓋骨を貫きそのまま胴体へ到達。

 断末魔を上げる間も無く猪突牙獣が地面に横たわると、頭から流れ出る血が地面を赤く染め上げた。


「な、何が起こったの。突然雷が鳴ったかと思ったら、猪突牙獣が血を流して倒れているけど」


「アサルトライフルだよ母様。ええと、さっきオルティエが首切牙兎に使った飛び道具のもっと大きいやつ」


 表示設定をオンに戻すと、エリンにも膝立ちの姿勢でアサルトライフルを発砲したシアニスの姿が見えるようになる。

 シアニスの側には栄養ドリンクの瓶くらいの大きさの、巨大な薬莢が三つ落ちていた。


「これだけでかい口径なら魔獣も余裕か」


 オルティエの説明の通り一定時間、およそ一分で薬莢と魔獣の死体は空気中に溶けるようにして消えてしまった。


「うーん、体外に流れ出た血は消えないのか。どういう判定なんだろう」


「シキ!? 猪突牙獣が消えちゃった。素材が高く売れるのにもったいないわ! あとお肉は食べるととっても美味しいのよ」


 貧乏男爵家の娘としては、目の前にあった金づるが消えたのがショックだったようだ。

 エリンがシキの両肩を掴んで激しく揺さぶる。


 先程オルティエはスプリガンが止めを刺した場合、魔獣は消えてクレジットに換金されると言っていた。

 つまりスプリガン以外が止めを差せば死体は残るはずだ。


 もしかしたらスプリガンを利用すれば、魔獣狩りがエンフィールド領の一大産業になるかもしれない。

 エリンに揺さぶられ続け、首をかっくんかっくんさせながらシキは考える。


「あーでも仮に冒険者と組んで魔獣を狩るとしても、スプリガンの素性は明かせないから無理か」


「はいはーい、精霊様の素性を知っている元冒険者ならここにいまーす」


「オルティエみたいに人間サイズだったら冒険者に紛れられるか?」


「ちょっと無視しないでー。母様は悲しいわー」


「マスター、各スプリガンには肉体を持つコアAIが搭乗しています」


「えっ、ということはシアニスにもパイロットがいるってこと?」


 てっきりスプリガンそのものが意志を持っていると思っていたのだが違うようだ。


「はい。メニュー画面の〈ユニット〉から〈コアAI〉のタブに移行してください。そこにある〈降機〉を選択すると、コアAIとユニットを分離することができます」


 言われた通りに操作すると、シアニスの胸部にあるコックピットが開いた。

 エアシリンダーが作動し空気の抜ける音と共に開いたコックピットから何かが飛び出し、地上にいるシキの元へと真っすぐ落ちてきた。


「おわっ」


『ご主人様!』


 衝撃で尻もちをついたシキが自分の胸元に目をやれば、そこには栗色の髪の少女がいた。

 オルティエと同じデザインの軍服を着ているが、こちらはスカートではなくショートパンツを穿いている。

 少女はシキの胸に嬉しそうに頬を擦り付けているのだが、その頭部からは犬耳がひょっこりと生えていた。


「え、獣人?」


「まあ、可愛らしい精霊様ね。もしかして私、二番目の座も危うい?」


「いや知らないよ……」

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