三年間、クズ旦那に【魅了】の魔術にかけられていたことが判明したので離縁をつきつけたら、本物の春が来た
マリッサがすべてを知ったのは、本当に偶然のことであった。
辺境地での外交を終え、王都に戻る際。
少し時間ができたので、実家であるマリアーニ伯爵家に寄ったところ、ちょうど実家を訪れていた隣接領地の伯爵子息であり、幼馴染でもあるレオナルド・レオルに突然指摘されたのだ。
「お前、【魅了】にかけられているぞ」
、と。
正直、何のことか全くわからなかった。
それに、マリッサは現在、第二王子・サムエルの妻という身分である。
サムエル王子は、マリッサが他の男と会話を交わすことすら、ひどく嫌っていた。
だから、その時は無視をして家の中へと引っ込んでいたのだが、その晩。
屋敷を訪れたレオナルドが、マリッサの部屋へと踏み入ってきたのだ。
どうやら、マリアーニ家の人間とも示し合わせていたらしい。
なにをされるのか恐ろしくてたまらなかった。
彼に傷物にされたりしたら、サムエル王子にどう思われるか。彼に嫌われることだけは、考えたくない。そればかりが頭をめぐって、悲壮感がわき起こる。
「やめて、やめなさい、レオナルド!」
幼なじみの顔が、まるで飢えた狼かのように見えた。
長く白い髪をしており、生来目つきの悪い彼は、人相が悪く、またなにを考えているのか読み取れないから、なおさら恐ろしい。
恐怖からマリッサは身体を固くする。
必死の抵抗をして、部屋からの脱出を試みたのだけれど、女の力ではかなうわけもなく、あえなく手足を椅子に結ばれる。
そうしてマリッサの自由を奪ってから、レオナルドは魔導書を開いた。そこで、なにやら詠唱を唱えれば、足元に描かれるのは魔法陣だ。
「やめて、なにをする気なの」
最後の最後まで、悲鳴を上げていたが、誰にも届きはしない。
レオナルドが、魔導書の一つを開き、なにやら詠唱を唱える。それによりマリッサの周りを覆っていた魔法陣が白光りとともに発動すると、どうだ。
どんどんと頭がすっきりしていく。
どうやら、これまでのマリッサの思考は霧に包まれていたらしい。もやがかっていた思考が急にクリアになり、晴れ渡った感覚だった。
そうして、いっさいの霧が払われる。
そのあとに残っていたのは、恐ろしい記憶だ。
「…………なに、これ」
もう、暴れ出す理由もない。
マリッサは椅子に縛られたまま床に膝を落として、ぼそりと呟く。
わなわな震える手足を、もう制御できなくなっていた。
嘘だ、と思い込もうとするが、もう元には戻らない。嘘だったのはむしろ、これまでの記憶のほうだ。
うわ塗られていた塗装が、すべてはがされていた。
「やっと解けたか……。三年前からおかしいと思っていたんだ」
レオナルドはマリッサを見ると、ほっと一息ついて魔導書を閉じた。
相変わらず目つきは悪い。
が、さっきは狼のように見えた顔が、今は幼馴染の見慣れた顔に見える。
「レオ……。どういうことなの」
「昼間にも言っただろう? お前は、【魅了】の魔法にかけられていたんだよ。何者かに、あの第二王子に夢中になるよう仕向けられていたらしい」
「サムエル王子に? あれだけ身分が高くて、美しくて、人柄も良い方ならそんなことしなくても――」
言おうとして、違和感に襲われた。
ついさっきまでは、たしかにそう思っていたはずが、マリッサの記憶にある彼のイメージは、今口にした言葉とはまるで異なる。
背が低く、小太りで、いつもくちゃくちゃと何かを口にしていた。
マリッサは頭を押さえて、呟く。
「もしかして、違う……?」
「ああ、まったく違う。サムエル王子は、身分は高いが、豚王子と呼ばれるような見た目をしている。それに、何人も側室を抱えて、金に女にとっかえひっかえしている、と悪い噂はもっぱらだよ」
違う、と反射的に言いそうになる。
が、頭の中にあったイメージはレオナルドがいうサムエル王子の噂とぴったり一致していた。
とんでもなく大きなものを失った感覚であった。
彼と過ごす時間に感じていた幸せも、すべてを許せるくらい深かかったはずの愛情も、ぽっかりと心の中から消えている。
「でも、それじゃあ私の三年間は……」
仕事の関係上、会話をすることが増えて気付けば惹かれていた18の頃。
そうしてサムエル王子と結ばれることとなり、実家の反対にあいながらも説き伏せて、側室でもいいからと嫁いだこと。
二人で過ごした、はじめての夜。
きらきらとマリッサの人生で輝いて思えていたあれらは、すべて偽りだったらしい。
振り返れば、妙な話ではあった。
サムエル王子とはじめて出会ったときは、じろじろと品定めをするように全身を眺められて、その印象はかなり悪かった。
少し距離を置いて接しようかと考えていたくらいだ。それが、いつのまにか惹かれていたのだから、今に思えば不自然な流れである。
「言いにくいが、すべて【魅了】による偽りのうえに作られた虚構だったらしいな」
すぐに受け入れるのは難しいことだった。
マリッサはしばらく、その場から動けなくなる。
「……手荒な真似をして悪かったよ、マリッサ」
それは、彼女の手足を拘束していた紐をレオナルドが解いても、同じことであった。
ぽっかりと心には穴が空いていた。
それだけじゃない。
三年にもわたって、嫌悪感すら抱いていた男に汚された自分の身体にひどい嫌悪感がわいてきて、勝手に涙があふれてくる。
レオナルドはそんなマリッサをしばらく無言で見守ってくれた。
そののち、明け方ごろになって彼は部屋を出ていく。
マリッサは、喪失感から倒れるようにして眠りについたのであった。
♢
事実を受け入れられたのは、それから数日たってのことであった。
時間が心の傷を塞いでいったわけじゃない。それだけなら、もう数か月は立ち直れなかっただろう。
なにせ、【魅了】なる卑劣な魔法により、三年もの歳月を無駄にされたのだ。
が、母からひっそりと聞かされた一つの話が、もう戻らない過去に留まっていたマリッサの心の針を再び動かした。
「レオナルドくん、あなたのためにかなり努力をしたみたいよ」
「……どういうことですか、お母さま」
「あなた昔突然、第二王子・サムエルの側室に立候補して、王家に嫁いでいったわよね。
レオナルド君は、初めからそれをおかしいと思っていたみたい。「あいつが、あのふしだらで悪評しかない王子を好きになるわけがない」って」
「レオがそんなことを?」
「それだけじゃない。あなたのため、とは一言も聞いていなかったけど、このところ彼は家をあけて、西方の異国に魔法修行に出ていたの。
そうして帰ってきたら、浄化魔法を習得していた。それがどういうわけかは、あなたが考えなさい。マリッサ」
母は肝心なことを濁した。
けれど、母の言う通りなら彼は、私が【魅了】の魔法にかけられている可能性を突き止めたうえ、わざわざ浄化魔法を習得してまで、マリッサを引き戻してくれたことになる。
無口で顔からは感情を読み取りにくい彼だが、今回ばかりはその行動だけで十分伝わってきた。
昔から顔見知りだったこともあり、彼とは喧嘩ばかりしてきたから、嫌われているものだと思っていたぐらいだったが、どうやらそれは思い違いだったらしい。
一見分かりにくいが、たしかにあたたかい気持ちが、マリッサの心を早くに癒していた。
おかげで、今後の身の振り方を考えられるくらいには回復したのだ。
まだ、なにも解決はしていない。
いまだマリッサは、 第二王子の数えきれない側室の一人で、その蜘蛛の巣から逃れられてはいないのだ。
この状況から脱するためには、離縁を突きつけなければならない。
が、相手は仮にも第二王子だ。
身分は、比べ物にならないくらい相手の方が上である。普通にこちらから離縁を突き付けたのでは、家ごと廃される危険もある。
それも、あの王子は【魅了】魔法をかけた当人である可能性が高い。
そんなことをして、また同じ魔法をかけられてしまったら、どうすればいいのやら。
そんなふうに、悩む時間を過ごしていたところへ、
「マリッサ、その後調子はどうだ」
ちょうどレオナルドが訪れた。
目的は、【魅了】の魔術を解いて以降のマリッサの様子を見るためだと言う。
彼は魔術書を用いて、マリッサの身体になにやら魔法をかけると、軽く息を吐いた。
「問題はなさそうだな。うまくいっている。また明日、確認しにくる」
それだけ端的に呟いた彼は、もう去っていこうとするのだが、マリッサの腕はなかば勝手にその腕を引きとどめていた。
「どうかしたか、マリッサ」
「……えっと」
どうしてこんなことをしたのか。
自分でも、理由が浮かんでこないから戸惑う。
その末にマリッサはその手を離そうとするのだけれど、今度はそこでそれをレオナルドが包み込んだ。
思いがけないその行動に、なぜかどきりとするのはたぶん、母から話を聞かされていたからだ。
少し意識するようになってしまった。
「なんでも、俺にできることがあれば言うといい。今更、遠慮をする必要はない。幼い頃から、よく俺が皿にのせていたクッキーを勝手に奪っていっただろう」
「い、いつの話をしているの」
「子供の頃も、魔法学校に通っていた頃も、夜会に出るようになってからも変わらなかったと記憶しているが」
「……遠慮を知らなくて悪かったわね」
懐かしさすら感じる、中身のないやりとりだった。
が、三年間の空白の時間を経てなお同じような会話をできたことがマリッサの心を軽くした。
なにも、一人で抱え込む義務があるわけじゃない。
「これからどうしようかと思って考えていたの。私自身、どう動けば一番正しいのか分からない」
マリッサは正直に、今の状況をレオナルドに伝える。
すると彼は親身に話を聞いてくれたあと、自分を指さした。
「そういうことなら、俺を使えばすべてうまくいくかもしれない」
……話を聞けば、なるほど納得のいく提案だった。
♢
数日後、マリッサは実家のマリアーニ領を出て、王都へと向かった。
その馬車には、レオナルドも同乗している。
が、会話は交わせない。
なぜなら彼は、荷物台の中に姿を隠しているためである。
サムエル王子の屋敷に入るための苦肉の策であった。彼は部外者の立ち入りに対しては、かなり厳しいのだ。
少し前までは疑問にも思わなかったが、今に思えば【魅了】を使っていることを隠そうとしていたのかもしれない。
門前では荷物検査もあったのだけれど、上げ底にした箱に、大量の蜜柑を詰めていたため、それ以上は見られなかった。
「すべて、サムエル様方への贈り物です。我が領地の名物なんです」
あたかもまだ魅了されているかのように振る舞ったのも、功を奏したのかもしれない。
そうして無事に、王城内へ入る。
レオナルドの入った供物箱を使用人に運んでもらって向かったのは、サムエル王子のもとだ。
居場所を聞けば、今は『蜜の間』にいるらしい。
「……あの場所ね」
最悪の記憶へと変わった場所の一つだ。
そこでの出来事を思い出すと身の毛がよだち、思わず足が止まりそうになるが、逆に考えれば都合がよかった。
舞台が整っているとも言える。
そのうち、『蜜の間』の前にたどり着く。
使用人が離れると、マリッサは荷物を整理するふりをしてかがみ、レオナルドへと話しかけた。
「合図をしたら、頼むわね」
返事がわりに、箱がひとつ叩かれる。
それを確認してから、マリッサは荷物を押して、『蜜の間』へと入った。
「失礼いたします、サムエル様」
暗く、明かりの落とされたその空間は、生ぬるい空気が充満している。
その理由は、この部屋には何人もの人間がいるためだ。
「おぉ、やっと帰ったか。随分と遅かったな、マリ」
椅子のうえで、足組みをして出迎える小太りの男――サムエル王子の周りには、何人もの女性がはべらせられていた。うっとりした顔で、彼の手や足にまとわりついている。
【魅了】から放たれて、まともな思考回路を取り戻してみたら、なんとおかしな光景だろう。
マリッサは嫌悪感を覚えつつも、今はまだ悟られてはいけない。
にこりと笑顔を作って見せる。
「お時間がかかり、申しわけありません」
「はは、構わないよ。外交まで担ってくれて、大変助かっている。それより、マリッサ。君もこちらへ寄るんだ。待ちわびていたよ」
サムエルは、マリッサに手招きをする。
が、その通りには動かない。もう、あんな男の腕に抱かれるのは、金輪際ごめんなのだ。
「いえ、その前にこちらを。遅れたお詫びの供物でございます」
「……ほう?」
マリッサは、台車を押して彼サムエル王子のすぐ近くまで運んでいく。
そこで、箱を一つ大きく叩いた。
それが合図であった。
箱が内側から破られる。中からは、レオナルドが飛び出てきた。
「な、なんだ!? 貴様、どこから!」
驚くサムエル王子をよそに、彼はマリッサの時と同様、冷静に魔法陣を展開して、浄化魔法を発動する。
すると、あたり一帯を白い光が包み込む。
眩しさから目を瞑ってしまったが、開けてみればそこでは、【魅了】が終わっていたらしかった。
「……あ、あたし、なんでこんな格好に!?」
「ひぃっ、なに、この場所!! というか、なんでサムエル王子なんかとこんなことに……!」
作戦は成功したようだった。
やはり、女性はそのほとんどが【魅了】にかけられていたようだ。
それが一斉に解かれたものだから、その狭い部屋は一気に阿鼻叫喚状態と化していた。
「な、なにが起きたんだ!?」
サムエル王子は、さっきまでは従順だった女性たちの変化に、情けなくもおろおろと辺りを見回す。
「ま、まさか! 貴様!」
「貴様はないでしょう、王子。あなたが、異国の魔術・【魅了】を違法に使われていたので、俺はそれを解除しただけのことだ」
「なんだと! どこで、それを知った!」
「簡単に認めてくれて何よりだ。少し気になったから調べていただけのこと。あなたのような下衆に詳細まで語る必要はない」
「貴様! 誰に口を聞いているか分かっているのか!」
「サムエル王子……いや、違法魔法に手を染めた以上は、もう王子のままではいられないかもしれませんね」
その言葉は、的確にサムエル王子を追い詰めたらしかった。
王子は怒りを露わにして、近場に置いていたらしい短刀の一本を握って立ちあがる。
「お前か! お前がこの侵入者を入れたんだな、マリぃ!!」
そうして、マリッサを狙ってこんとするのだが……、レオナルドがその動きを読んでいたらしい。
サムエルの手元を蹴り上げると、短刀が床に落ちる。
そこを彼が得意の光属性魔法・光輪にて地面にしばりつければ、簡単に御用になった。
マリッサは情けなく床に這いつくばる彼に、離縁状を突き付ける。
「金輪際、関わらないでくださいませ」
三年もの歳月を奪われたにしては、驚くほどあっさりした幕切れであった。
♢
いかに一国の王子とはいえ、貴族の令嬢らに被害が大きかったこともあり、王家も庇い切れなかったらしい。
レオナルドとともにサムエル王子の屋敷に乗り込んだ日からひと月程度、その近辺にはすぐに調査が入り、彼はあえなく牢獄に入れられた。
サムエル王子はどうやら、自分の部下だけではなく、重臣たちや王にも悉く【魅了】をかけていたらしい。
そのため、「おかしい」と言う声は家臣らから上がっていたものの、宮廷庁がまともに取り合わず、三年間も好き放題していたらしい。
中にはすでに子供がいたり、妊娠している者もいたとか。
その事実を知り、心を病んでしまった令嬢もいるそう。
最悪の所業だ。
いくら王子と言えど、かなりの重罪であり、処刑される可能性もあるそうだ。
庇うものは誰一人としていなかったらしい。
マリッサは実家にて、その報告を聞いた。
他によりどころがないこともあり、「心の傷を癒しなさい」という母の言葉に甘えさせてもらっていたのだ。
たんまり賠償金も出るから、私一人を療養させるくらいなんとでもなるらしい。
庭の植物たちに水をやったり、屋敷内のレイアウトを変えてみたり、お裁縫を学んでみたり。
基本的には、心安らぐ穏やかな日々だった。
そんななかで唯一の刺激となっていたのは――
「それから、調子は変わらないか、マリッサ」
レオナルドの来訪だ。
もう浄化魔法が解けてから何か月も経っている。それでも彼は、毎日のようにうちの屋敷まで通い続けてくれていた。
中庭に用意していたパラソルの下、お茶を用意して、それを出迎える。
そのために、菓子を自ら焼いたことなどは秘密だ。
「うん、私は大丈夫。毎日ありがとうね。忙しかったら、こなくてもいいのよ?」
「俺の意志で来ているんだ、気にしなくていい」
「そう、ならいいけど……最近はずいぶん、人気だって聞くから。【魅了】を解いた令嬢がみんな、あなたに会いたがってるって」
それは、この間、お茶会兼【魅了】被害者の会にて聞いた話だった。
無口で、社交向きではない彼だが、たくさんの令嬢を救ったとしてその評価はかなり上がっているらしい。
噂によれば、公爵令嬢様までもが彼を狙っているのだとか。
が、しかし。
「……だから、なんだ。俺は別にそうは思っていない」
あくまでも彼は、この態度を変えない。
照れ隠しなどではなく、本当に興味がなさそうに言うのだ。
「私には会いに来てくれるのに?」
だから、少しだけ揺さぶりをかけてみる。
あくまで、ちょっとした会話の一環だ。
とくに、なにかの答えを求めていたわけでもない。少しも、甘い言葉をもらえる期待はしていなかった。
だのに、彼は平然として言う。
「お前のためならば、いついかなる時でも来るさ」
心臓がいきなり大きく一つ跳ね上がった。
鼓動はさらに加速していく。まったく身構えていなかったから、なおのことだ。
「え、えっと……? あ、幼なじみだから?」
いったい、どういう意味の発言なのだろう。
都合のいい思考が浮かんできそうになるがそれを取り払い、思い当たる理由をつぶやく。
「いいや、お前が好きだからだ。三年以上前から、ずっとそうだった」
が、彼ははっきりとこう言ったのだ。
紅茶に口をつけながら平然とした様子で。
「えっと、幼なじみとしてじゃなくなのよね」
「当たり前だ。でなければ、ここまでしない」
マリッサはおおいに混乱する。
齢21、一度は結婚までした令嬢だ。
だが、【魅了】にかけられての恋愛と、本当の恋愛とでは感覚が大きく違うらしい。
うっかり手が滑り、紅茶のカップを落としかけるが、なんとかそこで堪える。
震えながら上目に、レオナルドのほうを見る。
「でも、私はサムエル王子に傷物にされた。形の上では離婚歴もある。そんなのでもいいの」
「それがなんだ。お前はお前だろう? その事実さえ変わらなければ、それでいい。お前の傷が癒える手伝いなら、いくらでもするさ」
彼は珍しく小さく笑い、マリッサに手を伸べる。
……なんて、優しいのだろう、この人は。その優しさには、今まさに傷が癒えていく気さえする。
マリッサは、ぎこちないながら、その手を取る。
あたたかい手だった。
その温かさは、簡単に黒く塗りつぶした三年間を埋めていく。
偽物ではない、ほんものの温かみだ。
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