プロローグ 楠翔
三角四角と申します。
『鎮静のクロッカス』という作品をローファンタジーのジャンルでも投稿しておりまして、申し訳ないですが基本そちらの作品を優先することが多くなるかもしれませんが……、一話ごとの文字数少なめで更新頻度は下げないように頑張りたいと思うので、よければブックマーク・評価・いいね・感想などよろしくお願いします!
「ふぁ~あ」
朝。少し前髪が長い高校二年生・楠翔は通学路をとぼとぼ歩きながら大きな欠伸をした。
(瞼重……徹夜し過ぎたー)
噛み殺せない欠伸を何度もしていると、後ろからぽんと肩を叩かれた。
「はよー、翔」
声をかけてきたのはクラスメイトの女子・日ノ原美弓だ。翔と同じ漫画研究部でもある。
「おふぉよ~、みゆ」
翔が欠伸をしながら挨拶をすると、美弓はクスリと笑った。
「眠そうね~。またイラスト書いてたの?」
「うん。今日SNSにアップする予定」
翔の趣味は絵を描くことだ。
SNSにも上げている。更新頻度が少なく、絵も鉛筆で描いたものだから人気はないが、それでも賞賛してくれる人がいるから嬉しい。
「………んー」
しかし、美弓は表情を曇らせた。
「翔の絵が褒められるのは嬉しいけど……」
「アンチコメントのこと?」
美弓の表情が浮かない理由を翔が言い当てる。
「うん…」
「別に気にしてないからいいよ。……それに、そのアンチコメント書いている奴らは想像つくし」
翔の脳裏の同じクラスの面々が思い浮かぶ。
いつも教室の中心でゲラゲラ笑いながら話す、俗にいう一軍グループの男女達だ。
「翔がそう言うならいいけどね」
美弓が肩を竦めた。
……するとそこへ。
「おっはよー!」
元気な声と共に男子生徒が現れた。
「朝からうるさいよ、陽太」
「もっと静かにして、陽太」
梅桐陽太。
翔や美弓と同じ漫画研究部の一員だ。天然で常時元気な少年である。
「それよりも聞いてよ! 昨日いい感じの廃墟見付けたんだよね! 最近話題の心霊スポットでさ! 人気ユアチューバーが一週間寝泊りした後に階段から転んで足の骨折っちゃって、何かに取り憑かれるんじゃないかってオカルトマニアの間でバズってるんだ!」
ちなみに趣味はオカルト全般だ。
「「…………」」
「ちょっと! 無視しないでよ! ちょ、二人とも歩くの早いって! ま、待ってええええ!」
翔は、これからも何気ない日常が続くものだと思っていた。
趣味に生き、少し嫌なことがありつつも、気の置ける友達と過ごす。
翔は今の生活に満足していた。
………それがなんの前触れもなく失われるなんて、思いもしなかった。