表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

僕が恋したのは十日間の君の姿

作者: 真中アラタ
掲載日:2021/05/13

こちらは映画脚本です。見ていただけら幸いです。

 


 僕が恋したのは

 十日間の君の姿













 

「僕が恋したのは十日間の君の姿」・登場人物表

 大枝利治おおえだ としはる(21)(41)大学3年生

 西園寺茜さいおんじ あかね(21)大学3年生

 倉田友貴くらたともたか(21)大枝の友人

 遠藤智えんどうさとし(22)大枝の友人 留年一年している

 上田春樹うえだはるき(故25)茜の元カレ バンドマン

 ジャッキー前田(47)ライブハウスオーナー

 清水麻奈美しみずまなみ(21)倉田の彼女

 石原(22)遠藤の友人

 相模原(21)イケメン

 カフェ店員

 男性1

 男性2

 男性3

 男性4

 男性5

 男性6

 女子大生1 

 女子大生2

 女子大生3 

 女子高校生1

 店長 

 スタッフ1

 スタッフ2



 シャドーガーディアンズのメンバー

 マサ   ギター 

 ソースケ ベース

 ピーター ドラム


 サンウォーカーズペイント(太陽の様に第一線で輝き続け 

 その人の人生に色をつけて行くという意味のバンド名)

 パイロットビーンズ

 まめ太(32)

 ピカント小池(32)


 池添エリナ(20)大学生

 カップル男性

 カップル女性

 


 1.駅・プラットホーム

 人の少ないプラットホーム。

 階段をゆっくり歩いて来る大枝利治(41)。

 手にシワの付いた手紙を持っている。

 立ち止まる大枝。

 カメラに向かって会釈をする大枝。

 大 枝「ここで出会ったのも何かの縁かもしれません。少しばかり私

 の話を聞いてはくれませんか? と質問しておきながら一方

 的に話すのですが。九月十五日、私にとってこの日はとても

 大切な思い出があります。人はきっかけがあれば変われると

 いう事を教えてくれた女性がいるのです」 

 ベンチに座る大枝。

 大 枝「まだ暑さが残る時期ではありますが、少しばかりご勘弁を」

 手紙を開く大枝。



 2.大学・全景(朝)

 T『20年前』

 歩いている大学生達。

 大枝M「あれは私が大学生、いや冴えない大学生時代の頃でした」

 3.アパート・大枝の部屋•中(朝)

 ゴミが散らかっている部屋。

 ベッドで眠っている大枝。

 携帯電話のバイブレーション。

 気持ち良さそうに眠っている大枝。


 4.大学・教室(朝)

 多くの生徒で賑わっている教室。

 電話を掛けているお洒な格好をした倉田友貴(21)。

 倉田の隣に遠藤智(22)。

 諦めた顔の倉田。

 倉 田「ダメだ。出やしない」

 遠 藤「留年決定だな」

 5.アパート・大枝の部屋•外(朝)

 メガネ、ボサボサの髪、裏返しの服を着た大枝が鞄を持ち

 出てくる。


 6.道(朝)

 走っている大枝。


 7.大学・廊下(朝)

 壁に『大学カップルワングランプリのポスター』

 教室に向かっている教授。

 8.同・教室(朝)

 ドアを見ている倉田、遠藤。

 倉 田「間に合いますかね?」

 遠 藤「五分五分だな」

 9.同・正門(朝)

 走ってくる大枝。

 10.同・廊下(朝)

 歩いている教授。


 11.同・教室(朝)

 祈りながらドアを見ている倉田と遠藤。


 12.同・別の教室(朝)

 ドアを開ける大枝。

 大 枝「遅くなりました!」

 誰もいない教室。

 大 枝「あれ?」

 13.同・教室

 チャイムの音。

 出て行く教授。

 ムッとしている大枝。

 大枝を見て笑っている倉田と遠藤。

 遠 藤「やっちまったな」

 大 枝「忘れてください」

 遠 藤「俺らのフォローがなければ終わってたぞ」

 大 枝「感謝してます」

 倉 田「にしても、ヨレヨレの服に寝癖、どうせ靴下に穴だって空いて

 るんだろ? もっと見た目はこだわった方がいいぞ」

 靴下を確認して目を逸らす大枝。

 遠 藤「いつになったら大枝に彼女が出来ることやら」

 大 枝「そんなの要らないよ。彼女が出来たらお金使うし、自分の時間

 がなくなる。デメリットしかないんだけど」

 倉 田「まあお前の言っている事は正しい。でもな、彼女が出来ればお

 前もきっと変わるはずだ」

 遠 藤「試しに付き合ってみろよ」

 大 枝「誰と? 面倒しかない」

 机で寝ようとする大枝。

 大枝を起こす倉田。

 倉 田「想像してみろ。誕生日に彼女がいたらどうだ? 二人で過ごせ

 る最高の時間になる。誕生日だけじゃない、クリスマス、お正

 月、バレンタインデーなど。彼女がいる、いないで人生の角度

 が180度変わるんだぞ」

 大枝、起きながら

 大 枝「仮に彼女が出来て記念日を二人で過ごしたって、喧嘩や気まず

 さ、一回一回の報告。それを考えるくらいなら最初からいない

 方がマシだと僕は思う」

 遠 藤「人の意見を聞く事も大事だぞ」

 大 枝「いいんですよ。僕は僕なので」

 眠りにつく大枝。

 遠藤の携帯が鳴る。

 驚きながら携帯を見て立ち上がる遠藤。

 倉 田「どうしたんですか?」

 遠 藤「うちの大学に美女現る」

 倉田、大枝の耳元で

 倉 田「美女だって」

 チラッと倉田を見る大枝。

 14.同・食堂

 大枝、倉田、遠藤が歩いてくる。

 男性の人だかりが出来ている。

 大 枝「美人の編入生ねえ」

 倉 田「興味があるくせに」

 大 枝「ねえよ」

 遠 藤「俺の友人が言うにはモデルさんみたいだって」

 大 枝「へえ〜」

 遠藤を見つける石原(22)。

 石 原「遠藤」

 遠 藤「あそこに?」

 石 原「ああ」

 男性達を掻き分けていく遠藤。

 倉 田「付いて行くよ」

 大 枝「別にいいよ」

 倉 田「いいから」

 大枝の手を引っ張る倉田。

 イヤホンをして勉強をしている西園寺茜(21)の姿。   

 茜を見て目を見開く遠藤。

 遠 藤「めっちゃ美人」

 遠藤の近くにいく大枝と倉田。

 大 枝「興味がないって言ってるだろ ……」

 茜を見る大枝。

 じっと茜を見つめる大枝。

 倉 田「(冗談っぽく)大枝、話かけてこいよ」

 大 枝「……」

 遠 藤「大枝には荷が重い、ここは俺が行って参る」

 遠藤が歩き出そうとするがイケメンの相模原(21)が茜

 に近づく。

 遠 藤「あいつは……うちの大学ミスターイケメン三年連続グランプリ。

 相模原」

 茜の肩を叩く相模原。

 相模原「君、編入生?」

 相模原を一瞥する茜。

 茜のイヤホンを取る相模原。

 相模原「人の話は目を耳と心で聞くものさ。良かったら俺とご飯でも食

 べに行かない?」

 『おー』という声。

 遠 藤「さすが女慣れしている」

 倉 田「そしてあの顔で言われたら」

 大 枝「……いけすかない」

 人の隙間から大枝の姿を見る茜。

 思い詰めた表情で立ち上がる茜。

 『おー』という声。

 茜 「……嬉しい」

 ニヤリと笑う相模原。

 相模原「じゃあ行こうか」

 茜に手を差し伸べる相模原。

 不思議そうに相模原に目を向ける茜。

 茜 「どこに?」

 相模原「ランチだよ。嬉しいんだろ?」

 茜 「ここ、食堂ですけど」

 戸惑う相模原。

 相模原「いや、そういうことじゃなくて」

 茜 「ご飯を食べに行きたいのなら、どうぞご自由に」

 椅子に座りイヤホンを付ける茜。

 ノートを開き勉強を始める茜。

 苦笑いをする相模原。

 周りを見る相模原。

 相模原「……そうだ。まだレポートの途中だった」

 走って去って行く相模原。

 男性1「相模原でダメなら俺達でも」

 男性2「玉砕だな」

 茜の周りから去って行く男性達。

 大枝の肩を叩く遠藤。

 遠 藤「お前じゃ手が負えん。ああいうタイプと付き合っても楽しくな

 い」

 倉 田「彼氏いますかね?」

 遠 藤「いやー性格があれだからな」

 大 枝「……男性、誰もが憧れる完璧な女性か」

 倉 田「大枝?」

 大 枝「遠藤さん、倉田。僕」

 遠 藤「どうした?」

 大 枝「僕、初めて恋をしたかもしれない」

 15.タイトルに合う場所

 T『僕が恋したのは十日間の君の姿』

 16.大学・食堂

 茜から離れた場所に座っている大枝、倉田、遠藤。

 遠 藤「大枝、あれは止めとけ」

 大 枝「どうして?」

 倉 田「確かに付き合った方がいいとは言ったけど、レベルが違いすぎ

 る」

 大 枝「やってみないとわからないだろ」

 遠 藤「順序ってものがあるだろ? ただの村人がラスボスを倒せない

 ようにだな」

 倉 田「遠藤さん!」

 茜の周りに男性達が集ってくる。

 茜を見ている倉田と遠藤。

 遠 藤「第二陣が来たか」

 目線を戻す倉田と遠藤。

 大枝の姿がない。

 倉 田「あれ? 大枝は?」

 茜の方を見ると茜に近づこうとする大枝。

 急いで大枝をもとの場所に戻そうとする遠藤。

 大 枝「早くしないと取られてしまいます」

 遠 藤「だーかーら、冷静になれって」

 大 枝「離してください」

 遠 藤「友人のアドバイスは聞いとくもんだ」

 大 枝「そんなの知らないですよ!」

 倉 田「……美女の力はすごいな」

 遠 藤「俺はお前の事を思って」

 大 枝「名前! 名前を聞くくらいならいいですよね?」

 遠 藤「まあ、その位なら」

 大枝を離す遠藤。

 茜に近づく大枝。

 大枝に向かって手を合わせる倉田と遠藤。

 茜に近づいて行く大枝。

 大枝、歩きながら服や髪型などを直している。  

 茜の正面に立つ大枝。

 大枝に目を向ける茜。

 緊張している大枝。

 心配そうに見ている倉田と遠藤。

 遠 藤「俺、もう見てられない」

 倉田の胸に顔を埋める遠藤。

 イヤホンを取る茜。

 茜 「何か?」

 直立不動になる大枝。

 大 枝「(声が裏返っている)べっ勉強中にすみません。私、三年大枝

 利治と申します。本日から編入されたとの事で、何かわからな

 い事がありましたらお気軽にお申し付けくださいませ。ませ」

 茜 「あっありがとうございます」

 遠 藤「自己紹介というより」

 倉 田「案内人」

 大 枝「あの、おおおお名前なんていうんですか?」

 一息吐き、ノートを閉じる茜。

 遠 藤「マズい!」

 大枝に近づく倉田と遠藤。

 立ち上がる茜。

 茜を見る大枝。

 じっと大枝の顔を見ている茜。

 大枝(心の声)「これさっき見たやつ」

 大枝の近くに行く倉田と遠藤。

 遠 藤「本当に申し訳ありません。こいつに悪気はないんです。ですが、

 今回ばかりは少しネジが外れてしまったというか。そもそもネ

 ジがあるのかというか」

 倉 田「いい勉強をさせていただきありがとうございました」

 頭を下げる倉田、遠藤。

 大枝の頭を下げる遠藤。

 フッと笑う茜。

 茜 「西園寺茜。大学三年生」

 ゆっくり顔を上げる大枝、倉田、遠藤。

 茜 「何驚いた顔をしているの? 同級生でしょ?」

 大 枝「えっといや、その、茜……さん」

 茜 「うん」

 大 枝「よっよろしくお願いします」

 茜 「こちらこそ。大学の事で分からない事があったら大枝君に相談

 するね」

 大 枝「あっはい! 相談。はい! そのえっと勉強頑張って下さい!」

 立ち去っていく大枝。

 一礼して大枝を追いかける倉田と遠藤。

 ニコッとして大枝を見る茜。

 茜に近づく男性3。

 男性3「あの、俺の名前は……」

 イヤホンをする茜。

 17.道

 浮かれている大枝。

 大枝に近づく倉田と遠藤。

 倉 田「大枝、やるじゃん」

 遠 藤「案内人、お疲れさん」

 大 枝「バサっと言われるかと思った。ここ食堂なんだけど。って」

 遠 藤「だな。まあお前にしてはよくやったよ!」

 大枝、止まる。

 倉 田「ん? どうした?」

 大 枝「僕、頑張る」

 倉 田「何を?」

 大 枝「茜さんのコト」

 遠 藤「確かに誰もが惚れるとは思うけど、付き合うとなると話がな」

 倉田を見る遠藤。

 倉 田「応援したい気持ちはあるんだけど」

 大 枝「いや、付き合うなら茜さん以外考えられない」

 倉田・遠藤「ええーーー!」

 驚き、大枝から離れる倉田と遠藤。

 遠 藤「怖い、怖い。この子怖い」

 倉 田「俺らじゃ手が負えない」

 大 枝「リアクション大きすぎません?」

 ゆっくり大枝に近づく倉田と遠藤。

 遠 藤「確認だが、あの西園寺さんとお前が付き合う?」

 大 枝「はい!」

 倉 田「寝癖、ヨレヨレの服、靴下の穴、口が臭い。男として落第点の

 お前が西園寺さんと?」

 大 枝「そうだけど」

 顔を見合わせて苦笑いをする倉田と遠藤。

 大 枝「……僕ってそんなにヤバいの?」

 倉田・遠藤「ヤバい!」

 驚いた顔をする大枝。

 大 枝「知らなかった。まさかそんなにとは」

 倉 田「今回がダメでも。大枝が自分の事を少しでも理解してくれて、

 俺、嬉しい」

 遠 藤「どんな結果になろうと俺らはお前の味方だ」

 大 枝「振られる前提で話すの止めてもらえませんか?」

 倉 田「まあ相談するって言ってくれたわけだし。可能性はゼロではな

 い」

 遠 藤「ほぼゼロだけど」

 大 枝「遠藤さん」

 遠 藤「よし! なんとかする為に大枝の家で作戦会議だ!」

 大 枝「何で僕の家なんですか?」

 遠 藤「気にすんなって」

 倉 田「遠藤さん。すいません」

 遠 藤「どうした?」

 麻奈美の声「友貴!」

 倉田の方に手を振っている清水麻奈美(21)。

 倉 田「彼女に呼び出されちゃってて」

 倉田に近づく麻奈美。

 麻奈美「もう! 約束忘れていたわけじゃないよね?」

 倉 田「忘れてたわけじゃないよ」

 倉田の腕を掴み歩いて行く麻奈美。

 麻奈美「そうそう、大枝君、遠藤君。これ絶対に見に来て」

 大枝、遠藤に『カップルワングランプリ』のチラシを渡す

 麻奈美。

 大 枝「カップルワン?」

 麻奈美「ミスコンや、ミスターコンはあるでしょ? そのカップルバー

 ジョン。今回第一回だからまだ出場者が少なくてチャンスなの。

 当日まで参加オッケーみたいだから是非」

 大 枝「いや、是非って言われても」

 麻奈美「愛は色んな形があるから大丈夫だよ」

 大枝と遠藤を見る麻奈美。

 見合わせる大枝と遠藤。

 大枝、遠藤「ないない」

 倉 田「えっ俺ら出るの?」

 麻奈美「当たり前なんだけど」

 倉 田「マジかよ」

 麻奈美「ほら、気を取り直してデート」

 浮かない表情で麻奈美に連れられていく倉田。

 倉田を見ている大枝と遠藤。

 遠 藤「……倉田はほっといて行くか」

 大 枝「はい」

 歩きだす大枝と遠藤。

 18.アパート・大枝の部屋(夕)

 ベッドに座っている遠藤。

 缶ビールを持っくる大枝。

 遠 藤「にしても相変わらず汚いな」

 大 枝「遠藤さん、それを言わないで下さい」

 遠 藤「そのうち、掃除手伝ってやるからな」

 大 枝「別にいいですよ」

 大枝、倉田、金髪の遠藤が写った写真が床にある。

 写真を拾う遠藤。

 遠 藤「これ、入学の時の写真」

 大 枝「懐かしいですね」

 遠 藤「この時、大枝が話しかけてくれなければ、今の関係はなかった

 かもな」

 大 枝「遠藤さん、目立ってから想い出にと思って」

 遠 藤「こういうものはちゃんと飾っておくものだぞ」

 大 枝「すみません」

 写真をテーブルの上に置き床を探る遠藤。

 遠 藤「まだ何か出て来そうだな」

 大 枝「勘弁して下さいよ。それより作戦会議ですよね?」

 遠 藤「そうだった」

 大 枝「気になってたんですけど。相談するってもしかしたらただの社

 交辞令って可能性もありますよね?」

 遠 藤「この短期間で成長したな。そう、まだ油断が出来ない状況にあ

 る」

 大 枝「どうしたらいいんですか?」

 遠 藤「明日、会ったら連絡先を聞く。そうすれば今日の言葉が本当だ

 ったのか分かる」

 大 枝「教えてもらえなかったら」

 遠 藤「相模原と同じ道を歩む事になるだろうな」

 大 枝「そんなの嫌だ!」

 頭を抑える大枝。

 遠 藤「落ち着け! ここからは一言一言が大事になってくる」

 大 枝「遠藤さん、どうすれば」

 遠 藤「勉強を教える……大枝だと教えられる方になるか」

 大 枝「すいません」

 遠 藤「正当法で連絡先を聞くってのは成功率が低そうだし」

 大 枝「ですね」

 遠 藤「……ないな」

 缶ビールを飲み始める遠藤。

 遠藤の体を揺さぶる大枝。

 大 枝「ちょっと諦めないで下さいよ」

 遠 藤「ビール、こぼれるだろ」

 大 枝「遠藤さん!」

 遠 藤「俺だって応援したいさ。けど美女を落とす方法なんて分かるわ 

 けないだろ」

 大 枝「その為の作戦会議ですよね?」

 遠 藤「こう、距離を何気なく近づける手はないんだろうか」

 大 枝「簡単に思いつくものではありませんね」

 遠 藤「だな」

 写真を見る大枝。

 大 枝「あっ」

 遠 藤「どうした?」

 大 枝「作戦、思いついた」

 遠 藤「大丈夫か?」

 大 枝「多分。この作戦なら」

 自信のある表情をする大枝。

 19.大学・食堂

 イヤホンをして勉強をしている茜。

 少し離れた位置で茜を見ている男性達。

 食堂に来る大枝、倉田、遠藤。

 寝癖はなくしっかりとした服装の大枝。

 20.(回想)アパート・大枝の部屋•中(夕)

 写真を手に持つ大枝。

 大枝を見る遠藤。

 大 枝「まずこの大学の生徒全員と写真を撮ろうとしていると話を持ち

 かける」

 遠 藤「写真か」

 大 枝「そして写真のデータを送りたいから連絡先を教えてという」

 遠 藤「なんかイヤらしいな作戦だな」

 大 枝「完璧だ」

 21.大学・食堂 

 緊張している大枝。

 大枝の隣に倉田と遠藤。

 倉 田「大枝、顔色悪いぞ」

 大 枝「大丈夫」

 遠 藤「止めるなら今のうちだぞ」

 大 枝「大丈夫」

 倉 田「靴下の穴は?」

 大 枝「空いている」

 歩き出す大枝、倉田、遠藤。

 茜の前で立ち止まる大枝。

 顔を上げる茜。

 茜 「(口の動きだけ)ハル」

 ハッとする茜。

 イヤホンを取る茜。

 茜 「大枝君、こんにちは」

 大 枝「きょっ今日も勉強してるんですね」

 茜 「うん。にしてもビックリ。服装が変わるだけで違う人みたい」

 大 枝「ありがとうございます」

 茜 「今日はどうしたの?」

 大 枝「新しく企画を始めまして」

 茜 「企画?」

 大 枝「大学の全校生徒と写真を取りたいと思っていて、その第一号

 になっていただきたいんです」

 茜 「私が?」

 困った表情の茜。

 遠 藤「ですよね。分かってました。はい退散」

 倉 田「あの、気にしないでください」

 大 枝「いきなり、それはないですよね」

 遠 藤「ほら、行くぞ」

 歩き出す大枝、倉田、遠藤。

 立ち上がる茜。

 茜 「あの!」

 振り向く大枝、倉田、遠藤。

 茜 「いいですよ。写真」

 大 枝「本当ですか?」

 茜 「はい」

 ハイタッチをする倉田と遠藤。

 大 枝「じゃああの、そのデータを送りたいので連絡先を」

 浮かない表情をする茜。

 茜 「あの……それは」

 不思議そうな顔をする大枝。

 22.同・教室

 携帯電話を持っている大枝。

 携帯電話に大枝と茜が写っている。

 ふてくされている遠藤。

 考えている倉田。

 遠 藤「スマホ、持ってないか」

 倉 田「断り方としては完璧だよね」

 遠 藤「今時そんな人いるか?」

 大 枝「でも、何で撮らせてくれたんだろう」

 遠 藤「学生生活最後の想い出を作ってあげたかったとか?」

 倉 田「建前とか?」

 遠 藤「留年に落ち込まないでとか」

 大 枝「どうしてネガティブになるの?」

 遠 藤「それしか思いつかなくて」

 茜が教室に入ってくる。

 倉 田「あっ茜さん」

 茜を見る大枝。

 倉 田「何でこの大学に編入してきたんだろう」

 遠 藤「確かに。偏差値だって高いわけじゃないのに」

 大 枝「大学院に行きたいとか」

 倉 田「この大学の大学院にか?」

 大 枝「そうだよね」

 倉 田「見た目は完璧だけど、中身は謎だらけ」

 茜をじっと見ている大枝。

 23.同・正門(夕)

 雨が降っている。

 立っている大枝。

 大枝に近づく倉田と遠藤。

 遠 藤「雨か」

 倉 田「俺は持ってるけど二人は?」

 折りたたみ傘を取り出す倉田。

 大枝・遠藤「ない」

 倉 田「さすがに二人は入らないな」

 傘を差している麻奈美。

 麻奈美「友貴!」

 倉田に近づく麻奈美。

 倉 田「マジかよ!」

 麻奈美「どうしたの?」

 倉 田「二人が傘がないっていうから」

 麻奈美「なら友貴の傘貸してあげなよ」

 倉 田「そしたら俺が」

 麻奈美「今日は相合い傘出来るね」

 倉田の傘を遠藤に渡す麻奈美。

 嬉しそうな顔をして倉田を傘の中に入れる麻奈美。

 麻奈美「行こ」

 倉 田「いやちょっと」

 麻奈美「行くよ〜」

 歩いて行く倉田。

 倉 田「後で合流するから」

 遠 藤「分かった!」

 大 枝「彼女ってあんなに大変なんですか?」

 遠 藤「あれは特別だ」

 イヤホンをしながら茜が空を見上げている。

 茜を見る大枝。

 大 枝「茜さんだ。傘持ってないのかな?」

 大枝に傘を渡す遠藤。

 遠 藤「行って来い」

 大 枝「でも、遠藤さんが」

 遠 藤「俺の事はいいから」

 頷き茜に近づく大枝。

 大 枝「茜さん」

 大枝を見る茜。

 茜 「大枝君」

 大 枝「傘、持ってないんですか? あの良かったら、その途中まで一

     緒に……」

 茜 「ありがとう。でも」

 鞄から折りたたみ傘を出す茜。

 茜 「実は持ってたりして」

 大 枝「そうですよね」

 助けを求めるような顔をして遠藤を見る大枝。

 頑張れという動きをしている遠藤。

 大 枝「なら、その途中まで一緒に帰りませんか? ほらまだちゃんと

 話したことないですし」

 茜 「……ちゃんとか」

 淋しそうに笑う茜。

 茜 「今日はごめんなさい。今度時間作るから」

 傘を差して歩いて行く茜。

 茜をじっと見ている大枝。

 大枝に近づく遠藤。

 遠 藤「さすが完璧な女」

 口を開けて固まっている大枝。

 遠 藤「どうした大枝?」

 体を揺さぶる遠藤。

 遠 藤「大枝!」

 24.カラオケ・全景(夜)

 遠藤の歌っている声。

 25.同・室内(夜)

 歌っている遠藤。

 呆然としている大枝。

 歌い終わる遠藤。

 遠 藤「いえーい! 盛り上がっているかーい!」

 大 枝「……」

 遠 藤「おい、何か喋れよ」

 大 枝「……振られた」

 遠 藤「はあ?」

 大 枝「絶対に振られた」

 ソファーに泣き崩れる大枝。

 遠 藤「なわけないだろ。ただ用事があるって言われただけで大袈裟な」

 大 枝「その用事は僕よりも重要なんだよ!」

 大枝にチョップをする遠藤。

 遠 藤「何様のつもりだ」

 大 枝「痛ッ!」

 遠 藤「まだ付き合ってもないのに彼氏面すんな」

 ドアを開け急いで入ってくる倉田。

 倉 田「大枝! 大丈夫か?」

 大 枝「倉田、俺……」

 倉 田「仕方ない、仕方なかったんだ」

 大枝を抱きしめる倉田。

 大 枝「俺、恋出来て良かった」

 倉 田「ああ、お前は良くやったよ」

 遠 藤「いや、始まってないから。勝手に終わらすな」

 倉 田「だって大枝が振られたって」

 目を細めながら大枝を見る遠藤。

 遠 藤「実はだな」

 26.同・外(夜)

 倉田の笑い声。

 27.同・室内(夜)

 ふてくされている大枝。

 笑っている倉田。

 呆れている遠藤。

 倉 田「小学生か!」

 大 枝「だって」

 遠 藤「まっ今日がダメでも今度がある。カラオケでも誘ってやれ」

 リモコンで曲をセットする遠藤。

 モニターに『シャドーガーディアンズ』の名前。

 曲名に『レモン太陽と夕暮れの雫』

 遠 藤「今日の事はすっぱり忘れて明日、挽回だ」

 倉 田「っていうか、このバンド誰だよ!」

 遠 藤「黙って聞け」

 歌い出す遠藤。

 浮かない表情の大枝。

 28.大学・全景


 29.同・食堂

 イヤホンをして勉強をしている茜。

 茜を遠くで見ながら座っている大枝。

 大枝の前にパンと牛乳がある。

 大枝の隣に倉田と遠藤。

 背中を押す遠藤。

 びくともしない大枝。

 倉 田「写真、渡すだけだろ」

 大 枝「分かってるよ」

 遠 藤「行ってきなさい」

 牛乳を一気飲みする大枝。

 ゆっくりと茜に近づき茜の前で立ち止まる大枝。

 浮かない表情の大枝。

 大枝を見る茜。

 じっと大枝を顔を見てニコッと笑う茜。

 茜 「大枝君」

 大 枝「あの、その、これ」

 茜に写真を渡そうとする大枝。

 茜 「あっ昨日の。ありがとう」

 大 枝「じゃあ、僕は、これで」

 立ち去ろうとする大枝。

 もどかしそうに見ている倉田と遠藤。

 立ち上がる茜。

 茜 「あの!」

 振り返る大枝。

 茜 「今日、空いてる?」

 大 枝「えっ?」

 茜 「ほら、昨日断っちゃったから」

 大 枝「えっあっはい!」

 茜 「良かった。じゃあ17時に校門の前で」

 大 枝「もちろんです!」

 全力疾走で走って行く大枝。

 ハイタッチをする倉田と遠藤。

 壁から不思議そうに見ている石原。

 30.同・廊下

 ジャンプしながら歩いている大枝。

 大枝の隣に倉田と遠藤。

 倉 田「嬉しいのは分かるけど」

 大 枝「嫌われてなかったんだよ。分かるかなー君たちに」

 遠 藤「めんどくさいな」

 倉 田「待ち合わせ。遅れるなよ」

 大 枝「当たり前だろ。良い報告期待してて」

 倉 田「自分本位になるなよ。ちゃんと相手を見て」

 大 枝「分かってるよ」

 倉 田「本当かよ」

 遠藤に近づく石原。

 石 原「遠藤」

 遠 藤「おう、どうした?」

 石 原「ちょっといいか?」

 遠 藤「ああ」


 31.同・屋上

 遠藤と石原がいる屋上。

 遠 藤「いつも情報ありがとな」

 石 原「ああ」

 遠 藤「にしても呼び出しなんて珍しいな」

 石 原「聞きたい事があって」

 遠 藤「聞きたい事?」

 石 原「大枝利治。あいつは何者なんだ?」

 遠 藤「何者って、ただの冴えない大学生だけど」

 石 原「西園寺は大枝としか話そうとしない。なんでだと思う?」

 遠 藤「さあ? ダメ男が好きとか?」

 石 原「それだけの理由でこの時期に編入してくるもんかね。何も知ら

 ないならいいわ」

 去って行く石原。

 遠 藤「言われてみれば。確かに」

 石 原「それと、一人で歩く時は注意しろと伝えておいてくれ」

 遠 藤「一人?」

 32.同・正門(夕)

 イヤホンをして立っている茜。

 遠くで茜を見ている倉田と遠藤。

 遠 藤「あいつ、何やってるんだよ!」

 倉 田「遅れるなって言ったのに」

 33.同・男子トイレ(夕)

 ぎゅるぎゅるという音。

 腹を抑えながら洋式便座に座っている大枝。

 大 枝「まさか、こんな時に」

 34.同・全景(夕) 

 大枝の声「クソー!!」

 35.同・正門(夕)

 イヤホンをして立っている茜。

 げっそりした顔で腹を抑えながら歩いて来る大枝。

 大 枝「おま、おまたせしました」

 茜 「大丈夫?」

 大 枝「なんとか」

 茜 「無理しなくてもよかったのに」

 大 枝「いえ、無理でも来ます」

 笑う茜。

 茜 「面白い。なら今日はカフェがいいかもね。あんまり歩かせるの

 も悪いし」

 大 枝「すいません」

 茜 「行こう」

 歩き出す大枝と茜。

 36.道からカフェ・前(夕)

 歩いている大枝と茜。

 茜を見る大枝。

 大枝(心の声)「信じられない。僕が茜さんの隣を歩いている。なんだこの感情は、幻覚を見ているのか? 僕は今日、腹痛で死ぬのか?」

 大枝を見る茜。

 茜 「どうしたの?」

 目を逸らす大枝。

 大 枝「いえ、何でも」

 テラスのある店の前に着く茜。

 茜 「このカフェでいいかな?」

 大 枝「はい。どこでも!」

 茜 「どこでも? ふふ。入ろっか」

 カフェに入る大枝と茜。

 37.カフェ・店内(夕)

 店に入る大枝と茜。

 近づいて来る店員。 

 店 員「いらっしゃいませ。二名様でよろしいでしょうか?」

 茜 「はい」

 店 員「空いている席にどうぞ」

 茜 「大枝君はどこがいい?」

 辺りを見渡す大枝。

 大 枝「えーと」

 大枝(心の声)「こういうシチュエーション、どこに座ればいいんだ。テラス。いや、室内? トイレに近い方が今は良い気もするし」

 茜 「はい。時間切れ。大枝君、汗が凄いからテラス側の席にしよ」

 大 枝「はっはい」

 大 枝(心の声)「完璧だ。まさにパーフェクトウーマン」

 茜に付いて行く大枝。

 席に座る二人。

 メニュー表を開いて大枝に渡す茜。

 茜 「大枝君は何にする?」

 大 枝「茜さんは?」

 茜 「私はもう決まってるから」

 大枝(心の声)「ダメだ。隙がない」

 大 枝「全て美味しそうで悩みますね」

 茜 「ここのオススメは搾りたてのオレンジジュース」

 メニュー表を見る大枝。

 大枝(心の声)「どこに書いてあるんだ?」

 茜 「メニューには載ってないよ。裏メニューだから」

 大 枝「なら、それにします」

 茜 「うん。(店員を呼ぶ)すみません」

 大枝(心の声)「茜さん。何者なんだ!」

 店員が歩いて来る。

 茜 「搾りたてオレンジジュースとアールグレイ」

 店 員「かしこまりました」

 去って行く店員。

 大 枝「アールグレイ好きなんですか?」

 茜 「うん。大枝君は紅茶は好き?」

 大 枝「大好きです!」

 大枝(心の声)「全然飲まないけど」

 茜 「良かった。ミルクティーにはダージリン、香りを楽しむならア

 ールグレイ。アールグレイってベルガモットの香りが付いてて、

 落ち着くの」

 大 枝「ベルガモットか。それは気付かなかった」

 茜 「話が合うって嬉しいね」

 大 枝「そうですね! あはははは」

 店員が飲物を持って来る。

 店 員「お待たせしました。搾りたてオレンジジュースとアールグレイ

 です」

 茜、カップにアールグレイを注ぐ。

 大枝(心の声)「紅茶を注いでいる姿も美しい。理想の女性だ」

 にやけた顔つきの大枝。

 茜 「大枝君、大枝君」

 ハッとする大枝。

 茜 「私の顔に何か付いてる?」

 大 枝「いえ、付いてないです」

 笑う茜。

 茜 「大枝君って面白いよね」

 大 枝「ありがとうございます。いやー茜さんみたいな人がうちの大学

 に編入してくるとか僕からしてみれば不思議でたまりませんけ

 ど」   

 悲しそうな顔をする茜。

 茜を見て動揺する大枝。

 大 枝「すいません。変な事言って」

 茜 「ううん。気にしないで」

 一気にオレンジジュースを飲む大枝。

 茜 「そんなに一気に飲んだら」

 大 枝「あの! 茜さん」

 茜 「はい」

 大 枝「僕、かっこ良くなりたいんです」

 茜 「えっ。いきなりどうしたの?」

 大枝(心の声)「好きな人の前で何を言っているんだろう」

 大 枝「清潔感がなくて時間にルーズで、そんな事だから誰にも相手に

 されなくて。それでもいいって割り切ってしまって」

 大枝(心の声)「何ダサイ事言ってるんだよ」

 大 枝「でも、茜さんに出会ってこんな美人がいるんだなって思って」

 茜 「……美人だなんて」

 大 枝「だから僕もカッコ良くなりたいんです!」

 茜 「カッコ良くか」

 大 枝「何でもいいんです」

 大枝を見て考えている表情をする茜。

 茜 「強いて言えば服装がダサくて」

 ダメージを食らったリアクションをする大枝。

 茜 「髪型が変だから切った方が良いし」

 なんとか耐えている表情の大枝。

 茜 「今時、そのメガネがないかな」

 倒れる大枝。

 茜 「大枝君!」

 大 枝「おっしゃる通りです。ありがとうございました」

 瀕死の大枝。

 大枝(心の声)「僕、何をやってるんだろう」

 38.道(夜)

 歩いている大枝と茜。

 茜 「今日は本当にありがとう」

 大 枝「こちらこそありがとうございました」

 大枝の前に立つ茜。

 立ち止まる大枝。

 茜 「ねえ、そろそろ敬語止めない?」

 大 枝「……でも」

 茜 「同い年なんだし。ねっ!」

 大 枝「かしこまりました」

 茜 「それ、敬語なんだけど」

 苦笑いをする大枝。

 大 枝「だよね。ごめん。今日はありがとな」

 目を見開き大枝を見る茜。

 茜を不思議そうに見ている大枝。

 涙を流す茜。

 戸惑う大枝。

 大 枝「あの、僕、何かしましたか?」

 茜 「ううん。久しぶりだったから」

 大 枝「久しぶり?」

 手帳を取り出して書き出す茜。

 不思議そうに見ている大枝。

 茜 「出来た! ゴメンね。もう大丈夫だから」

 大 枝「良かった」

 茜 「私、今日のコト絶対に忘れないから」

 大 枝「うん」

 茜 「写真ありがとう。また明日」

 大 枝「うん」

 去って行く茜をじっと見ている大枝。

 39.アパート・大枝の部屋(夜)

 ベッドに仰向けになっている大枝。

 40.(回想)道(夜) 

 泣いている茜。

 茜 「私、今日のコト絶対に忘れないから」


 41.アパート・大枝の部屋(夜)

 横を向く大枝。

 大 枝「あんな事言われたら普通は嬉しいはずなんだけど」

 胸を抑える大枝。

 大 枝「どうして苦しいって感じるんだろう」

 浮かない表情の大枝。

 42.大学・教室(朝)

 浮かない顔で座っている大枝。

 大枝に近づく遠藤。

 遠 藤「で、昨日どうだったんだよ?」

 大 枝「あー」

 遠 藤「んだよ。その生返事は」

 大 枝「帰り際、胸が苦しくなったんです」

 ニヤニヤする遠藤。

 遠 藤「そうか。お前が。へぇー」

 大 枝「遠藤さん、この引っかかりはなんですか?」

 遠 藤「ボーイズビーアンビシャス!」

 大 枝「どういう意味ですか?」

 遠 藤「お前も一人前になったって事」

 大 枝「はあ」

 遠 藤「倉田は?」

 大 枝「彼女とデートみたいです」

 遠 藤「よろしくやってるな」

 大 枝「あの、今日相談乗ってもらえませんか? このままじゃ気持ち

 悪くて」

 渋い顔をする遠藤。

 遠 藤「申し訳ない。今日は別件が」

 大 枝「……そうですか」

 遠 藤「明日、明日聞くから」

 チャイムの音。

 浮かない表情の大枝。

 大枝を睨みつけて見ている相模原と男性達。


 43.同・食堂

 ボーっと座っている大枝。

 茜がいつも座っている席を見ている。

 大 枝「今日は茜さんもお休みか」

 ため息をつく大枝。

 大 枝「僕、どうしてしまったんだろう」

 大枝に近づく相模原と男性達。

 相模原「大枝君だよね?」

 相模原を見る大枝。

 大 枝「はい」

 相模原「ちょっと話があるんだけど、いいかな?」

 不敵に笑う相模原。

 44.同・正門

 相模原、男性達に付いて行く大枝。 

 紙袋(携帯の)を持ち歩いている茜。  

 大枝を見る茜。

 茜「大枝君?」

 45.同・校舎裏

 相模原、大枝を壁に叩き付けられる。

 顔に痣が出来ている大枝。

 大枝を見て笑っている男性達。

 相模原「最近、調子乗ってませんか?」

 大 枝「乗ってません」

 男性4「とぼけるのかよ。西園寺と話をしてるくせに」

 大 枝「話をしているだけ……」

 相模原「それが調子に乗ってるって言うんだよ!」

 大枝を投げ飛ばす相模原。

 大 枝「僕はただ、普通に」

 大枝を立ち上がらせる男性達。

 相模原「普通ってさ、多数決で多い方の事を言うと思うんだけど」

 大 枝「どういう事ですか?」

 相模原「西園寺と仲良くしているお前は普通じゃない。特別だってこ

 とだよ」   

 大枝の腹を殴る相模原。

 悶絶する大枝。

 相模原「だから、俺らも特別扱いしてやる。感謝するんだな」

 笑う男性達。

 大枝 「……こんなの」

 相模原「はあ?」

 大 枝「こんなの。ただの八つ当たりじゃないか!」

 相模原「そうだけど」

 男性5「今気付いたのかよ」

 大枝の携帯電話を持つ男性6。

 男性6「相模原さん」

 大 枝「それ!」

 相模原に大枝の携帯電話を投げる男性6。

 わざと落とす相模原。

 相模原「おい、携帯は投げるもんじゃないぞ」

 男性6「そうでした」

 笑う相模原と男性達。

 大 枝「返して」

 携帯電話を拾う相模原。

 相模原「返すよ。西園寺のアドレスを手に入れたら」

 携帯電話を操作する相模原。

 大 枝「返せって」

 相模原「返すよ。ちゃんと」

 大 枝「知らないんだ。僕も」

 相模原「何を」

 大 枝「茜さんの番号」

 相模原「往生際が悪いぞ」

 大枝を腹を殴る男性。

 悶絶する大枝。

 大 枝「知らないんだ。本当に」

 相模原「出て来ない」

 男性3「名前変えて登録してるとか?」

 相模原「あり得る。普通じゃないもんなこいつ」

 笑う相模原と男性達。

 悔しそうな顔の大枝。

 茜の声「ちょっと何やってるの?」

 茜が大枝に近づいて来る。

 気まずそうにする相模原。

 相模原「西園寺」

 大枝を離す男性達。

 茜 「大丈夫?」

 大 枝「はい」

 相模原を睨みつける茜。

 相模原「俺の誘いに乗っておけば大枝だってこうはならなかったのに」

 大 枝「……」

 男性4「意地になって西園寺の番号を知らないって言うから」

 悔しそうな顔をする大枝。

 申し訳なさそうな表情の茜。

 茜 「持ってなかったの。携帯」

 相模原「今時そんな嘘に」

 紙袋を見せる茜。

 茜 「今買って来た。大枝君は嘘なんて言ってない」

 大 枝「茜さん」

 舌打ちをして去って行く相模原。

 男性5「相模原さん!」

 相模原に付いて行く男性達。

 その場に倒れる大枝。

 大枝に近づく茜。

 茜 「大枝君」

 大 枝「……カッコ悪いね僕」

 茜 「そんなことない」

 大 枝「カッコ悪いじゃないか! 大切な人を守れない。助けてもら

 う? それがどんなに悔しいか。どんなに情けないか。茜さん

 には分かるわけない」

 茜 「嬉しかった」

 茜を見る大枝。

 茜 「嬉しいって思えた。そう感じただけじゃダメかな?」

 大 枝「……」

 ゆっくり立ち上がる大枝。

 茜 「大枝君?」

 下を向きながらゆっくり歩いて行く大枝。

 大枝(心の声)「完璧だ。完璧すぎて僕には釣り合わない」

 大枝の前に立つ茜。

 茜 「大枝君?」

 大 枝「無理なんだ! 僕なんかじゃ」

 茜を見る大枝。

 大 枝「釣り合わないんだよ」

 笑う茜。

 大 枝「何が可笑しいの?」

 茜 「まだ出会って間もないのに釣り合わないとかわからないじゃな

 い。それに……」

 大枝のメガネを外す茜。

 茜 「かっこ良くなってくれるんでしょ? 今はとか考えたらこの先

 何があっても進めなくなっちゃうよ」

 悔しそうな顔をする大枝。

 紙を渡す茜。

 茜 「私の携帯番号。連絡してね。出来たら今日の夕方までに」

 手を振り去って行く茜。

 茜を見ている大枝。

 大枝(心の声)「ダサイ。何もかも」

 46.アパート・大枝の部屋•中

 大枝の顔に絆創膏を貼っている倉田。

 痛そうにしている大枝。

 冷蔵庫を開ける遠藤。

 冷蔵庫の中に缶ビールが何本かある。

 缶ビールを取り出す遠藤。

 テーブルにある茜からもらった紙を見る遠藤。

 遠 藤「一人に注意。このことか」

 大 枝「どうしたんですか?」

 遠 藤「いーや、何でも」

 倉 田「遠藤さん、自分の携帯に登録しようとしてませんよね?」

 遠 藤「すっするわけないだろ! 大枝がこんな状態になってるのに」

 倉 田「ゴメンな。まさかこんなコトになるなんて」

 大 枝「倉田のせいじゃないよ」

 遠 藤「今日の夕方までにか。連絡するよな?」

 浮かない表情の大枝。

 遠 藤「えっ! まさかしないの? あり得ない」

 大 枝「遠藤さんや、倉田の言った通り僕には遠い人だったんだなって

 自覚しましたから」

 倉 田「……大枝」

 遠 藤「今更だな」

 倉 田「遠藤さん!」

 遠 藤「今更諦めるとか、あり得ないだろ! お前だけなんだぞチャン

 スがあるのは」

 大 枝「チャンス? ですか」

 気まずそうな顔をする遠藤。

 遠藤に近づく倉田。

 倉 田「何か知ってますね?」

 遠 藤「いや」

 倉 田「知ってる事。洗いざらい話してもらえますよね? 遠藤さん」

 とぼけた顔をするが、諦める遠藤。

 冷蔵庫の中は空になっている。

 テーブルに缶ビール。

 遠 藤「俺が知っているのはそれだけ。他は何も」

 大 枝「……僕だけ、話してくれる」

 遠 藤「恋愛をするラストチャンスかもしれない。後は大枝がどうした

 いかだ」

 大 枝「僕がどうしたいのか」

 紙をじっと見る大枝。

 47.道(夕)

 歩いている倉田と遠藤。

 倉 田「連絡しますかね?」

 遠 藤「しないだろうな。俺らの知っている大枝なら」

 倉 田「ですよね」

 遠 藤「ラストチャンスだ」

 遠藤、携帯電話を持ち電話をかけようとする。

 48.アパート・大枝の部屋・中(夕)

 紙と携帯電話を交互に見ている大枝。

 寝転がる大枝。

 大 枝「ダメだ。振られる想像しか出来ない」

 天上を見る大枝。

 大 枝「結局、変わりたくても変われないんだな」

 電話の着信音。

 携帯に目を向ける大枝。

 49.線路(夕)

 電車が走っている。

 50.駅・前(夕)

 走って階段を下りて来る大枝。

 大枝の前に帽子を深く被っている茜の姿。

 茜、大枝を見て笑顔で近づく。

 茜 「ゴメン、私の方から連絡して」

 首を横に振る大枝。

 茜 「遠藤君のお陰だね。携帯ショップの前で出会わなければ、連絡

 出来なかったから」

 51.(フラッシュバック)携帯ショップの前 

 携帯番号を交換している遠藤と茜。

 ニヤついた表情の遠藤。

 52.駅・前(夕)

 ムッとする大枝。

 大 枝「一言もそんなこと」

 大枝の腕を掴む茜。

 茜 「行こ!」

 大枝を連れて走っていく茜。

 53.ライブハウス・全景(夕)


 54.同・中(夕)

 15人ほどのお客さんがいる小さなライブハウス。

 走って中に入って来る大枝と茜。

 茜 「良かった。間に合って」

 大 枝「ライブ会場?」

 ステージを楽しそうに見ている茜。

 マサ、ソースケ、ピーターが出てくる。

 盛り上がる会場内。

 マ サ「皆さん、今日はお忙しい中、お越しいただきありがとうござい

 ます。今日は上田の命日です。シャドーガーディアンズのラス

 トステージを楽しんでください」

 茜を見る大枝。

 涙を流している茜。

 大 枝「茜さんのあの命日って……」

 音楽が鳴り、大枝の声がかき消される。

 55.同・外(夜)

 盛り上がっている声。

 マサの声「今日は本当にありがとうございました!」

 56.道(夜)

 歩いている大枝と茜。

 茜 「凄かったね」

 大 枝「茜さん、バンドとか見に行くんですね」

 茜 「意外だった?」

 大 枝「少し」

 茜 「って言ってもあのバンドが大好きなだけで、他は見に行った事

 ないけど」

 大枝に笑いかける茜。

 茜 「ねえ、まだ時間。ある?」

 大 枝「えっ?」

 驚いた顔をする大枝。

 57.風景の良い場所(夜)

 街が一望出来る場所。

 周りには複数のカップルの姿。

 風景を見ている大枝と茜。

 大 枝「凄く綺麗」

 茜 「私、ここに来ると落ち着くの。すごく好きな場所」

 切ない表情をしている茜。

 大 枝「茜さん」

 茜 「大枝君はどうして私に声を掛けてくれたの?」

 大 枝「えっと、あのー」

 茜 「別に隠さなくてもいいよ。私は嬉しかったの。大枝君が声を掛

 けに来てくれて」

 大 枝「ほっ本当ですか?」

 茜 「こんな所で嘘付く必要がある?」

 大 枝「そう、ですよね」

 茜 「自分に負けてはダメ、もっと強い心を持たないと。実は私も心

 が弱かったの」

 大 枝「茜さんが?」

 茜 「うん。でもシャドーガーディアンズに出会って色んな事を教え

 てもらった。変わりたいって思ったの。だから大枝君、心が大

 切だよ。強い心」

 大枝(心の声)「強い心」

 背伸びする茜。

 茜 「今日は一日楽しかった。付き合ってくれてありがとう。行こっ

 か」

 歩き出す茜。

 立ち止まっている大枝。

 大枝(心の声)「強い心」

 振り返る茜。

 茜 「大枝君?」

 叫ぶ大枝。

 大枝を見るカップル達。

 茜、大枝に近づく。

 茜 「どうしたの?」

 大 枝「初めて見た時から、凄く惹かれていました。実際話をさせても

 らって僕なんかが恋したらいけない人って思うほど、ステキな

 方でした」

 茜 「……大枝君」

 大 枝「そうやってああだこうだ考えて、思ったんです。ラストチャン 

 スでもいいって。だからその……」

 大枝(心の声)「強い心!」

 胸を叩く大枝。

 大 枝「僕とつつつつ付きああってくだあい」

 頭を下げる大枝。

 失敗した顔をする大枝。

 大枝(心の声)「終わった。試合終了」

 フッと笑う茜。

 茜 「大枝君が私と?」

 焦っている大枝。

 大 枝「いや、あの、なんか流れに、いや綺麗な風景に気持ちがバカに

 なっただけで、本当は……」

 茜 「よろしくお願いします」

 大 枝「ですよね。よろしくしますですよね。もう本当、何しているん

 だろう僕って感じ……」

 驚く大枝。

 大 枝「ええええええ!」

 大枝の手を握る茜。

 茜 「だから、よろしくお願いします」

 大 枝「ちょっと待って下さい! 僕ですよ? 僕なんかでいいんです

 か?」

 茜 「何それ? 告白しておいて」

 大 枝「まさかその、まさかじゃないですか?」

 茜 「そう? 嬉しかったよ。ありがとう」

 大枝にニコッと笑う茜。

 58.アパート・大枝の部屋•中(夜)

 毛布を抱えて喜んでいる大枝。

 テーブルに携帯電話がある。

 倉田の声「おい、大枝」

 大 枝「ゴメンな。本当にごめん」

 倉田の声「いや、謝られても、とりあえずその経緯を明日聞かせろ」

 大 枝「あーしーたー?」

 にやけている大枝。

 倉田の声「何だよ」

 大 枝「明日は茜さんとデートなので」

 倉田の声「はいはい。終わったらでいいから」

 大 枝「終わるかな? 終わらないと思うけど」

 倉田の声「うざい! じゃあまた明日な」

 電話が切れる。

 大 枝「僕に彼女か」

 悶える大枝。

 59.橋(朝) 

 T『交際一日目』

 携帯電話を見る大枝。

 『9時50分』の表示。

 大 枝「10分前」

 走っていく大枝。

 茜が立っている。

 大枝を見つけて手を振る茜。

 茜 「大枝君!」

 焦る大枝。

 大 枝「もしかして時間間違えた?」

 茜 「ううん。私がちょっと早く来ちゃっただけ」

 大 枝「良かった」

 茜 「行こっか」

 歩き出す大枝と茜。

 60.美容室•中(朝)

 カットする椅子に座っている大枝。

 雑誌を見ながらソファーに座っている茜。

 大枝の声「今日の予定は?」

 鏡越しに茜に手を振る大枝。

 手を振る茜。

 61.服屋•中(朝)

 服を見ている茜と大枝。

 茜の声「美容室に行って、服を買って、ついでにメガネも変えちゃお

 う」

 62.コンタクト屋•中

 大枝のメガネを外す茜。

 コンタクトを入れる動作をする大枝。

 63.橋(夕)

 歩いてくる大枝と茜。

 大量の買い物袋。

 茜 「今日は楽しかった。ありがとう」

 大 枝「こちらこそありがとう。茜さん」

 不満げな顔をする茜。

 茜 「それ、もう止めない?」

 大 枝「えっと」

 茜 「茜さんっていうの」

 大 枝「でも、なんて呼んでいいか分からないし」

 茜 「……ソラ」

 大 枝「ソラ?」

 茜 「二人だけの時はソラって呼んで欲しい」

 大 枝「分かった」

 茜 「私は大枝君のコト、ハルって呼ぶね。利治のハル」

 大 枝「名前覚えてくれてたんだ」

 茜 「当たり前でしょ? 彼女なんだから」

 嬉しそうな顔をする大枝。

 64.居酒屋•中(夜)

 にやけた顔をしている大枝。

 大 枝「彼女、なんだから」

 大枝を睨んでいる遠藤。

 遠藤を宥めている倉田。

 遠 藤「俺が連絡先を教えてなければこうならなかったんだぞ」

 倉 田「いいじゃないですか。祝福してあげましょうよ」

 遠 藤「しかも、見た目まで変えやがってああ、羨ましい」

 大 枝「ふふふ」 

 イラッとする遠藤。

 遠 藤「でも、何でソラなんだ?」

 大 枝「二人だけの時はソラって言うんです」

 遠 藤「だから何で?」

 大 枝「二人だけの時はソラって呼ぶんです」

 遠 藤「壊れてる。完全に壊れている」

 倉 田「見守ってやりましょうよ」

 諦めた表情の遠藤。

 遠 藤「だな」

 ニヤニヤしている大枝。

 65.アパート・大枝の部屋•全景(朝)

 T『交際二日目』

 66.同・中(朝)

 部屋のゴミを片付けている大枝と茜。

 玄関で唖然としている倉田と遠藤。

 遠 藤「本当にいる」

 遠藤を見て近づいて来る茜。

 茜 「遠藤さん、先日はありがとうございました」

 遠 藤「妄想じゃなかったんだ」

 茜 「妄想?」

 倉 田「いえ、こちらの話です」

 遠藤に近づく大枝。

 大 枝「遠藤さん、倉田、来なくてもいいって言ったのに」

 倉 田「手伝いに来てやったのにその言い方はないだろ」

 遠 藤「ちゃんと変なものは捨てておいたか?」

 部屋に上がる倉田と遠藤。

 大 枝「ちょっと遠藤!」

 茜 「変なものって」

 大 枝「(とぼけながら)何だろう」

 部屋に歩き出す大枝。

 四人で片付けている映像がスローモーションで流れる。

 笑顔の茜を見ている大枝。

 大枝(心の声)「彼女が出来るってこんなにも幸せなんだ」

 大枝を見てニコっと笑う茜。

 照れくさそうにする大枝。

 67.同・外・ゴミ置き場

 大量のゴミが置かれている。

 68.同・中

 片付いている部屋。

 疲れた顔の大枝、倉田、遠藤。

 遠 藤「大分綺麗になったな」

 大 枝「俺の部屋ってこんなに広かったんだ」

 ジュースと紙コップを持って来る茜。

 茜 「皆さんお疲れ様でした」

 テーブルに置く茜。

 茜 「大枝君も」

 大 枝「あっありがとう」

 ニヤける倉田と遠藤。

 倉 田「茜さん、大枝をよろしくお願いします。何にも出来ないけど、 

 心だけは優しいから」

 大 枝「何だよ。心だけはって」

 遠 藤「他に何かあるか?」

 大 枝「……」

 フッと笑う茜。

 茜 「知ってます。あっ皆さんご飯は?」

 遠 藤「まだですけど」

 茜 「ピザ、頼んでおいたんですけど一緒にどうですか?」

 遠 藤「マジっすか! 是非いただき……」

 倉 田「俺らはここで帰るから、二人で食べて下さい」

 遠 藤「いや、折角なんだからさ」

 倉 田「後は楽しんで」

 遠藤を無理矢理連れて行く倉田。

 遠 藤「倉田、何をするんだよ。おい!」

 部屋から出て行く倉田と遠藤。

 ドアの閉まる音。

 大枝(心の声)「ありがとう倉田」

 69.○同・外

 ピザ屋のバイクが走っていく。

 70.同・中

 テーブルにピザが三枚ある。

 座っている大枝と茜。

 茜 「二人じゃ食べきれないね」

 大 枝「そんな事ないよ。お腹空いてたし」

 茜 「ハルは優しいね」

 大 枝「いや、そっソラこそ気が利いて凄いよ」

 茜 「フフ、ありがとう。でも食べ過ぎないでね」

 大 枝「どうして?」

 茜 「夕ご飯、私、作りたいから」

 驚く大枝。

 大 枝「ほっ本当に!」

 茜 「オムライスでもいいかな?」

 大 枝「もちろんだよ」

 茜 「じゃあ、台所も片付けないとね」

 IHコンロの上に空いた缶ビールが散乱している。

 苦笑いする大枝。

 大 枝「確かに」

 茜 「本当にハルって感じ」

 大 枝「ありがとう」

 ピザを食べる大枝。

 大 枝「……気になった事聞いてもいい?」

 茜 「何?」

 大 枝「どうしてうちの大学に来たの?」

 茜 「……ハルに会いに来たの」

 大 枝「またまた冗談がうまいんだから」

 茜 「本当だよ! この大学に来なかったらハルに話しかけてもらえ

 なかったんだから」

 大 枝「……そうだね」

 茜 「ありがとう。ハル」

 大 枝「こちらこそソラ」

 ニコッと笑う大枝と茜。


 71.同・台所(朝)

 T『交際3日目』

 並べられた二つの皿。

 72.同・中(朝)

 眠っている大枝。

 電話の着信音。

 携帯電話を持つ大枝。

 大 枝「もしもし」

 茜の声「おはよう。ハル」

 飛び起きる大枝。

 大 枝「ソラ!」

 茜の笑い声。

 茜の声「いつまで寝てるの? 遅刻しちゃうよ」

 大 枝「すいません」

 茜の声「それでは今日の服装をお伝えします」

 大 枝「服装?」

 茜の声「大学でもカッコいいハルでいてほしいから」

 大 枝「おっお願いします」

 電話をしながらファッションをチャックする映像が流れる。

 73.大学・教室

 大枝が座っている隣に倉田と遠藤の姿。

 ざわついている教室内。

 女子大生1「大枝君、なんか変わったよね」

 女子大生2「なんかかっこ良くなった」

 女子大生3「噂ではあの編入生と付き合ったって」

 女子大生1「あんなにカッコよくなるなら、付き合っておけばよかっ

 た」

 遠 藤「噂になっているな」

 大 枝「からかわないでください」

 倉 田「なっ180度違うだろ?」

 大 枝「全然違う」

 遠藤の携帯が鳴る。

 『石原』の表示。

 遠 藤「ちょっと俺、用事が」

 倉 田「授業、始まりますよ」

 遠 藤「大丈夫。ひっそり戻って来るから」

 走って教室を出て行く遠藤。

 74.同・正門

 歩いている大枝、倉田、遠藤。

 携帯電話を見ている大枝。

 遠 藤「茜ちゃん、カラオケ来れそう?」

 大 枝「大丈夫だって」

 遠 藤「良かった」

 倉 田「何が良かったの?」

 遠 藤「いや。そう! 当たり前だろ。俺だけ彼女がいないんだ淋しい

 じゃないか!」

 倉 田「胡散臭い」

 大 枝「責めるのは可哀想だよ。遠藤さんは一人なんだから」

 遠 藤「大枝、お前はいつから勝ち組になったんだ? 元はと言えば俺

 が!」

 大枝の口を握る遠藤。

 大 枝「やへてくだはい」

 大枝に近づく女子大学生1、女子大学生2、女子大学生3。

 女子大学生1「あの大枝君」

 大 枝「はい?」

 女子大学生2「あの、良かったら私たちと写真撮ってもらえません

 か?」

 大 枝「えっ?」

 女子大学生3「嫌ならいいんだけど」

 遠 藤「あの大枝がモテモテに」

 倉 田「分からないものですね」

 大 枝「はい。いいですよ」

 喜んでいる女子大学生1、2、3。

 遠藤に携帯電話を渡す女子大学生1。

 遠 藤「何で俺が?」

 大枝の隣に行く女子大学生1、2、3。

 ふてくされている遠藤。

 遠 藤「じゃあ撮るよ」

 写真を撮ろうとする遠藤。

 茜の声「ちょっと何してるの!」

 大枝の前に茜の姿。

 大 枝「茜さん」

 大枝に近づく茜。

 茜 「ハルに近づかないで!」

 女子大学生2「何よ」

 女子大学生「別に写真くらいいいじゃない」

 女子大学生1「……行こ」

 歩き出す女子大学生1、2、3。

 驚く大枝、倉田、遠藤。

 75.カラオケ・中

 歌っている遠藤。

 大枝の隣にいる茜。

 茜を見ている倉田。

 歌い終わる遠藤。

 拍手する茜。

 茜 「遠藤さん、上手ですね」

 遠 藤「そうかな?」

 曲が流れる。

 茜 「私だ」

 マイクを渡す遠藤。

 立ち上がる茜。  

 大枝に近づく倉田と遠藤。

 歌う茜。

 倉 田「上手い」

 遠 藤「完璧だろ」

 大 枝「やっぱりすごい」

 倉 田「なあ大枝、さっきの」

 遠 藤「俺も気になったんだけど、お前らそんなに仲良くなったのか?」

 大 枝「そんなにって?」

 倉 田「ハルに近づかないでって」

 大 枝「別に」

 飲物を飲もうとする大枝。

 遠 藤「もうやったのか?」

 飲物を吐き出す大枝。

 大 枝「何言ってるんだよ!」

 茜 「ハル、大丈夫?」

 大 枝「うん」

 茜 「変な事聞かれたんでしょ?」

 大 枝「別に」

 遠 藤「鋭い」

 倉 田「ああ」

 76.同・外(夜)


 77.同・中(夜)

 盛り上がっている遠藤。

 受話器を持っている倉田。

 大枝の隣に茜。

 倉 田「はい。もう出ます」

 受話器を戻す倉田。

 遠 藤「もう終わり?」

 倉 田「はい」

 遠 藤「じゃあ最後にこの曲を」

 曲を入れる遠藤。

 画面に『ハルの茜空』の文字。

 倉 田「だから誰なんですか!」

 遠 藤「良い曲だから黙って聞いとけ!」

 手を繋ごうとゆっくり茜の手に近づけ、手を繋ぐ大枝。

 嬉しそうに茜の顔を見る大枝。

 画面を見て涙を流している茜。

 素の顔に戻る大枝。

 78.同・外(夜)

 カラオケの前にいる大枝、茜、倉田、遠藤。

 心配そうに茜を見ている大枝。

 茜 「今日はありがとうございました」

 遠 藤「いいって。にしても歌うますぎ」

 茜 「ちゃんと聞いてなかったじゃないですか」

 遠 藤「それは倉田のせいで」

 倉 田「遠藤さん。人のせいにしないで下さい」

 遠 藤「大枝がな」

 大 枝「……」

 遠 藤「何見とれてるんだよ」

 大枝の目を隠す遠藤。

 大 枝「ちょっと止めて下さい」

 遠 藤「自分ばかり幸せになりやがって」

 茜 「私のハルにちょっかい出さないで下さい」

 遠 藤「私のハルとか俺も言われてぇ」

 倉 田「遠藤さん、行きますよ」

 遠 藤「ちぇっ分かったよ。大枝、またな」

 大 枝「はい。また明日」

 去って行く倉田と遠藤。

 茜 「私たちも行こ」

 大 枝「聞いてもいい?」

 茜 「どーぞ」

 大 枝「ハルって呼び方、二人だけの時じゃなかったっけ?」

 茜 「ゴメン。ハルのこと大好きだから。勝手に。変えた方がいい?」

 大 枝「ううん。そのままでいいよ」

 茜 「ありがとう」

 大 枝「あと……」

 79.フラッシュバック・同・中(夜)

 画面を見て涙を流している茜。

 80.同・外(夜)

 首を横に振る大枝。

 不思議そうに大枝を見ている茜。

 ポケットから鍵を取り出す大枝。

 大 枝「合鍵作ったから。いつでも家に来て」

 茜 「ハル」

 大枝を抱きしめる茜。

 茜 「大好き」

 茜を抱きしめる大枝。

 81.各場所

 T『交際4日目』

 デートをしている大枝と茜。

 立ち止まり手帳に書いている茜。

 トイレから出てくる大枝。

 イヤホンを付けている茜。

 82.大学・正門(朝)

 T『交際5日目』

 『第一回、カップルワングランプリ』の看板。

 83.同・廊下(朝)

 歩いている大枝と茜。

 せわしない大学生達。

 茜 「今日騒がしいね」

 大 枝「今日?」

 『カップルワングランプリ』のポスターを見る大枝。

 大 枝「今日はあの日か?」

 茜 「あの日?」

 不思議そうな顔をする茜。

 84.同・校舎街(朝)

 ステージがある場所。

 『第一回、カップルワングランプリ』も看板。

 生徒達が集っている。

 歩いて来る大枝と茜。

 大 枝「これ」

 茜 「面白そう。ハル、私たちも出れたりするのかな?」

 大 枝「出たいの?」

 茜 「ハルとなら」

 大 枝「聞いてみよっか」

 嬉しそうにしている茜。

 85.同・受付(朝)

 座っているスタッフ1、2。

 スタッフに近づく大枝と茜。

 大 枝「あの」

 スタッフ1「はい」

 大 枝「前に当日まで予約が大丈夫って聞いたんですけど」

 スタッフ1「先輩、まだ大丈夫ですか?」

 茜を見るスタッフ2。

 スタッフ2「当たり前じゃないか! いや〜ってか、えっ? もしか

 して嘘。あの編入生のマジでってかお前は誰。うちの大

 学に......」

 スタッフ1「大丈夫みたいです」

 茜 「お願いします」

 スタッフ1「ではこちらに記入をお願いします」

 大枝にボールペンと紙を渡すスタッフ1。

 紙に『付き合って何日? 二人の馴れ初め、アピールポイ

 ント』など書かれている。

 紙を見て止まっている大枝。

 大枝(心の声)「どうやって書けばいいんだ!」

 ボールペンを持ち書き始める茜。

 茜 「これでいい?」

 スタッフ1「はい。もうすぐ始まるのでステージ裏にいてください」

 茜 「ハル、行こ」

 大 枝「......うん」

 手を繋ぎ歩き出す大枝と茜。

 86.同・ステージ裏(朝)

 まめ太(32)、ピカント小池(32)がクリップボード

 を見て話をしている。

 緊張しているカップルの男性と太めの女性。

 嫌々そうにしている倉田と嬉しそうな麻奈美。

 歩いてくる大枝と茜。

 カップル女性「ねえ、私可愛いかな?」

 カップル男性「ああ、日本一、いや世界一可愛いよ」

 カップル女性「嬉しい」

 抱きしめあうカップル。

 苦笑いをする大枝と倉田。

 大枝、倉田「あれはない」

 声のする方向を見る大枝と倉田。

 倉 田「大枝! お前らも出るの?」

 大 枝「さっきそうなった」

 倉 田「お前はまだ楽しそうでいいな」

 茜の周りを一周する麻奈美。

 倉 田「おい、止めろ」

 麻奈美「大枝君の彼女って言うからどんな女かと思えば、なかなかの上

 物だわね」

 倉 田「どの顔が言ってるんだよ」

 倉田に顔を近づける麻奈美。

 麻奈美「この顔ですけど」

 倉 田「分かった。分かったから」

 大枝に顔を向ける麻奈美。

 麻奈美「大枝君」

 大 枝「はいぃぃぃ」

 麻奈美「今は敵同士容赦はしないから」

 大枝の前に立つ茜。

 茜 「麻奈美さんですか?」

 麻奈美「何か?」

 茜 「ハルと私は絶対に負けません。お手柔らかに」

 見合っている茜と麻奈美。

 倉 田「あれ、火花がバチバチ言ってるぞ」

 頷く大枝。

 大 枝「間違いない」

 スタッフ2が来る。

 スタッフ2「では始めます。よろしくお願いします」

 ピカントとまめ太がステージに上がっていく。

 緊張している大枝。

 87.同・ステージ(朝)

 大勢の観客。

 ステージに右からカップル男性、女性、倉田、麻奈美、茜、

 大枝の順番で立っている。

 両サイドにまめ太とピカント。

 観客席に遠藤と石原。

 遠 藤「なんで大枝達がいるんだ?」

 ピカント「はい。この出演者の方々で優勝を勝ち取ってもらいましょう」

 大 枝「緊張してきた」

 茜 「大丈夫。ハルなら」

 大 枝「うん」

 まめ太「ちょっと待った!」

 ピカント「まめ太どうしたの?」

 まめ太「このメンバーじゃあ役不足だと思いませんか?」

 イラっとする麻奈美。

 まめ太の胸倉を掴む麻奈美。

 麻奈美「もう一回言ってみろ」

 怖がっているまめ太。

 倉 田「麻奈美、そういう流れ」

 麻奈美「えっ? そういうコト。なら前もって言っておきないよ」

 手を話す麻奈美。

 笑う観客。

 ピカント「気を取り直して、どういうこと?」

 まめ太「レジェントカップルに登場していただきたいと思います。ど

 ーぞ」

 相模原と池添エリナ(20)が出てくる。

 ピカント「三年連続ミスターコン優勝、相模原君と二年連続ミスコン

 優勝池添エリナさんです」

 客の歓声。

 大枝の隣に立つ相模原。

 相模原「この前はすまなかったね」

 大 枝「......」

 相模原「今度は正々堂々、ぶっつぶす」

 茜を見るエリナ。

 エリナ「あの女、調子乗ってる。私だけがこの学校で輝けばいいの」

 相模原「そういうことだから」

 ピカント「さあ栄光を手にするのはどのカップルか。カップルワング

 ランプリの火ぶたが切られました!」

 各カップルがアピールをしている風景。

 ダンスを踊っている相模原とエリナ。

 倉田をステージの真ん中に立たせて、ドロップキックする

 麻奈美。

 マイクの前に立つ茜。

 茜 「好きだよ」

 嬉しそうに倒れる男性陣。

 大枝の方を向く茜。

 茜 「(口パクで)ハル」

 ニコッと笑う茜。

 大枝(心の声)「僕はなんて幸せ者なんだ」

 ×  ×  ×

 優勝トロフィーを持っている麻奈美。

 悔しそうにしている相模原とエリナ。

 楽しそうに笑っている大枝と茜。


 88.アパート・大枝の部屋(朝)

 T『交際6日目』

 電話の着信音。

 目を覚ます大枝。

 茜の声「おはよう」

 大 枝「おはよう」

 茜の声「では、今日のファッションなんだけど……」

 起き上がる大枝。

 服を選んでいる大枝。

 着替え終わっている大枝。

 茜の声「完璧! ちゃんと遅れずに行くんだよ」

 大 枝「分かってるよ」

 電話を切る大枝。

 携帯で茜と写っている写真を見ている大枝。

 似ている服装を着ている写真の数々。

 大 枝「これって」

 89.大学・教室

 倉田が座っている。

 教室に入って来る大枝。

 倉 田「おはよ」

 大 枝「ああ」

 倉田の隣に座る大枝。

 倉 田「何だ? 昨日の俺に同情でもしてくれているのか?」

 大 枝「おめでとう」

 倉 田「ありがと。で、幸せまっただ中の大枝君、どうしたんだい?」

 大 枝「気になる事があって」

 倉 田「気になる事?」

 大 枝「なんか、ソラのコーディネートが同じ感じがするんだ」

 倉 田「それは着回しって言うんだよ。ただでさえ服が少ないんだから

 似るのは仕方ないだろ」

 大 枝「そうかな?」

 倉 田「そんなもんだよ」

 麻奈美の声「友貴!」

 ビクッとする倉田。

 麻奈美がドアの前に立っている。

 倉 田「ヤバ、見つかった」

 麻奈美「優勝の約束忘れてないよね?」

 倉田に近づく麻奈美。

 倉 田「ゴメン。また後で相談に乗るわ」

 走って教室を出て行く倉田。

 麻奈美「待ちなさい!」

 倉田を追いかけていく麻奈美。

 大 枝「大変だな倉田も」

 大枝の隣にいる遠藤。

 遠 藤「二人でラブラ旅行が優勝の条件らしいぜ」   

 遠藤を見て驚く大枝。

 大 枝「いつの間に」

 遠 藤「でも、それ以前から二人で旅行をサプライズプレゼントをする

 予定だったというのに。困ったもんだぜ」

 大 枝「遠藤さん」

 遠 藤「何だい?」

 大 枝「彼女出来たことあるんですか?」

 遠 藤「……うるさい」

 90.同・正門(夕)

 歩いている大枝と茜。

 茜 「じゃあ私バイトがあるから」

 大 枝「うん」

 茜 「終わったら電話するね」

 大 枝「待ってる」

 手を振り去って行く茜。

 辺りを見ながら大枝に近づいて来る倉田。

 大 枝「倉田」

 倉 田「ふうやっと撒けたか」

 大 枝「サプライズプレゼントなら堂々としてればいいのに」

 倉 田「大枝なら分かってくれると思うけど、喜ぶ顔がみたいじゃない

 か」

 大 枝「……すごく分かる」

 倉 田「彼女談義の為にちょっと付き合え、飯奢るから」

 大 枝「行く」

 嬉しそうな大枝。

 91.居酒屋•中(夜)

 賑わっている店内。

 生ビールを持っている大枝と倉田。

 大枝、倉田「乾杯!」

 生ビールを飲む大枝と倉田。

 倉 田「付き合って何日経つんだっけ?」

 大 枝「六日目」

 倉 田「まさか本当に付き合うとはな」

 大 枝「僕も信じられないよ」

 倉 田「楽しいって事は良い事だ」

 大 枝「そうなんだけど」

 倉 田「腑に落ちない事でもあるのか?」

 大 枝「デートの時とか、手帳に何かを書いてたり、自分が少しでも離

 れると音楽を聞いてたり、不思議なんだ」

 倉 田「それが大枝の彼女。そう理解したほうが楽だぞ」

 大 枝「なら、この前のカラオケで遠藤さんの入れた曲を見ながら泣い

 ていたのは?」

 倉 田「俺に聞くなよ!」

 大 枝「そうだよね。ごめん」

 倉 田「不安なのは分かる。でもよーく考えてみろ。大枝に支障が出て

 るのか?」

 大 枝「出てない」

 倉 田「浮気しているように見えるか?」

 大 枝「見えない」

 倉 田「だったら信じてやる事だ。付き合うってのはそういうコトなん

 だよ」

 大 枝「信じるか。考えすぎてたんだ」

 倉 田「初めての彼女なんだから仕方ないけどな」

 麻奈美の声「友貴、私は何番目の彼女なの?」

 倉田、振り返ると麻奈美の姿。

 倉 田「どうしてここに?」

 麻奈美「大枝君と会う時間はあって、私にはないの?」

 焦っている倉田。

 倉 田「ゆっくり三人で話そうじゃないか」

 麻奈美を座らせる倉田。

 麻奈美「三人じゃなくて、私は……」

 走って店を出て行く倉田。

 麻奈美「ちょっと! 友貴!」

 店を出て行く麻奈美。

 大 枝「倉田!」

 大枝の隣に座っている遠藤。

 遠 藤「恋ってのは良い事ばかりじゃないな」

 遠藤を見る大枝。

 大 枝「遠藤さん、何でここにいるんですか?」

 遠 藤「気にするな。青年よ」

 大 枝「あと、お会計お願いします」

 大枝を見る遠藤。

 遠 藤「えっ?」

 92.道(夜)

 歩いている大枝。

 携帯の着信音。

 大 枝「もしもし」

 茜の声「今、バイト終わった」

 大 枝「お疲れ様」

 茜の声「ねえ、今から家に行ってもいい?」

 大 枝「家に?」

 茜の声「ダメかな?」

 大 枝「いいよ」

 茜の声「やった。じゃあ鍵締めて待ってて。合鍵使いたいから」

 大 枝「分かった」

 電話を切る大枝。

 大 枝「信じてあげるんだ」

 決意した表情の大枝。

 93.アパート・大枝の部屋•中(夜)

 そわそわしている大枝。

 鍵が開く音。

 正座で座る大枝。

 部屋に入って来る茜。

 大 枝「やあ」

 茜 「何? そんな他人行儀で」

 大 枝「緊張しちゃって」

 茜 「ハルらしくない。もう何回も来てるんだから」

 大 枝「そうだね。でも大丈夫こんな遅い時間に」

 茜 「親が出張でいないから淋しくて」

 大枝の隣に座り、大枝の肩に頭を乗せる茜。

 緊張する大枝。

 茜 「ご飯、食べた?」

 大 枝「軽く。倉田が誘ってくれて」

 茜 「仲……いいんだね」

 大 枝「倉田と遠藤さん位しか友達いないから」

 茜 「そんなコト言わないで。私がいるでしょ」

 大 枝「そうだね。彼女のソラがいれば十分だね」

 茜 「彼女のままでいいの?」

 大 枝「どういうこと?」

 茜 「私はハルのお嫁さんになりたいんだけど」

 大 枝「おっお嫁さん!」

 茜 「まだ先の話かもしれないけど」

 大 枝「付き合ってる以上は考えないとね」

 茜 「ありがとう。ハル」

 大 枝「うん」

 茜 「……ねえ」

 大 枝「何?」

 茜 「今晩、泊まっていってもいい?」

 大 枝「えっ?」

 茜 「ダメ、かな?」

 大 枝「ベッド一つしかないよ」

 茜 「一緒に寝ればいいじゃない」

 大 枝「えっあっ、ええ? 一緒に?」

 茜 「そうだよ」

 大 枝「こんな僕と?」

 茜 「何言ってるの? 私の彼氏でしょ?」

 大 枝「そうだね。そうだよね」

 ニコッと笑う茜。

 94.同・外(夜)


 95.同・中(夜)

 薄暗い部屋。

 DVDを見ている大枝と茜。

 男性の声「君の瞳、君の心は僕がいる事で何倍、何千倍も輝くんだ」

 女性の声「うん。ずっと側にいる。私の居場所は祐二の胸の中だけ」

 テレビ画面に映っている男女が抱き合う。

 大 枝「ロマンチックだね」

 茜 「この作品大好きなの」

 テレビ画面にクレジットが流れる。

 大 枝「終わった」

 茜をチラッと見る大枝。

 茜 「今、何か考えてるでしょ?」

 大 枝「バレた?」

 茜 「ハルは分かりやすすぎ」

 大 枝「ゴメン」

 茜 「で、何を考えてたの?」

 大 枝「ソラが可愛いって思って」

 茜 「それで?」

 大 枝「抱きしめたいって思った」

 茜 「うん」

 大 枝「こんな気持ち、初めてだよ」

 茜 「ハル、私すっごく幸せだよ」

 じっと見つめあい抱き合う大枝と茜。

 大枝、茜にキスをする。

 茜 「ハル、大好き」

 大 枝「うん、僕も」


 96.同(深夜)

 眠っている大枝。

 テーブルに携帯に繋がれたイヤホンと開かれている手帳が

 ある。

 シャワーの音。

 起きる大枝。

 イヤホンから微かに曲が流れている。

 イヤホンに目を向ける大枝。

 イヤホンを耳に付ける大枝。

 驚いた表情をする大枝。

 大 枝「これ、遠藤さんが歌っていた曲」

 手帳に目を向ける大枝。

 手帳に『2017年8月20日 大枝利治 ○○大学』 

 大枝の写真が貼られている。

 シャワーの音が止まる。

 イヤホンをしている大枝。

 部屋に近づく茜。

 部屋のドアを開ける茜。

 ベッドで横になっている大枝。

 目が開いている大枝。

 イヤホンを付けて手帳を書いている茜。

 97.大学・中庭(朝)

 T『交際7日目』

 浮かない表情の大枝。

 驚いた顔をしている倉田。

 悔しそうな顔をしている遠藤。

 倉 田「マジで?」

 頷く大枝。

 遠 藤「おめっおめでとう」

 倉 田「西園寺さんとか。出世したな」

 大 枝「……でも」

 倉 田「でも?」

 大 枝「見てしまったんだ」

 倉 田「何を?」

 大 枝「手帳の中身」

 遠 藤「そういうのは見ないのが恋人の鉄則だろ」

 倉 田「……で、何が書いてあったんだ?」

 大 枝「僕の名前と大学名」

 遠 藤「彼氏の名前位書くだろ」

 大 枝「そのページ、去年の12月20日だったんだ」

 倉 田「去年ならまだ出会ってないよね?」

 遠 藤「間違いじゃないのか?」

 大 枝「それにイヤホン」

 遠 藤「イヤホン?」

 大 枝「遠藤さんがカラオケで最後に歌ってた曲が流れてた」

 遠 藤「考え過ぎだって。ただ好きなバンドってだけだろ」

 大 枝「そうかな?」

 倉 田「もっと自信を持ってもいいんじゃないか? 男になったわけだ

 し」

 遠 藤「そうだぞ! お前の気持ちは凄く分かる! 大丈夫、俺が保証

 する」

 大 枝「遠藤さん」

 遠 藤「何だ?」

 大 枝「彼女……」

 遠 藤「黙れ」

 98.道

 スマホを見ながら歩いている大枝。

 携帯の画面に茜のコーディネートした写真。

 大 枝「なんか引っかかるんだよな」

 大枝と反対方向から歩いて来る女子高校生1、2。

 大枝を見て驚く女子高校生1。

 女子高校生1「ハルさん!」

 女子高校生を見る大枝。

 女子高校生1「いえ、人違いでした。だってハルさんは。すみません」

 歩いて行く女子高校生1、2。

 大 枝「ちょっと待って!」

 女子高校生1の前に立つ大枝。

 立ち止まる女子高校生1、2。

 大 枝「話、聞かせてくれない?」

 99.ライブハウス・前

 ライブハウスの前に立っている大枝。

 大 枝「ここって」

 100.(回想)道

 女子高校生1、2の前に立っている大枝。

 女子高校生1「この近くのライブハウスで少し人気のあったバンドのボ

 ーカルにそっくりだったんです。それで」

 101.ライブハウス・前

 ライブハウスの前に立っている大枝。

 買い物袋を持ってライブハウスに近づいて来るジャッキー

 前田(47)。

 ジャッキー「うちに何か用?」   

 ジャッキーを見る大枝。

 大 枝「すいません」

 去って行こうとする大枝。

 ジャッキー「君もハルに憧れてたんだね。でももう過去の人だ。追う

 のは止めなさい」

 ライブハウスに入って行くジャッキー。

 (茜との過ごした映像がフラッシュバックしてくる)

 ハッとする大枝。

 大 枝「もしかして」

 電話をする大枝。

 倉田の声「どうした?」

 大 枝「今から会えない?」

 102.公園

 座っている大枝。

 走ってくる倉田。

 倉 田「どうしたんだよ?」

 大 枝「分かったんだ。このファッションの意味」

 倉 田「趣味じゃなくて?」

 大 枝「バンドマン」

 倉 田「バンドマン?」

 大 枝「好きなバンドマンがいたんだ。この前、そのライブも二人で見

 に行ったし」

 倉 田「そいつを見たのか?」

 大 枝「いや、見てない。多分」

 倉 田「バンド名は?」

 大 枝「カラオケの時、遠藤さんが最後に歌っていた曲」

 倉 田「遠藤さんに聞けば分かるか」

 携帯の着信音。

 携帯を見る大枝。

 大 枝「ソラからだ。バイト終わったから今からどっか行かないって」

 倉 田「大枝、この事はまだ伏せておけよ。相手を疑っても良い事はな

 いんだからな」

 大 枝「分かった」

 走って行く大枝。

 倉 田「信じてやれるのは彼氏だけなんだぞ」

 103.倉田のバイト先・店内(夕)

 バイトをしている倉田。

 携帯のバイブレーション。

 隠れて携帯を見る倉田。

 『遠藤さん 元シャドーガーディアンズ、マサ本日ライブ。

 18時半』

 時計を見る倉田。

 『五時半』の表示。

 倉 田「間に合わないか」

 倉田に近づく店長。

 店 長「倉田君」

 倉 田「店長」

 店長「今日暇だから、もし良かったら上がってもいいよ」

 倉 田「いいんですか?」

 店 長「倉田君の事だから友達か彼女の為にそわそわしてるんだろ?

 なら行った方がいい」

 倉 田「店長、ありがとうございます」

 バックヤードに入って行く倉田。

 104.交差点(夕)

 走っている倉田。

 105.ライブハウス・前(夕)

 息を切らしている倉田。

 倉 田「ここだ」

 中に入る倉田。

 106.同・受付(夕)

 壁にたくさんのポスターが貼られている。

 一カ所空いた場所がある。

 受付にジャッキーが座っている。

 受付に来る倉田。

 ジャッキー「一人?」

 倉 田「はい」

 辺りを見渡している倉田。

 不思議そうに倉田を見ているジャッキー。

 ジャッキー「誰を見に来たの?」

 倉 田「元シャドーガーディアンズの」

 ジャッキー「マサか」

 受付の台をドンとする倉田。

 倉 田「そのポスターありますか?」

 ジャッキー「……シャドーガーディアンズのってっことだよな?」

 倉 田「はい」

 後ろからポスターを取り出すジャッキー。

 『シャドーガーディアンズ』と書かれたポスターの真ん中

 に大枝と同じ顔の上田春樹(故25)が写っている。

 倉 田「これって」

 ジャッキー「ハルのファンなのか? そういえば今日、ハルに似た男も

 来てたな」

 倉 田「大枝はこの事を知って」

 ジャッキー「良いバンドだったよ。人を惹き付けるパワフルな演奏をし

 ていたからな。ずっとそこに貼ってあったんだけど、マサ

 が終わったバンドは飾ってもらう資格がねえって」

 音楽が鳴る。

 ジャッキー「話なら後でしてやるから、ハルの残したサウンドを聴いて

 からにしてくれ」

 お金を払い中に入る倉田。

 107.同・中(夕)

 盛り上がっている会場内。

 遠藤を見つけて近づく倉田。

 ステージにはマサ、ベース、ドラムの姿。

 マ サ「今日はサンウォーカーズペイントを見に来てくれてありがとう」

 盛り上がる会場。

 マ サ「それでは、一曲目聞いて下さい。live as one wishes(思い

 通りに生きる)」

 音楽が始まる。

 108.同・外(夜)

 客が出て行く。

 109.同・中(夜)

 誰もいない会場内。

 ビールを一気に飲むジャッキー。

 ジャッキーの近くに倉田と遠藤。

 ジャッキー「ハルの死は誰も悪くない。悪いのはドライバーだ。あんな

 に可愛い彼女を一人残しやがって。本当にバカな奴だぜ」

 倉 田「可愛い彼女ですか?」

 ジャッキー「ああ。誰もが羨む可愛さだ。その彼女に向けた新曲が出来

 たからって大喜びしながらこのライブ会場に向かっている

 途中だった。そのままその曲は披露されずに終わった。ま

 あ形に残っていたから俺がカラオケに配信したんだがな。

 選別代わりとして」

 倉 田「その彼女ってこの子ですか?」

 携帯で茜の写真を見せる倉田。

 ジャッキー「そうそう。ソラちゃん。この子だよ」

 倉 田「ソラ」

 遠 藤「同じ呼び方だ」

 110.映画館・中(夜)

 大枝の隣で楽しそうに映画を見ている茜。

 111.ライブハウス・中(夜)

 酔っぱらっているジャッキー。

 憤慨した表情の倉田と遠藤。

 ジャッキー「本当、バカな奴だぜ」

 ライブ会場を飛び出す倉田と遠藤。


 112.交差点(夜)

 携帯電話を取り出す倉田。

 113.映画館・中(夜)

 大枝の携帯電話が光る。

 茜を見る大枝。

 大枝(心の声)「ソラを信じてあげなきゃ」

 114.交差点(夜)

 苛立っている倉田。

 倉田の隣で携帯電話を触っている遠藤。

 倉 田「クソ! 出ない!」

 遠 藤「これか!」

 倉田に携帯電話を見せる遠藤。

 『9月3日、バイクに乗っていたバンドマンが信号無視を

 した大型トラックと衝突。意識不明の重体。翌々日の5

 日死亡が確定された』の文字。

 倉 田「これ」

 遠 藤「間違いない」

 倉 田「繋がる。全部。そしてこの日は」

 遠 藤「大枝と茜が付き合った日」

 携帯電話で電話をかけようとする倉田。

 倉 田「あの女、大枝を利用しやがって」

 115.映画館・中(夜)

 映画を見ている大枝と茜。

 大枝(心の声)「信じるんだ。ソラを」

 116.道(夜)

 焦っている倉田。

 隣に遠藤。

 倉 田「出ろよ! 大枝!」

 117.映画館・中(夜)

 顔を見合わせてニコッと笑う大枝と茜。

 118.アパート・大枝の部屋・外(夜)

 息を切らしている倉田と遠藤。

 部屋の電気が点いていない。

 倉 田「まだ出かけているんだ」

 遠 藤「こんな時に限って」

 119.映画館・外(夜)

 手を繋いで映画館から出てくる大枝と茜。

 携帯電話を取り出す大枝。

 何十件もの着信。

 大 枝「倉田からだ」

 携帯の電池が切れる。

 茜 「どうしたの?」

 大 枝「倉田から着信があったけど、大したことじゃないと思う」

 茜 「そっか。ハル、好きだよ」

 大 枝「僕もだよ。ソラ」

 120.大学・正門(朝)

 立っている倉田と遠藤。

 歩いてくる大枝。

 倉 田「よお、大枝」

 大 枝「倉田、ゴメン電話に出れなくて。電池が切れちゃって」

 遠 藤「昨日は家に帰ってないみたいだけど」

 大 枝「それが、初めてラブホに行ったんだ。倉田行った事ある? す

 ごいよね。あんなにハイテクなんだね。遠藤さんは行った事な

 いと思うけど」

 楽しそうな大枝。

 倉 田「西園寺茜と別れろ」

 動揺する大枝。

 大 枝「何を言ってるんだよ」

 遠 藤「お前とは付き合ってない」

 大 枝「二人ともどうかしたの? 昨日と言っている事が……」

 倉 田「違って当たり前だろ!」

 大 枝「倉田、どうしたんだよ」

 倉 田「お前は利用されてたんだよ」

 大 枝「利用って何だよ」

 遠 藤「お前の違和感が当たってたんだ」

 大 枝「違和感? そんなものない」

 倉 田「西園寺は大枝と付き合いたいわけじゃない」

 大 枝「……止めてくれよ」

 倉 田「シャドーガーディアンズのハルと付き合っていたいんだ」

 大 枝「止めろって言ってるだろ!」

 遠 藤「俺達が焚き付けたこと、本当に申し訳ないと思ってる。でも真

 実なんだ。茜ちゃんにとって大枝は上田春樹の代わりでしか」

 大 枝「信じるって、信じるって決めたんだ」

 倉 田「大枝」

 大 枝「証拠もないのに、ホラばっかり言うんじゃねえよ!」

 悲しそうな顔をする倉田と遠藤。

 一枚の写真を取り出す遠藤。

 上田と茜が楽しそうに笑っている写真。

 遠 藤「俺の知り合いがお前のコト気になって調べていたら、これが」

 狼狽える大枝。

 大 枝「......そこまでして、別れさせたいんですか?」

 遠 藤「大枝」

 大 枝「幸せを奪って何が楽しいんですか!」

 倉 田「俺はお前の事を思って」

 大 枝「例え、代わりだとして何が悪いんだよ。今の幸せだと思える気

 持ちが嘘だって言うの? 違う。これは本当だ。じゃなかった

 ら何が幸せなんだよ!」

 121.風景の良い場所(朝)

 座ってイヤホンを付けている茜。

 122.大学・正門(朝)

 申し訳なさそうな顔をしている倉田と遠藤。   

 悲しそうな顔の大枝。

 遠 藤「……茜ちゃんと話をさせてくれないか?」

 大 枝「嫌です」

 倉 田「ハルの茜空。あれは西園寺の為に書いたって、お前でも分かる

 よな?」

 大 枝「分かりません」

 遠 藤「どうしてもか?」

 大 枝「ソラは僕が守る」

 遠 藤「そうか」

 携帯電話を取り出す遠藤。

 遠 藤「俺が呼び出す」

 遠藤に飛びかかろうとする大枝。

 大枝を抑える倉田。

 大 枝「止めろよ」

 遠 藤「……」

 大 枝「止めろって言ってるだろ! 遠藤!」

 もがく大枝。

 123.同・大教室

 ふてくされている大枝。

 大枝と距離を取って座っている倉田と遠藤。

 教室に入ってくる茜。

 一息つく茜。

 大 枝「こんな所来ることなかったのに」

 茜 「……そっか」

 倉 田「俺達が何を言いたいか分かってますよね」

 茜 「ええ」

 大 枝「こいつらの話なんて聞くことない」

 茜 「でも、そういう事なの」

 狼狽える大枝。

 茜 「どこまで知ってるの?」

 遠 藤「ハルの茜空までは」

 茜 「大体分かってるんだ」

 大 枝「そんな事実ないって言えばいいじゃないか」

 茜 「本当の事」

 大 枝「嘘だって言えばいいじゃないか」

 茜 「本当なの」

 大 枝「嘘でも嘘だって言えよ!」

 茜 「ゴメン」

 下を向く大枝。

 茜 「私、シャドーガーディアンズの上田春樹と3年間付き合ってた。

 事故の日。ハルの茜空を披露するからライブ会場で待ってて。

 そう言ったまま、私、置いて行かれちゃった」

 遠 藤「茜ちゃん」

 茜 「ハルがいなくなった後、マサからデモテープをもらって」

 遠 藤「だからイヤホンを」

 茜 「でも、ハルはこういってくれたの、俺が死んだとしても、必ず

 ソラの側に現れてやる。なんたって俺はソラのガーディアンだ

 からって」

 倉 田「(怒りを殺しながら)12月20日は?」

 茜 「偶然、同じ顔をしたハルを見つけた日。私にとったら戻って来

 てくれたんだって思って、この大学に」

 遠 藤「利用したのか?」

 茜 「違う。私の中では」

 悔しそうな顔をする大枝。

 倉 田「西園寺、お前はそれでいいかもしれない」

 茜に近づく倉田。

 倉 田「でもな、本気で恋をしようとした大枝の気持ちを弄んだ。俺は 

 お前を絶対に許さない」

 茜 「別に許してもらおうと思ってないから。私にはハルしかいない

 の」

 倉 田「最低な女だな」

 殴ろうとする倉田。

 走って茜の前に立つ大枝。

 大 枝「倉田」

 倉 田「どけよ」

 大 枝「これ以上、ソラを傷つけさせない」

 驚いた顔をする茜。

 倉 田「騙されていたんだぞ!」

 大 枝「僕は、守るって決めたんだ」

 遠 藤「大枝」

 倉 田「俺は大枝を思って」

 大 枝「僕の事を思っているなら、これ以上問いつめるのは止めろよ!」

 倉 田「……分かったよ」

 教室を出て行く茜。

 机をドンとする倉田。

 T『交際8日目』

 124.アパート・大枝の部屋•中(朝)

 目が充血している大枝。

 起き上がり携帯を触る。

 着信がない。

 ため息をつく大枝。

 携帯の着信音。

 驚く大枝。


 125.ライブハウス・外(朝)

 ふてくされている倉田。

 遠藤がいる。

 歩いてくる大枝。

 遠 藤「おお! 来た来た」

 大枝を一瞥する倉田。

 大 枝「遠藤さん、こんな所に呼び出してなんですか?」

 遠 藤「まあまあ入れば分かる」

 不思議そうな顔をする大枝。

 126.同・中(朝)

 ドアを開けて中に入る大枝、倉田、遠藤。

 石原、ジャッキーがいる。

 石 原「やっと来たか」

 大枝を見るジャッキー。

 ジャッキー「本当、良く似ている

 大 枝「遠藤さん、これはどういう事なんですか?」

 遠 藤「茜ちゃんを救いたくないか?」

 大 枝「救う?」

 遠 藤「茜ちゃんはずっと時間が止まったままなんだ。その時間を誰か

 が動かしてやらないといけない。その鍵を持っているのが大枝、

 お前だ」

 大 枝「僕が?」

 遠 藤「守るんだろ?」

 大 枝「……でもどうしたらいいか」

 石 原「歌んだよ」

 大 枝「歌う?」

 石 原「ハルになって」

 大 枝「ハルになる?」

 遠 藤「ライブ会場で聞けなかった。ハルの茜空を歌って、上田春樹へ

 の思いを終わらせてやるんだ」

 大 枝「そんなことしても何も変わらないよ」

 遠 藤「このまま自然消滅でもいいのか?」

 大 枝「……仕方ないと思う」

 遠 藤「昨日の意気込みはどこに行ったんだよ」

 大 枝「昨日、一人で考えたんだ。元々不釣り合いだったんだよ。僕た

 ち。それが自然な形に戻っただけなんだ」

 倉 田「結局、西園寺の事を信じてなかったって事だな」

 倉田を睨みつける大枝。

 倉 田「俺は西園寺が大嫌いだ。でも救ってやりたい。何でだと思う?」

 大 枝「知るかよ」

 倉 田「大枝の彼女だからだよ。それ以外の理由はない」

 大 枝「倉田」

 倉 田「まあその彼氏がチキン野郎なら、別に救わなくてもいいか」

 遠 藤「倉田、もっと言い方があるだろ」

 倉 田「ありませんが」

 石 原「やるのか、やらないのかハッキリしてくれない? こっちも

 色々と準備があるから」

 遠 藤「答えを決められるのはお前だけだ。大枝」

 ステージを見る大枝。

 T『交際9日目』

 127.大学・教務室

 教務室から大きな封筒を持って出てくる茜。

 128.同・正門  

 歩いてくる茜。

 校門の前に倉田の姿。

 倉 田「よお」

 目を合わさないように去って行こうとする茜。

 倉 田「お前のハルが待ってるぞ」

 足を止める茜。

 茜 「ふざけた事言わないで。もういないの」

 倉 田「なら自分の目で確認しろ。ライブハウスで」

 歩いて行く倉田。

 倉田を見る茜。

 129.ライブハウス・中

 演奏が終わる。

 ステージに大枝、マサ、ソースケ、ピーター。

 衣装に着替えている大枝。

 ステージを見ている遠藤、石原、ジャッキー。

 水を飲む大枝。

 大枝に近づくマサ。

 マ サ「大丈夫?」

 大 枝「はい。ありがとうございます」

 遠 藤「かれこれ1日練習してるわけだからな」

 石 原「あいつ見た目より根性あるじゃん」

 ドアを開けて入って来る倉田。

 遠 藤「倉田! 連れて来たのか?」

 倉 田「いや」

 遠 藤「何をやってるんだよ! 使えないな」

 大 枝「大丈夫。来るよ。会いに」

 マイクを持つ大枝。

 大 枝「マサさん、もう一回お願い出来ますか?」

 フッと笑うマサ。

 マ サ「喉がつぶれても知らないからな」

 演奏を始めるマサ。

 130.風景の良い場所

 眺めている茜。

 茜 「私、どうしたらいいの? ハル」

 131.ライブハウス・外(夜)

 辺りを見渡している遠藤。

 132.同・中(夜)

 息を切らしている大枝。

 ステージにマサ、ソースケ、ピーター。

 大枝を見ている倉田、石原、ジャッキー。

 大 枝「もう一回いけますか?」

 マ サ「大枝君。もう無理だ」

 大 枝「まだ出来ます!」

 マ サ「違う。ソラは来ないよ」

 大 枝「来ます。絶対に」

 マ サ「残念だけど、俺らの方が付き合いが長いんだ」

 大 枝「そんなの知らない。信じてあげるって僕は決めたから」

 倉 田「大枝」

 階段を下りて来る音。

 ドアを開けて遠藤が入ってくる。

 遠 藤「来た!」

 目を見開く大枝。

 133.同・外(夜)

 ライブハウスの前で立っている茜。

 立ち去ろうとする茜。

 茜の手を掴む遠藤。

 遠 藤「お客様。貴方が向かう方向はそちらではありません」

 茜 「えっ?」

 茜を連れてライブハウスに入って行く遠藤。

 134.同・中(夜)

 ドアを開け中に入ってくる茜と遠藤。

 ステージの上に大枝、マサ、ソースケ、ピーター。

 倉田、石原、ジャッキーが客席にいる。

 ステージを見ている茜。

 茜 「大枝……君?」

 大きく息を吸う大枝。

 大 枝「久しぶり! シャドーガーディアンズのハルだぜ」

 涙を流しそうになる茜。

 遠 藤「ほら、最前列で」

 茜の背中を押す遠藤。

 最前列に行く茜。

 大 枝「ソラ、大分待たせてしまったね。やっとこの曲を聴かせる事が

 出来る。デモのように上手く歌えるか分からねえけど、精一杯

 歌うから聞いてくれよな」

 頷く茜。

 大 枝「ハルの茜空」

 演奏が始まる。

 枯れた声で歌っている大枝。

 涙を流す茜。

 茜 「……ハル。やっぱり会いたいよ」

      演奏が終わる。

 大 枝「ソラ、俺はずっとお前の側にいるから」

 茜 「ありがとう。ハル」

 泣き崩れる茜。

 淋しそうにステージからいなくなる大枝。

 135.景色の良い場所(夜)

 ステージ衣装で黄昏れている大枝。

 136.ライブハウス・外(夜)

 遠藤と石原の姿。

 石 原「いいものを見せてもらったよ」

 遠 藤「色々ありがとな」

 手を振りながら去って行く石原。

 137.同・中(夜)

 心配そうにしている倉田。

 手紙を持っている倉田。

 ビールを持ち倉田に近づくジャッキー。

 ジャッキー「そんな顔をするな。お前はいいダチだ」

 倉 田「でも、友達を傷つけました」

 ジャッキー「傷を負うから絆が強くなるんだよ。ぶつかり合わない仲

 間なんて、バンドマンにはなれねえよ」

 倉 田「傷を負うから絆が強くなる。そうであってほしいです」

 ビールを受け取り飲む倉田。

 楽屋から出てくるマサ、ソースケ、ピーター。

 マ サ「ジャッキーさん」

 ジャッキー「おう」

 マ サ「俺達帰りますね」

 ジャッキー「今回はありがとな」

 マ サ「いえ、この曲をやって終わりだったんです。シャドーガーディ

 アンズは」 

 倉田を見るマサ。

 マ サ「大枝君に伝言いいかな?」

 倉 田「はい」

 マ サ「ステージに立っていた君は紛れもなくハルだったと」

 ドアを開けて出て行くマサ、ソースケ、ピーター。

 マサに一礼する倉田。

 138.景色の良い場所(夜)

 大枝の姿。

 大 枝「終わったんだ。全て」

 帰ろうとする大枝。

 茜の声「大枝君」

 振り返る大枝。

 息を切らしている茜の姿。

 大 枝「どうしてここに?」

 茜 「ここにいると思って」

 大 枝「ゴメン」

 茜 「何が?」

 大 枝「茜さんのハルを真似して」

 茜 「それって謝る事? 私的にはやっと太陽が見えたって感じなん

 だけど」

 大 枝「それは良かった」

 歩き出す大枝。

 茜 「大枝君、ちゃんと聞いて欲しいの」

 立ち止まる大枝。

 大 枝「……僕は代わりでしかないから」

 茜 「ごめんなさい。本当に」

 大 枝「ううん。僕の方こそ恋をさせてくれてありがとう」

 茜 「感謝は顔を合わせて言うって習わなかった?」

 大 枝「……もう見れないよ」

 茜 「どうして?」

 大 枝「また、恋をしてしまうから」

 涙を流している大枝。

 茜 「そっか。そうだよね」

 悲しそうな顔をする茜。

 茜 「私ね、留学するの」

 大 枝「そうなんだ」

 茜 「うん。だからお別れ」

 大 枝「ちょうど、良かったんだね」

 茜 「ハルに縛られてたから今まで踏み切れなかった。でも倉田君や、 

 遠藤君、大枝君のお陰で決断出来たの」

 大 枝「おめでとう」

 茜 「最後の最後にハルに合わせてくれてありがとう」

 淋しそうに歩いて行く茜。

 手をギュッと握る大枝。

 振り返る大枝。

 大 枝「ソラ!」

 立ち止まる茜。

 大 枝「ハルとして一言。お前に会えて本当に幸せだった。だから、俺 

 の事は想い出にして、前だけ向いていけよ」

 涙を流している茜。

 茜 「大枝君、本当に変わったよ。今度は私が変わる番だね」

 振り返り大枝にキスをする茜。

 驚く大枝。

 茜 「このキスは上田春樹じゃなくて大枝利治にしたんだからね」

 大 枝「うん。幸せをありがとう」

 ニコッと笑い去って行く茜。

 じっと茜の後ろ姿を見ている大枝。

 T『交際10日目』

 139.駅・プラットホーム

 ダサイ格好で立っている大枝。

 大枝の隣に倉田と遠藤。

 遠 藤「その格好をして来なくてもいいだろ」

 大 枝「元に戻っただけだよ」

 倉 田「見た目だけな」

 大 枝「倉田、また喧嘩するか?」

 倉 田「勘弁してくれ」

 大きな荷物を持ってエスカレーターで来る茜。

 茜 「みんな」

 大枝に近づく茜。

 大 枝「最後だから」

 茜 「ありがとう。後これ」

 鍵を大枝に渡す茜。

 茜 「一回しか使わなくてごめんね」

 大 枝「気にしないで」

 電車がホームに入ってくる。

 茜 「じゃあ」

 遠 藤「あっちでも元気にやれよ」

 茜 「倉田君、本当にありがとう」

 倉 田「……俺は大枝の味方なだけだ」

 遠 藤「何照れてるんだよ」

 倉 田「照れてねえよ!」

 茜 「大枝君」

 大 枝「茜さん」

 茜 「たくさん迷惑かけたけど、私に生きる力をくれてありがとう」

 大 枝「うん」

 電車のドアが開く。

 茜 「じゃあ」

 大 枝「うん」

 電車に乗る茜。

 電車が動き出す。 

 電車を見ている大枝。

 遠 藤「良かったのか。最後の言葉がうんで」

 大 枝「いいんだよ。それで」

 鞄から手紙を出す倉田。

 倉 田「これ、茜さんから預かった。一人で読めって」

 手紙を受け取る大枝。

 遠 藤「何が書いてあるんだ?」

 倉 田「ほら、行きますよ」

 遠藤の背中を押して歩く倉田。

 遠 藤「ちょっと位いいじゃねえかよ!」

 倉 田「ダメです」

 ベンチに座る大枝。


 手 紙『大枝利治君、もう一人のハルへ。出会ったからの数日。そして

 付き合っていた10日間私にとって凄くステキな時間でした。ま

 るでハルが本当に生きているような感覚、大枝君と行った場所は

 全てハルとデートした所だったのが、申し訳ないなって今ではそ

 う思います。8月20日。たまたま見たSNSで投稿されていた

 写真に大枝君が写ってて、その近くに行くと大枝君達が大学から

 出て来た時、ハルって叫んでしまいました。それからすぐに編入

 したの。食堂なら絶対に会えるって思って待ってたら、大枝君か

 ら話しかけて来てくれてびっくりしたんだよ。実はその前に人の

 隙間から大枝君を見つけて立ち上がっちゃったけど。あの時はハ

 ルの代わりがいるって思ってました。ソラって言うのは、ハルと

 大枝君と初めて出会った日の空が茜空だったから。偶然にしては

 出来過ぎだよね。笑 最高の10日間をありがとう。今度はちゃ

 んと大枝利治君を好きになれたらいいなと思いました」

 泣いている大枝。

 大 枝「僕も、茜さんに相応しい男になるから」


 主題歌投入


 140.大学・教室(朝)

 お洒落な格好をしている大枝。

 席に座っている倉田、遠藤。

 倉田の近くに行く大枝。

 大 枝「おはよう」

 遠 藤「なんだやけにすっきりした顔をしてるじゃねえか」

 大 枝「そう?」

 倉 田「一皮むけた感じだね」

 大 枝「うん。でもこれからだから」

 遠 藤「俺も恋しようかな」

 大 枝「相手がいればオススメだよ」

 遠 藤「今バカにしただろ!」

 大 枝「してないよ」

 大枝を捕まえようとする遠藤。

 必死で逃げている大枝。

 笑っている倉田。

 ドアに怒った表情の麻奈美の姿。

 麻奈美「とーもーたーか!」

 倉田にゆっくり近づく麻奈美。

 苦笑いする倉田。

 倉 田「やっべ!」

 逃げようとする倉田。

 倉田を抑える大枝と遠藤。

 倉 田「ちょっと何をするんだよ」

 大 枝「彼女は大事にした方がいいよ」

 倉 田「はあ!」

 遠 藤「俺も同意見だ」

 倉 田「クソ! 裏切ったな」

 倉田の前に来る麻奈美。

 麻奈美「もう逃がさないから」

 怯えている倉田。

 楽しそうに笑っている大枝。

 141.クレジット


 142.駅・プラットホーム(夕)

 椅子に座っている大枝(41)。

 大 枝「これが僕の冴えない大学時代の話」

 手紙を閉じる大枝。

 大 枝「もうこんな時間なんですね。話を聞いていただきありがとうご

 ざいました」

 女性の声「ハル! またここにいたの? 帰るよ」

 大 枝「はいはい」   

 後ろ姿の女性の手を握って歩き出す大枝。

 〈了〉


 





 








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ