表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隣に鉄の魔女と呼ばれる先生が住んでいます  作者: 震電みひろ
第一章『鉄の魔女』と『隣のお姉さん』
7/50

第7話 数合わせ合コン(その2)

 俺は友兄に連れられて合コンの店に入った。

 アイリッシュ・パブとか何とか言っていたが、俺には他の西洋風居酒屋との違いが解らない。

 一応、合コン向けに個別スペースになっているテーブルに案内される。

 男側は友兄以外に高田大学の三年生が一人、明央大学の一年生が一人、そして俺だ。

 開始は午後六時からで、女性陣はまだ来ていないようだ。


「今回の女の子はハイレベルだぞ」


 高田大学の赤城さんが言った。


「でも一人は予定の子じゃないんすよね?」


 明央大学の三森さんがそう言う。


「そうだけどな。でも彼女の友達なら期待できるよ、心配するな」


 赤城さんは笑いながらそう答えた。


 ……なんだよ、向こうも一人は数合わせで来たのか?だったら俺が来る必要はなかったじゃないか……


 そんな俺の心を読んだかのように友兄が聞いた。


「あれ?一人予定の子じゃないって誰?」


 赤城さんが答える。


「佐籐さん、って知らないか?一度サークルの飲み会に来た子だよ。さっき友也が従兄弟を呼びに行っている間に、幹事のレナちゃんから連絡があったんだ。佐籐さんが来れないから代わりの子を連れてくるって」


「そっか、まぁ向こうとコッチの数が合えば、それでいいけどな」


 友兄がそう言うと赤城さんが入り口の方を見た。


「お、来たぞ」


 そう言って入り口側に手を振る。

 すると『いかにも女子大生』って雰囲気の女性が、こちらに向かって来た。

 先頭の女性はかなり派手な感じだ。


「お待たせ~。ちょっと遅くなっちゃった」


 そう先頭の女性が言って友兄の前に座った。

 続いて二人目、三人目の女性が赤城さん、三森さんの前に座る。


「あれ?もう一人は?」


 赤城さんが俺の前の空席を指差した。


「いまトイレ行ってる。すぐ来るから」


 ……別に来なくていいんだけど……


 俺はそう思いながら下を向く。


「そうか。じゃあ始めようか。初めての人もいるから、一応自己紹介ね。俺は高田大学政経学部三年の赤城です。よろしく」


「俺は明央大学法学部二年の三森です」


「俺は慶麗大学理工学部三年の稲村友也。それで一番左端に座っているのが俺の従兄弟で同じく慶麗大学理工学部一年の稲村司」


 俺は黙って下を向いたまま頭を下げた。


「じゃあ私たちの方も自己紹介するね。私たちは全員東日本女子大だから。ます私から。柏木レナ、三年生です。よろしく」


「斉藤みなみ、同じく三年生です、よろしく!」


「吉川愛華。あたしは二年生です。みなさんよろしくぅ~」


 すると幹事のレナさんが声を上げた。


「あ、彼女も来た!コッチコッチ、自己紹介するから来て!」


 俺の前に人が立つ気配がした。


「あ、あの、みなさん始めまして。鉄乃真緒と言います。今日はよろしくお願いします」


 ……鉄乃真緒だって?……


 俺は驚いて顔を上げた。

 そこには俺にとっては『美人で可愛くて優しい隣のお姉さん』であり、学校では『鉄の魔女』と呼ばれる彼女がいた。



 鉄乃先生も顔を上げた俺を見て、目と口を丸くした。

 いや、まさか、どうして、なんで、こんな所で先生と会うんだ?

 俺は一瞬、頭がパニックになった。

 鉄乃先生も同様だったのだろう。

 呆然として俺の前に立ちすくんでいる。

 そんな先生にレナさんが声を掛けた。


「真緒さん、そんな立ってないで座って、座って!」


「え、ええ」


 先生は気圧されたように席に座った。

 俺の真正面だ。


「真緒さんはウチの大学の四年生なんです。でも見えないでしょう?」


 友兄がそれに同意する


「うん、二十歳くらいにしか見えないね」


 さらに赤城さんが乗っかった。


「俺なんか最初、女子高生かと思ったよ」


 レナさんが笑いながら言う。


「そうなのよ。真緒さん、いっつも私たちより年下に見られるの。学年は一番上なのにね」


 そう言って先生に同意を求める。


「え?ええ、まぁ」


 先生は辛うじてそう返事をすると、チラッと俺の方を見た。

 とてもバツが悪そうだ。


 確かに今日の先生は、学校の時とは違ってナチュラルメイクだ。

 と言うか、ほとんど化粧はしていないんじゃないか?

 初めて会った時の『美人で清楚で可愛くて優しいお姉さん』モードだ。

 そこで赤城さんが言った。


「俺達の方ももう一度簡単に紹介するね。一番奥側から慶麗大の稲村友也、俺が高田大の赤城、次が明央大の三森、一番左側が友也の従兄弟で慶麗大の一年生で稲村司君」


「えっ?慶麗大の一年?」


 先生は驚いた様子で赤城さんを見た。

 そして俺に視線を移す。

 俺はまたもや下を向いてしまった。


「うん、でも司君とは、俺も今日が初対面なんだけどね」


「そう……なんですか……」


 鉄乃先生は俯き加減でそう答えた。


「それじゃあオーダー取るね。まずはみんな、ビールでいい?」


 赤城さんがそう言う。


「あ、俺はジンジャーエールで」


 すかさずそう言った。

 先生の前で飲酒なんてあり得ない。


「あ、司君は未成年か?あとは全員オッケーだね?」


 赤城さんがそう言ってオーダーをする。

 ビールとジンジャーエールはすぐに来た。

 みんなで乾杯する。

 合コンはけっこう盛り上がっていた。

 俺と鉄乃先生以外は……


 俺達二人だけが、見えないバリアで覆われえたがごとく、話に入れない。

 やりずらい、本ッ当にやりずらい。

 学校の先生を前にして『大学生です』なんてバレバレのウソをつくなんて……。

 もっとも先生も方も、相当にやりにくいだろう。

 生徒の前で『女子大生です』って言っているんだから。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ