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隣に鉄の魔女と呼ばれる先生が住んでいます  作者: 震電みひろ
第一章『鉄の魔女』と『隣のお姉さん』
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第41話 先生と一緒に海に行く!(その5)

 先生と一緒に着火剤と飲み物を買って、元いた場所に戻る。


「おいおい、二人して消えちまうなんて。もうそんな関係になったのか?」


「そう言えばこの前の合コンでも、司君は真緒さんを持ち帰りしてたもんな」


 赤城さんと三森さんがさっそく囃し立てた。


「いや、違いますよ。真緒さんが変な連中に絡まれていたんです。それで一時退避するために買い物に行ってたんです」


 俺がそう弁解すると、先生も続いた。


「そうなんです。私が三人組の男性に絡まれていたら司君が助けに入ってくれて。それでバーベキューの着火剤も無かったから、ついでに買いに行ったんです」


 だがその横で、吉川愛華さんが口を尖らせる。


「なによ、アタシの事は放っておいて!アタシはナンパされちゃってもいいの?それから真緒さん、あんまり司君を独占しないように!」


 そんな彼女に三森さんが近寄った。


「まあまあ、愛華ちゃん。俺がいるから。俺と遊ぼうよ」


 友兄が苦笑する。


「とりあえず軽く腹ごなしにしよう。四時くらいにはバーベキューを始めるから、今は軽食でいいだろう」


 そう言って行きしなにコンビニで買ってきたオニギリやサンドイッチを袋から出す。

 食べ終わって軽くみんなでおしゃべりをする。

 この頃には、さすがに俺も周囲の人とけっこう打ち解けてきた。


 赤城さんが「スイカ割りをやろう」と言って、大きなスイカを持って来た。

 途中の無人販売所で買ったそうだ。

 棒を持って目隠しをして二十回回ってから、スイカに向かって歩く。

 みんなけっこう目が回ってしまうのか、「正面まっすぐ!」と言われても中々まっすく歩けない。

 かく言う俺も全然外れた所を打ちつけていたが。

 そんな中、意外な事に先生はほとんど目を回さず、また最初から方向もビシッと合っていて、一撃でスイカに命中させていた。

 さすが『鉄の魔女』の異名は伊達じゃない。

 みんなでスイカを食べ終わると、再び海に入る。


「先……真緒さんも今度は一緒に泳ぎましょうよ」


 俺がそう誘うと、先生はやはりまだ躊躇っているようだ。


「さっきも言ったけど、私は泳ぎは得意じゃないから」


「大丈夫、そう思ってさっき海の家で浮き輪を借りて来ました」


 俺は背後に置いておいた浮き輪を取り出した。

 安物だがとりあえず十分だろう。


「え~、この歳で浮き輪って恥ずかしくないかな?」


「平気ですよ。だってみんな浮き輪で遊んでますよ」


 これは本当だ。

 浮き輪に腰を入れるようにして、プカプカ浮かんでいる女性も多い。

 しばらく考えていた先生だったが


「そうだね、せっかく海まで来たんだから、一回くらいは泳がないとね」


 と言って立ち上がると、それまで着ていたパーカータイプのラッシュガードを脱いだ。

 その下から現れる見事な曲線美に、俺は目を奪われる。

 先生は赤いリボンで縁取られた白いビキニを着ていた。

 抜けるように白い肌。

 その大きく突き出たバスト、細く平たく締まったウエスト、優雅な曲線を描くヒップから太股のライン。

 本当に完璧なスタイルだ。


 先生が上着を脱いだ瞬間、世界が変わったような気がした。

 周囲の全く関係ない人の視線も、先生に注がれるのが解る。


「ちょっと、そんなにジロジロ見ないでよ。恥ずかしいじゃない」


 先生は前を両手で隠すようにして、顔を赤らめながら言った。


「す、すみません。じゃあ早く海に入りましょう!」


 これ以上他の男の視線に、先生の身体を晒したくない。

 俺は先生と一緒に、荒い波が打ち寄せる海に走りこんだ。


「ひゃあ」


 先生が悲鳴を上げる。

 背丈を越える波をまともに被ったのだ。


「ああっ、足が取られる!」


「大丈夫です。身体を波に乗せる感じで行けば。波が高いのは最初だけですから」


 この海岸は波打ち際だけが波が高い。

 二十メートルも沖に出れば、うねりは高いが泳ぎやすくなる。


「で、でも、浮き輪ごとひっくり帰りそう!ひゃあっ!」


「俺が掴んでます。このまま波を乗り越えましょう!」


 俺は先生の腰に手を回し、ガッシリと掴むと波一つ一つをジャンプするように越えて行った。

 いつの間にか先生も、俺がジャンプするのとタイミングを合わせてジャンプする。

 やがて足がつかない所まで来ると、白く砕ける波ではなく、大きなうねりのような波となって泳ぎやすくなる。


「もうここまで来れば大丈夫ですよ!」


「アハッ、私も最後の方はなんだか楽しかった!」


 先生が少女のような笑顔を俺に向ける。

 俺は心臓がドキッとした。


「司君は大丈夫?ずっと立ち泳ぎで疲れない?」


「俺は大丈夫です。小学生の時にスイミングスクールに通っていたんで、そこそこ泳ぎは得意ですから」


「でも疲れたら遠慮なく行ってね。浮き輪は二人くらい掴っていても全然大丈夫だから」


「ありがとうございます、でも本当に大丈夫……」


 そう言った矢先、大きな波が来て俺の頭が沈んだ。


「プハッツ!」


 俺は顔を水面に出すと、口に入った海水を噴き出した。


「ホラッ、海で過信は禁物だよ。やっぱり浮き輪に掴ってなさい」


「すみません」


 俺は先生の近くに寄ると両手で浮き輪に掴った。

 こうすると予想外に先生の顔が近い事に気付く。


「な~に?」


「いや、改めて先生って可愛い感じだなって。こうやってノーメイクの顔だけ見ると、俺とタメくらいにしか見えないです」


「それって私の顔が幼いってバカにしてる?」


「そんな、馬鹿になんかしてないですよ。先生は若いって言いたいんです」


「実際、私はまだ若いんだけど?」


「すみません、そうですね」


「でも司君に『若い』って言われるのは、複雑な気持ちだけどね」


 先生はそう言って笑顔を見せた。


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