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隣に鉄の魔女と呼ばれる先生が住んでいます  作者: 震電みひろ
第一章『鉄の魔女』と『隣のお姉さん』
17/50

第17話 えっ、俺の家でテスト勉強?(中編)

 昼食の時、今度は一番仲のいい西武臣にしたけおみことタケが同じ事を言い出して来た。


「司、もうすぐ定期テストだよな。一緒に勉強しないか?」


 その理由は香澄と同じで『俺がこの学校での初めてのテスト』であるため、心配してくれての事だった。


「ああ、ありがとう」


「じゃあさっそく今日、司の家に行ってもいいか?」


「えっ、今日?俺の家?」


 思わず聞き返してしまった。

 今日は香澄が俺の家に来る約束になっているのだが。


「なんだ、今日は都合が悪いのか?」


「いや、そういう訳じゃないんだが」


「じゃあ何だ?」


「いや、今日は別のヤツと勉強する約束になっていてさ」


 何となく『香澄と一緒に』とは言い出しにくかったが、適当なウソもつきたくない。

 だがタケはすぐに察知した。


「それってもしかして、香澄ちゃんか?」


「な、なんでそう思うんだよ」


「オマエが俺以外のヤツと一緒に勉強するなんて、香澄ちゃんぐらいしか思い浮かばん!」


 まぁその通りなんだけどな。


「で、香澄ちゃんとはどこで勉強するつもりだったんだよ」


「やっぱり俺の家だけど」


「二人っきりでか?」


 タケは身を乗り出してきた。


「それは解らないけど……今の所はそうなるかもしれないな」


 『香澄が友達を連れてくる可能性もある』を言うのを言外に含ませたのだが。


「チックショウォォォ!そんな女の子と、しかも学校のアイドル的存在と、一人暮らしの部屋に二人きりだと!もうヤル気満々じゃねぇかよ!」


「なんだよ『ヤル気』って!俺と香澄は昔からの知り合いで、そんな気はお互いにないよ!」


 だがタケは俺の言葉は聞いていなかった。


「高校生がそんな不健全な関係になるなど、絶対に許さん!たとえ学校が許しても、この俺が許さん!ダメだ。絶対にぃぃぃダメだ!」


 タケは一人でいきどおりまくっている。


「司が獣のならないように、そしてみんなのアイドル香澄ちゃんの貞操を守るために、監視役としてこの俺が同行する!拒否は認めん!」


「別に拒否する気はないよ。解った、授業が終わったら一緒に来いよ」


 俺は諦めてそう言った。

 だが心の中では「部屋に来るのが二人になれば、先生の事がバレる危険も二倍になるんじゃないか?」という心配が渦巻いていた。



 授業が終わるとすぐにタケが「よし、司の家に行くぞ!」と元気良く言い出した。

 なんか、やけにウキウキしているなぁ。


 玄関の所に行くと、すでに香澄は待っていた。


「お疲れ!」


 香澄はそう声を掛けてきながらも、不審そうに俺達を見た。


「お待たせ」


 そこでタケがすかさず乗り込んできた。


「香澄ちゃん、こんにちは!俺、司の隣の席の西武臣にしたけおみ。みんなタケって呼んでるから」


「はぁ」


 香澄は不審そうな様子を隠さずに相槌を打つ、


「今日は俺も一緒に勉強する事になったから、ヨロシクね!」


「エッ?」


 驚いた様子の香澄は「ちょっと」と言って俺の袖を引っ張った。


「なに?どういうこと?」


 そう小声で聞いてくる。


「いや、昼休みにタケも香澄と同じ事を言ってくれてさ。それで『今日は香澄と一緒に勉強する約束になっている』って話たら、『俺も一緒に行く』って言い出して」


「なんでそんな事、勝手に決めてるのよ!」


 香澄は明らかに不満そうだ。


「仕方が無いだろ。二人とも『俺が初めて試験だから』って心配してくれているのに。香澄とは一緒に勉強するのに、タケとはやらないっておかしいだろ」


「それはそうだけど……でも別の日にしたらいいじゃない」


「タケが『どうしても一緒に行く』って聞かなかったんだよ。仕方ないだろう」


「な~に、二人でコソコソ話してるんだよ!俺も入れてよ!」


 そう間近で声がした。

 見るといつの間にか、すぐ後ろにタケがいる。


「いや、別にコソコソじゃない。ただタケが一緒に来る事を香澄には話してなかったから、説明をしていただけだ」


「よし、これで話はクリアになった訳だな!それじゃあ三人で仲良く、司ん家に行こうぜ!」


 タケは元気よくそう言った。

 その隣で香澄は相変わらず、不満そうな顔をしていた。



 二人は俺の部屋に入ると、さっそく室内をチェックし始めた。


「いい部屋じゃない。それと意外にキレイにしてるんだね」


 そう香澄が感心したように言う。


「そうだな。飾った感じはないけど、シンプルに整頓されているな」


 タケもそう感想を述べる。


「普段からある程度片付けておけば、掃除も面倒じゃないしな。おい、隣の部屋は開けるなよ。俺の寝る部屋なんだから」


 俺は隣の部屋の襖を開こうとしたタケに、釘を刺した。


「見られちゃマズイものがあるのか?」


 タケが俺の方を見てニヤニヤ笑う。


「バカか。特別な物は何もねぇよ。だけど寝ている部屋を見られるのは誰だって嫌だろ」


 タケはニヤニヤ笑いを消さずに、寝室の前から離れた。

 その間も香澄は部屋中に目を走らせている。

 なんだか犯罪捜査でもされているみたいだ。


「二人とも、俺にテストの傾向を教えるために来てくれたんだろ?勉強に取り掛かろうぜ」


 三人でリビングのローテーブルの上に、教科書と参考書を広げる。


 二人が言っていた『試験の傾向』と言うのは、一時間もしない内にわかった。

 数学・物理・化学の三科目は、主に副教材の参考書から出題されると言う事だった。

 英語は試験範囲の教科書を完全に訳し、配布されたプリントを全て覚えておくこと。

 世界史と政経も教科書に出てくる範囲の用語集を覚えておけばOKだそうだ。

 とりあえず数学からとりかかる。


「へぇ~、司ってけっこう勉強できるんだな」


 横から俺のノートを覗いていたタケがそう言った。


「そうかな?俺は編入試験のためにけっこう勉強したからな。その名残なだけだろうけどな」


「司は昔から、遊んでいても要領よく勉強していたもんね。テストの点はいつも良かった」


 そう香澄が言い添える。

 それを聞いたタケが香澄に聞いた。


「香澄ちゃんは司と、いつからの付き合いなの?」


「小学校三年くらいかな。最初のクラス換えの後から」


「司の第一印象ってどんな感じだった?」


「最初は『こいつムカつく!』って思ったね。アタシ達のクラスはその頃、男子と女子の仲が悪くてさ。男子の中でヤンチャな子が、アタシのグループの女子にイジワルしたの。それでアタシが文句言ったら、司と言い合いになってさ」


 俺は驚いて顔を上げた。


「そんな事、あったっけ?」


「そうだよ。別に司がイジワルした男子に入っていたんじゃなかったけどさ。でもその男子とよく一緒に遊んでいたから、最後はアタシと司が言い合いみたいになったんだよ」


 う~ん、記憶がない。


「俺は遠足で香澄とバスが隣になったじゃん。それがキッカケで少し話すようになって、そのあと二学期で生き物係に二人共なってから、色々話すようになったって覚えているよ」


「仲良くなったのは、確かにその辺からだね」


 タケが羨ましそうに言う。


「けっこう長い付き合いなんだね」


「長い、って訳じゃないよ。香澄は中学からカイザール学園に行ったからね。俺は地元の区立中学だし」


「四年ぶりに再会したんだよね」


 そんな香澄にタケが言い寄る。


「じゃあさ、これからは俺とも仲良くしてよ!司と三人で一緒に遊ぼうぜ」


「え、え?まぁ、いいけど……」


 香澄はチラッとだけ俺を見た。

 なんだ?

 そこで俺を見られても、何も言う事なんかないぞ。


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