No.7
No7
次の日の朝、シンは固い床の上で目が覚めた。
「身体中がいてぇ。」
いくら貧乏だったからといって、床の上で寝るような生活ではなかった。衣食住
は整っていた。
最下層では今のところ衣も住も整っていない。
この分だと食の方にも期待できなそうだ。
「シンさん!おはようございます!」
ティアは元気そうだ。
救いたい命を救えたのだから当然だろう。
「朝御飯を用意していますが、食べますか?」
期待していないが腹は減っている。
せめて食べられるものであれば良いのだが...
結果から言うとシンが食べられるものではなかった。
「うぇぇ!こんなもん食ってんのかよ。」
出されたのは鶏肉だった。
丸焼きの、しかも羽や頭までついている。
文字通りの丸焼き。
出されたものを食べもしないで拒否するわけにはいかないと謎の責任感が働いた結果、口にいれて3秒で床に吐き出すという行為に繋がった。
「気持ち悪い。こんなもん食ってるから病気になるんじゃねえの?」
ティアはシュンとしている。
シンは少々気まずくなって、床に吐いた鳥の残骸を拾おうとした。
「ん?鶏肉がねえぞ?」
ここにはネズミも出るのだろうか?
だとしたら衛生的に最悪だ。
まぁこんな瓦礫の山だ。いてもおかしくはない。
ネズミが出るか確認するために、もう一度床に鶏肉を落とした。ちなみに一番食べたくない頭の部分だ。
すると朝日に照らされた自分の影にスゥーっと落ちていった。
「え!?」
シンは自分の目を疑う。
今度は鶏肉全てを自分の影に入れてみる。
先程と同じ結果になった。
「ティア!ちょっといいか?」
シュンとなったままのティアを呼ぶ。
「なんでしょう?」
「なんか影にものが入るんだけど?」
「はい?」
こいつはなにを言っているんだろう?と顔がそう言っている。だが事実をありのままいっただけだ。
シンはそこら辺にある小さな瓦礫を影のなかに入れてみる。
「え!?なかに入っていった?」
「ティアも知らないのか?俺を呼んだのに?」
困惑した顔でティアは答える。
「私にもなにがなんだか。この本をくれた女性ならなにか知っているかも知れないのですが...」
「え?この本ってティアが持ってたものじゃねぇの?」
そういえば昨日そんな感じのことをいっていた気もする。
シンは本を見てみる。
12ページある。文字が書いてあるが全く読めない。
「ティア読めるか?」
「申し訳ありません。私には魔術の知識がなくてさっぱり。」
「魔術の知識があれば読めるのか?」
「そのはずですが...習ったこともないので自信はありません。」
ティアが申し訳なさそうに言った。
「でしたら魔術師の女性に会いに行きますか?私もお礼を言いに行こうと思っていましたし。」
ティアの提案にシンは乗ることにした。




