No.19
No19 ガールズトークと消えない過去
話し合いの後、ティア・クラウドは料理をしていた。
ムギメを栽培しているときに、シンから教わったパスタというものを作っている。
ティアはシンとの会話を思い出す......
「このムギメは食べられないムギメです。」
「なぜだ?」
「普通のムギメよりも一回り大きくて、パンにするとガリガリになっちゃうんです。」
「デュラム麦だな。これも食えるぞ?デュラム麦を粉にしてみてくれ。教えるから一旦家に戻ろう。」
デュラム麦?
また知らない言葉が出てきた。
シンさんの世界の言葉かしら?
「使うものは、イワトリの卵と塩、水、デュラムだ。
パンの時と同じようにこねる。薄く伸ばして細かく切って、ゆでればパスタの麺ができる。後は、最近見つけたトマト...ここではトートだな...とチョッキンを炒めてイワトリの油と塩で味を整たらパスタにいれて完成だ。」
一連の会話を思い出しながら作ってみる。
上手くできそうだ。
シンさんはよくチョッキンをザリガニといったり、トートをトマトと言ったりする。
違う世界だから違う名前なのかな?
でも、教えてもらう料理はすごくおいしい。
シンさんのおかげで料理をするのが楽しくなった。
「楽しみね。パスタとか言うやつ。」
マリアンヌさんが横で見ながら話しかけてくる。
シンさんがくるまで最下層では美味しいものなんてなかなか食べることが出来なかった。
食に飢えていた風の国の皆は、今ではご飯の時間をとても楽しみにしてくれている。
イワトリの丸焼きを出していた頃とは大違いだ。
自然とティアも料理に力が入る。
戦闘や家の修理等は正直自信がない。
それでもみんなの役にたつことはできると料理を待っている皆を見て感じていた。
「マリアンヌさんもちょっとは手伝ってくださいよー。」
手伝ってくれたらもっと品数が増えるのに......
しかし横のマリアンヌさんに手伝う気はないみたいだった。
「私の仕事は本を作ってティアちゃんを助けることよ?つまり...もう仕事は終わっているわ。」
おかしいところなんてひとつもないわ。
みたいな顔で言われてしまった。
「はーい、そうですねー。」
最近マリアンヌさんがよく話すようになったなぁと思う。
「今日は一緒にお風呂に入らない?」
お風呂まで誘ってくれるようになった。
「もちろんですよ!」
夕食後にマリアンヌさんとお風呂へ向かう。
マリアンヌさんは年の離れたお姉さんのような感じだ。
二人で浴槽に浸かるとマリアンヌさんが話しかけてくる。
「ティアはいつも楽しそうねぇ。」
湯加減がちょうど良いのかとてもリラックスした声だ。
「楽しいです!最近は食べ物も住むところも良くなって皆が元気になっていく姿を見ていると幸せな気持ちになります!」
「ユゼが元気になったからじゃなくて?」
ニヤニヤしながらマリアンヌさんがこっちを見ている。
いつもからかわれるわけにはいかないわ。
冷静に答えるのよ......
ティアが自分に言い聞かせているところで追撃が入る。
「顔赤くしちゃってぇ。」
「お風呂に入ってるからです!」
全然冷静になれてなかった。
「フフフ まだまだ子供ねぇ。」
ティアの完敗だった。
「色々と成長中なんです!」
ティアはマリアンヌの胸と自分の胸を見比べる。
完敗だった。
「きっと男の人は、マリアンヌさんみたいに大きな胸の人が好きなんでしょうね!」
ティアは口を尖らせながら言った。
言葉も体も勝てないとわかったティアは拗ねてみた。
言われたマリアンヌは、一瞬怯えたような表情になりボーッとし出した。
「知らないわ...私は男じゃないもの...」
マリアンヌ・イズクはふと出てきた辛い過去の思い出に蓋をした。