No.17
No17 地下室隊長
「いよいよ本題だな。」
シンは修理した家に、ユゼ、ティア、ムーン、マリアンヌ達を集めていた。
4軒の家は、男女で2つずつ分けており今いる家は男の方の家だ。
本当は女の家に行きたかったが、ティアとマリアンヌから拒否された。
「ユゼの親父を助けにいこう。そのために、王都のどこにユゼの親父がいるか、どうやったらそこへ行けるかだが。ユゼ、どうなんだ?」
「........」
シンがユゼに問いかけてみても黙っている。
「待て待て......知らないのか?」
嫌な予感ほど的中するものだ。
ユゼは、申し訳なさそうに言う。
「知らない......です。すいません!」
謝られてもなぁ。マジかぁ。
ホントにこいつは頭悪いなぁ。
「どこにいるかもわからない人を助けようとしていたのか?それとも、知らなくても助け出せる場所なのか?」
思わず、強く言ってしまった。
しかし、シンは元々短気である。
少しイラっとしているとマリアンヌが静かに話始める。
「王都に入るには腕輪がいるの。その腕輪の種類によって入れる場所が制限されているし、しかも実験されてるというなら城の内部でしょうね。金の腕輪じゃないと城まで入れないわ。そもそも、自国を滅ぼした国になんの武器もなしで挑むのかしら?」
マリアンヌから言われて冷静になったシンは答える。
「武器はムーンに頼んでいる。」
頼んでいるが、まだ護身用レベルだ。
つまり、なるべく戦闘は避けてさっと助けたかったんだが......無理そうだ。
「まずは偵察しないと作戦もたてられねぇな。」
「それにあまり時間もないわ。」
マリアンヌの声に皆注目する。
「あなた達、見張りの兵士が12人も殺されてなんの調査もしないと思っているの?」
全然気にしてなかった......
とシンは回りを見ると他の3人も同じような顔をしていた。
シンはここに来てようやく気付く。
もしも親父さんを助けたら、最下層まで王国の兵士が来るんじゃないのか?
だとしたら今のままだとやべぇな......
「よし!地下を作ろう!」
「ちか?」
マリアンヌが聞いてくる。
もしかして、この世界の人は土の下に部屋を作る発想がないのか?
なら好都合なんだが。
シンは一応マリアンヌに地下について大まかに説明する。
「よくそんなこと思い付くわね。」
マリアンヌの反応を見る限り、よくある感じでは無さそうだ。
地下を作りつつ、王都の情報を集める。
また忙しくなりそうだなぁ。
シンは少しげんなりした顔でこの先のことを考えていた。
「ムーンよ、頼んでいたものは出来ているか?」
「一応できているけど......」
「見せてくれ。」
ムーンから見せてもらったのは、クナイのようなものだった。
鉄でできていて、中指くらいの大きさだ。
「思った通りのものだ!ありがとう!」
「こんなん何に使うの?」
ムーンは疑問に思いながら作ってくれたようだ。
「ユゼに使ってもらうんだよ。石の変わりにな。」
「あ!そうゆうことか!」
ムーンに作ってもらった物は、最初はトイレの穴堀に使うつもりで頼んでいた。
穴を掘るときに岩なんて出てきたらスコップでは無理だ。
家の下に地下室を作るなんて尚更だ。
家が建っている地面が柔らかいなんて話はないだろう。
「ユゼ!これを持っておいてくれ!」
ティアとイチャイチャ話しているユゼにムーンが作ってくれた物を渡す。
「なんですかこれ?」
「地下室を作るときに、穴を掘るだろ?スコップで掘れないときにこいつをユゼの能力で発射してほしい。狩りのときの石の要領だ。」
「わかりました!」
「地下室は家の住人が隠れられる位の大きさでいい。深さは2~3㍍だな。穴の壁には風呂の時に使ったコンクリートを使ってくれ。人員の選抜はユゼに任せる。お前が隊長だ。」
「俺がですか?」
不安そうなユゼにシンは続ける。
「ユゼの成長につなげたい。
失敗してもいい。
それは周りから見た失敗であって、
お前にとっては成功に繋がる経験になる。だから大丈夫だ。」
「わかりました!やってみせます!」
ユゼは気合いが入ったようだ。
どうも親父さんと自分を比べる癖がついているからなぁ。
こういう経験を積み重ねてユゼにも自信をつけさせたい。
「何かあったら呼んでくれ。俺は偵察の方にいく。」
「一人でですか!?」
「ただの偵察だ。無理はしない。それに俺は影に入れるからな。見つかる可能性は低いだろう。」
「......あ!そうでしたね!」
一瞬頭上に?が浮かんでいた地下室隊長だったが思い出してくれたようだ。
衣食住のことで自分の能力を全く使わなかったシンである。
皆の前では使わなかったが、自分になにができるか把握するために夜中にこっそり試していた。
夜は影も多い。シンにとって最高の時間だ。
「さて!行動開始だ!」
ユゼ達は地下室作成へ。シンは王都に向かった。