No.14
No14 パンの作り方
ユゼ、ムーン、狩りチームが家を建てていた1ヶ月の間にティアは料理の腕を上げていた。
「皆の疲れが取れる料理を作りたいです。」
そう言って、休憩中のシンに近寄ってきた。
シンがユゼの方を見ると、
「教えてやってください。修理の方は自分たちだけでもなんとかできます。」
と言われた。
他の面々も頷いている。
そうだなぁ。チョッキンとイワトリだけだと飽きるわな。
修理チームの期待の眼差しを受けてシンはティアに料理を教えることにした。
調理場に着くと早速、
「まずはパンだ!ティアが腐らせたリンゴの瓶を持ってきてくれ!」
「これ使えるんですか?」
ティアが不思議そうに尋ねてくる。
「まず、ムギメを潰し、殻をザルでこし、殻と粉に分けてムギメ粉を作る。ムギメ粉とその瓶の液を混ぜる。ちなみにこれは酵母だ。」
先程よりも不思議そうな顔でティアが聞いてくる。
「こうぼ?」
「酵母は菌だ。」
さらに不思議そうな顔をしているティアにつけてたしておく。
「体に害のない菌もあると覚えておいてくれ。」
シンはパン作りを続ける。
「混ぜながらこねて伸ばすを繰り返し、弾力が出てきたら5分~10分置く。後は均等に分けて釜で焼くだけだ。」
釜で焼いている時間、待っているだけでは時間が勿体無いのでシンはティアに聞く。
「砂糖はあるか。」
「さとう?」
ちょこちょこ名前が違うのが面倒だな、と思いつつ説明する。
「甘い粉だ。」
「甘い木ならありますよ?」
シンは少し期待する。
「いまあるか?」
「3本だけならあります。」
ティアが持ってきてくれる。
「これはトウビといって、子供たちがお腹を空かせたときにかじっています。」
シンがトウビをよく観察する。
「これは、料理にも使える。」
シンが知っているのはサトウキビだったが、トウビはサトウキビと違い柔らかく雑巾のように絞ることが出来た。絞った汁を鍋にいれてティアに砂糖の作り方を教える。
「塩と同じやり方ですね!」
得意気になってティアは言う。料理のことになるとすぐ自慢したくなるようだ。
「そこにイチゴ...いやチチゴをいれて混ぜる。」
ここの世界はイチゴではなくチチゴというらしい。
中々慣れない。
「ティア、食べてみろ。」
感動の声が上がった。
「んー!!甘くておいしい!!シンさんすごいです!」
「明日の朝はパンにそれを塗って食べよう。冷めたら瓶にいれておけよ!」
「はい!明日の朝の皆の顔が楽しみですね!」
ティアは上機嫌だ。やはりどこの世界でも女の人で甘いものが好きな人は多い。
パンが焼き上がったいい匂いがしてくる。
釜からだしてみると、きれいなパンが出来ていた。
シンは処理してあるイワトリの肉をフライパンで炒め、塩で味を整えた。
パンに肉を挟んで、修理チームが休憩中に簡単に食べられるサンドイッチを作った。とりあえず8個作りティアに持って行かせた。
その頃修理チームは、絶賛空腹中だった。
ティアがニコニコしながら近寄っていく。
「またチョッキンかな...」
ムーンが沈んだ声を出している。
「今日は頑張っておいしいのを作りました!」
ティアは張り切っていた。いつもご飯を持っていってもたいして喜んでくれない彼らをギャフンと言わせるチャンスだったからだ。
「...ティア特製サンドイッチ!」
修理チームは出来立てのサンドイッチを頬張る。
「うんめぇーー!!」
満場一致だった。
ティアは勝ち誇った顔をして、
「へへーん!」
なんていっていた。