発動
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この頃、何かいまいちで…
◇発動◇
あれから一日たった帰り道。
「はぁー……」
光夜はやつれたように息を吐いた。
「まぁまぁ、そう落ち込むなよ」
隣では新がややひきつった笑みを浮かべている。
何故こんなにも疲れきっているのかというと、それは、一日たっても機嫌が治らない桜による一言。
『変態』
この言葉により、光夜は皆から『へぇ、如月もやっぱり……』という視線をくらい、先生から(女教師)も何故か一線置かれた状態になってしまったのだ。
「………桜のヤロー…」
そういうわけで今、光夜の周辺からピリピリとした殺気が漂っていた。
そして、そんな光夜にやや恐れを感じる新。
本当なら『触らぬ神に祟りなし』を実行して、どこかへぶらつきに行きたいのだが、昨日の一件からして今、光夜は狙われの身になっている。
(けど、何で光夜が狙われてんだ……)
普通の学生であり、人から恨みを買うようなことはしない人間。だと思う光夜が狙われるとは考えにくい。
だが、そうは言うが実際に昨日、光夜は襲われている。
(だったら、やっぱり原因は……)
新は光夜のもりあがったポケットに視線を向け、その中に入っているだろう箱を頭に浮かべる。
自分をこの世界に呼び出した箱。
これしか如月光夜が狙われる原因が思い付かない。
本当に何なのか…、と新は息を吐いた。
そして、それから数分歩くと光夜の家の屋根が見えてきた。
これで問題はねぇな、と新は光夜に話しかけようとした時。
ザッ…
「…………」
微かな音が聞こえた。
背後から気配を感じる。
「光夜」
「あん、何?」
「俺用事あるから、先に帰っとけよ」
「帰っとけよって……あそこは俺の家だっーの!!」
めんごめんご!!、と怒る光夜から離れていく新。
何なんだよ、全く……光夜は荒い息を吐いた。
新はさっき感じた気配を追いかけ今、見慣れない工場で立ち止まっている。
「出てこいよ、いるのはわかってんだ」
新は腰についたアクセサリーを掴み、宙へと投げた。
ガシャ、という音とともに、アクセサリーから黒い刀身と柄が飛び出す。新はその飛び出した柄を掴み、前へと構えた。
「………情報どおりだな」
低い声が聞こえた。
まるで刀を出すのを待っていたかのように。
新は、その声がする方向に走り出そうと、足に力を入れた。
直後。
ウッホォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!
上空から馬鹿デカイ雄叫びが地上に轟いた。
新は驚きながらも上空を見上げると、特大の黒い玉がこちらに向かって一直線に落ちてくる。
だが、段々と近くなっていく内に特大の黒い玉だと思っていた物は、特大の黒い毛皮のゴリラだと、
「ウッホォって、ゴリラかよ!?」
ツッコミながらその場から後ろに跳びその場から回避しようする新。
だが、
ドガァァァァァン!!!!!
黒い毛皮のゴリラが地面に落ちた瞬間。
地面はゴリラを中心に、地割れのように割れた。
その影響により地面が揺れ転けそうになる新。
ゴリラはそんな新を赤い目で睨み、右腕を振り上げ飛び込んでくる。
「ッあ、荒神流攻式!!」
新は慌てながら体を左にねじらせ、刀を横から背中に回し、
「芭蕉円転!!」
その瞬間。
嵐が新を取り囲み、ゴリラと衝突した。
ブジュ!!と肉がえぐられた音が、ゴリラの右手から聞こえた。
ゴリラは痛みに顔を歪めながら後ろに飛び、歯軋りをした。
嵐が止む中、新は口を開く。
「昨日といい、今日といい、姿を見せねーのか?」
すると、ゴリラがいる奥から、
「レギアを使うのは、出てこない方が得策なんだよ」
男の声が聞こえてきた。
それも、今の光景を楽しんでいたような、浮かれた声だ。
「ああ、そうかよ」
新は、柄を握り締める。
そして、刀先をゴリラに向け、
「だったら、そのゴリラを潰してからテメェの顔を拝ましてもらうぜ」
新は今度こそ、地面を蹴飛ばそうとした。
だが、
「!?」
カタカタと黒い刀が揺れだす。
新はそんな刀を見て、突如辺りを見渡した。
そして、辺りを見渡し終わったのかゴリラに視線を戻すと、
「……荒神流、気式」
「!?」
新は目を閉じ、囁くように言った。
「円気」
ギュゥゥン!!
まるで何かが吹き飛ばされたかのよう音が響き渡った。
新は目を開く。
すると、その場は。
見た覚えのない広場へと変わっていた。
だが、新の目の前には、先程の黒い毛皮のゴリラが立っている。
そう、今までいた工場は、幻覚だったのだ。
「クッソ、狙いは光夜か!!」
新は歯噛みながら目の前のゴリラから背を向け走り出す。
「逃がすな!!」
男の声にゴリラは新を、物凄い速さで追いかける。
「テメェと遊んでる時間はねえんだよ!!」
新は叫びながら地面を蹴飛ばし、小さく何かを言った。
刹那。
消えた。
一瞬にして、その場から。
何も無かったかのように。
「はぁ、はぁ……」
光夜は逃げていた。
どこか分からない、路地裏を、
「逃げないでよ」
すると、男の声が聞こえた瞬間。
シュパッ!!
光夜の頭上にあった、看板が豆腐のように切れ光夜に向かって襲いかかってきた。
「ッわぁ!?」
光夜は後ろに飛びながら、それを何とか回避する。
だが、光夜の後ろには一人の男が立っていた。
「お前、何なんだよ!?」
光夜はじりじりと、後ろ下がりながら叫ぶ。
男はそんな光夜を見て笑った。
「君と同じレギアを持つ者だよ」
「レギア?」
ああ、と男は笑いながら手から何かを出す。
そう、それは。
赤く染まった鎖鎌。
光夜の頭が恐怖で染まった。
「そう言えば、君のレギアは特別で主人が死んでも消えないんだって」
「!?」
だが、男はそんな光夜の表情にさらに笑みを浮かべる。
何で……、光夜は思った。
一昨日まで平和だったはずなのに、それが何で…。
光夜の体が小刻みに震え、腰を抜かしたかのように後ろから地面に転けた。
男は言う。
まるで、人を殺すことを何とも思わないように、
「レギアだけ残して死になよ」
ズバッ!!
夕焼けが地上を照らす時。男は笑っていた。
そのすぐ近くでは…。
制服が切れた光夜が倒れている。
動く気配はない。
男は笑い終えると、
「死んだね。これでアニキ喜ぶよ」
光夜に一歩一歩近づいていく。
目的は光夜の持つレギア。
男の頭には、光夜のレギアを取ることしか頭にないのだ。
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!
刹那だった。
男の体は、五メートル以上吹き飛ばされ、その先にあったコンクリートに直撃した。
「ガ……………バッ!?」
男は口から血を吐いた。
何が起こったかわからない。ただあるのは、腹の辺りからくる強烈な痛み。
男は地面に倒れ、視線を先程までいた所に向ける。
「!?」
嘘だ。男は驚愕な表情に染まった。
確かに殺ったはずだ。
男は手にある鎖鎌を握り締める。
だが、そこには。
如月光夜が立っている。
体に黄緑色の円に書かれた数字がついた黄緑色の輪を浮かばせ。
「オプション……」
光夜は呟く。
「衝斡の輪」
水や青空のような瞳を向けながら。
光夜のレギア発動のイラストは、一応、ゴロページに載せました。