◇力の象徴◇
「ぶっ飛ばす!」
そう宣言した光夜は地面を蹴飛ばす。
以前。
大男と戦った時、この力が理解できなかった。
どうしたら力を上げれるのか、それが分からなかった。
だが、今は違う。
自然と体が思った通り動く。
光夜は敵の懐に一瞬にして踏み込み一撃を放つ。ズシリと拳に感覚が残る。
そこから的確な力量の制限が決められる。
身体中に散らばる輪を決まった位置に配置し、一瞬にして電光石火のように敵をなぎ払う。
しかし、
「ちっ……埒があかねえ」
一体一体殴り倒す光夜は息を吐き辺りを見渡す。確実に仕留めている。だが、一向に尽きる気配が見えない。
…………一か八か。
光夜は深く息を吐く。
すると、それに鼓動するように一から六までの輪が腕をすり抜け、胴体部分に一つに集まる。そして、段々とその形を変え大きな輪に変わる。
「……もう少し」
ミイラたちが立ち止まった光夜にぞろぞろと集まる。直ぐにでも囲まれるだろう。
後、少し。
ついに、ミイラたちに光夜を囲まれた。
距離もそう遠くない。
危険。
自身の体がそう言う。だが、同時にそれは光夜自身にとって有利になった。
何故なら。
その位置こそ、如月光夜の間合いだからだ。
「…………ぶっ飛べ」
その瞬間。
光の輪は一気に膨れ上がり、その場は強大な光に呑み込まれた。
屋上が光に包まれる少し前。
その数メートル離れたビルの屋上で、
「ん?動きがよくなった?」
望遠鏡を手に一人の少女がそう呟いた。
ツインテールをした茶髪に赤と黒のゴスロリ衣装を着た少女。
片手には青紫の波を表現したような腕輪があり、少女は腕を対象がいる病院に向け、
「もう少し、遊べるかな」
そう口に出した。
その直後。
「そこまでだ」
カチャ、と少女の背後で音が鳴る。
少女はゆっくりと振り返る。
そして、そこで見えた物。
黒い刀身。
夏だというのに季節に合わない黒のコートを着た一人の男。
風霧 新。
「よくわかったね………私の居場所が」
少女はペロリと下唇をなめ、微笑む。
「同じ手を何回も食らうかよ」
新は全く表情を変えず少女に刀を向け続ける。
今、目の前にいる少女は見た目からみてもただ人間だ。だが、そんな彼女が何故このような力を持つことになったのか。
新は少女に尋ねる。
「……質問に答えろ」
「ん、何?」
「………その力、レギアとは何だ?」
「え?そんなことでいい」
「ご託はいい、答えろ」
新は冷たい瞳を向け続ける。
その眼は誤魔化しを許さない。
少女は何かを考え、息を吐いた。
「…この力……………それは、過去、未来、空想、それらから作り出された力。私たちはこの力をレギアと呼ぶ」
少女は腕輪のついた腕を新に伸ばし、
「ちなみに私のレギアは屍使い。見ての通り屍ならミイラでもゾンビでも自在に生み出し動かせれる」
モゾモゾと、何もない空間からミイラが這い出てくる。
そして、その直後に背後から光が輝いた。
しかし、少女は全く動揺すらしない。
「それじゃあ今度は私の番。………あなたの力、レギアじゃないみたいだけど、それは何なの?」
少女は口元を緩めながら尋ねる。
その質問の意味。
新がレギアについて思うように向こうも同じなのだ。
レギア。
その力と同等の力。
「…………」
新は刀を下ろす。
そして、腰につけたもう一つのアクセサリーに手を伸ばし、
「この力は……」
上空に放り投げた。その直後、アクセサリーから柄と白き刃が飛び出し、新はその刀を掴む。
黒と対となる白き刀。
新はその二つの刀を掴み、見せしめすようにそして言った。
「神の力だ」
久しぶりの更新です。