臨輪衝光
久々に更新出来ました。
◇臨輪衝光◇
「!!」
動いたのは一瞬だった。
光夜は地面を砕くほどに地面を蹴飛ばし、大男の頭上に飛び、片腕に3の輪を移動させ。
高速に拳を振りかざした。
だが、
「ハッ」
大男が小さく笑った直後。
ゴッ!!と衝突音が鳴り響いた。
「ッ!?」
光夜は距離を取ろうと地面に足をつけ、後ろ跳ぼうとする。
しかし、その隙をつくように、
「逃がすかよォ!!」
大男は拳を振りかざし、殴りかかる。
光夜は咄嗟に腕を交差させ防御の体勢に入った。
筈だった。
バキッ!!
「っがぁぁ!!」
直後。光夜の体は別方向からの衝撃に吹き飛び、道路に寝かされた桜の側にあった電柱に直撃した。
「ぁぁ………ッ」
「おいおい、しっかりしてくれよ。衝斡の輪」
大男は笑いながら足を一歩一歩動かす。
何が起こったのかわからなかった。
大男に視線を向ける光夜。
すると、さっきまで大男の側にはなかった。
巨大な、
黒い毛深な腕が空間から出ていた。
光夜は起き上がろうとする。だが、大男はそんな光夜の胸に足を落とす。
「がぁぁあっ!!」
「おいおい、大げさすぎるだろぉが」
大男は地面で苦しむ光夜を見て、つまらないといったように息を吐き、
「それとも何か?」
その瞬間。
「女が死なねえとダメか?」
さっきまで空間から出ていた腕が桜に振り下ろされた。
「さ、桜ぁぁぁぁぁぁぁ!!」
間に合わない。
光夜の叫びが響き渡った。
刹那。
「風式」
光夜の耳に微かに、
「日虹風」
新の声が聞こえた。
瞬間。
ドッ!!と、
巨大な腕を真空の風が突き刺さった。
突然の攻撃に苦しむ腕。
「ちっ!」
大男は光夜から距離を取る。
光夜は胸を押さえながら、桜に近づく。
今も静かに眠っている。
思い出す。
光夜は胸のそこから思い出す。
田中桜。
彼女を助け出したあの時、決めた思いを。
「許さねぇ」
光夜は足に力を入れ立ち上がる。
「お前だけは絶対に」
もう一度、
「許さねぇ」
守るために。
大男は笑った。
「はん、そんなにその女が大事か?」
「ああ」
光夜は桜を見る。
「俺は約束したんだ」
思い出。いや記憶か、
光夜と桜。
二人が出会い。
そして、
今、この日々がある。
「助けるって、連れ出すって」
だからこそ、
光夜自身が決めたことを思い出す。
「あいつの日々を変えてやるって」
衝斡の輪が光夜の思いに答える。
その瞬間。光夜は理解した。
さっきまでの痛みが消えたことに、
そして、大切な物を。
「だから、あいつの今の日々を変えるやつは許さねぇ」
日々を守るための、
「あいつは俺が守る」
力が目覚めたことに。
喜んだ。
やっと力を出せる。
「がははははははははぁ!!」
大男は高らかに笑った直後。
空間をねじ曲げ巨大な腕から胴体、頭を現し。
巨大な猿人が姿を見せた。
猿人は光夜の頭上に飛び上がって向かってくる。
逃げれば、後ろ倒れる桜に攻撃が当たる。
一瞬で決める。
「オプション、衝斡の輪」
衝斡の、輪たちが光夜の右手に集まる。
すると、輪に光が集まり。
その光が光夜の右手をさらに巨大な光の右手へと変えた。
光夜は呟く。
その力の名を。
「臨輪衝光」
その日。光がその場一体を埋め尽くした。