密約
ここからでも、見える、見えるよ。
窓という窓、顔という顔、景色という景色。
片っ端から無作法に、ノックしても構わない。
ここから世界の裏まで手が届きそう。
玉座とソファーは巧くすり替えて。
羨望と卑下が混ざる、混ざり合う。
美という名の、言葉が生まれる前の激情のしたたり。
気づかない振りをして、操られる悦びに身を委ねて。
日差しを遮る角度から、思惑通りの影を纏って。
覗きを誘う眼差しで。
眠りを妨げる乱反射から、思惑通りの言葉を操って。
理解者を装う指先で。
鏡と鏡が挑発する宴は毎晩開催されている。
見える、見えるよ。
四つん這いで美を貪る自分が見える。
止まらない、止められないよ。
言語で語り尽くされた欲情のせいにして、弱者の遠吠えに集えよ、美しさと醜さを巧みに使う生存者たち。
鎮まらない、飼い慣らせないよ。
腹這いのままで入口をノックする自分が見える。
劣等と優越が交わす密約の宴は、ここで開催されている。