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外の世界

 エルムは花と葉っぱで飾りつけた窓を南の壁に取り付けました。

 内側にだけ開く窓を開けると、外には森の中の景色が広がりました。


「やあ、こんにちは」


 窓の外から誰かがエルムに声をかけました。目を凝らすと、窓の傍に伸びた枝葉に小さなアオムシがくっついているのが見えました。


「こんにちは、アオムシさん。僕はエルム。僕の家に遊びに来ませんか?」

「きみの住処に招待してくれるのかい? それは素敵だね」


 アオムシは嬉しそうにそう言いました。


「ところで、きみの住処には植物はあるかい?」


 エルムは家の中を見回して、首を横に振りました。


「悪いけれど、緑の葉っぱがない所には自分は行けないな。たくさん食べて、早く蝶にならなければならないからね」


 そう言ってアオムシは自分が乗っている葉をむしゃむしゃと食べ始めました。

 

 さよならと言ってアオムシは他の葉っぱへと移ります。

 アオムシはエルムよりも食べることの方が大事なようです。



 森の住人はエルムを見てはくれませんでした。

 窓を閉めて、エルムは新しい窓作りに取り掛かりました。




 *




 次にエルムは貝殻で飾り付けた窓を作りました。

 完成した窓を床に取り付けて開くと、ちゃぽん、と水が波立ちました。そこから女の子が顔だけを覗かせます。


「あら、こんにちは」


 水の中の女の子がエルムに声をかけました。水の中をよく見てみると、女の子のおなかの下に二本の足は見当たらず、代わりに魚の尾びれがくっついていました。


「こんにちは、人魚さん。僕はエルム。僕の家に遊びに来ませんか?」

「うふふ、初めて会う女の子を家に誘うなんて大胆ね」


 人魚はまんざらでもないようにそう言いました。


「だけどごめんなさい。私は陸には上がれないの」


 人魚にそう言われて、エルムは首を傾げました。


「水の中じゃないと息ができないの。あなたのおうちでは私は窒息してしまうわ」


 そう言って人魚は首にあるエラをぱくぱくとさせました。


 じゃあねと言って人魚は水の中に潜ります。

 人魚はエルムよりも住む場所の方が大事なようです。



 海の住人はエルムを見てはくれませんでした。

 窓を閉めて、エルムは新しい窓作りに取り掛かりました。




 *




 今度は鳥の羽で飾りつけた窓を作りました。

 テーブルの上に乗って天井に取り付けた窓を開くと、空から赤い羽根が振ってきました。


「おや、こんにちは」


 窓の縁に止まった大きな鳥がエルムに声をかけました。燃えるような赤い色が美しい鳥です。


「こんにちは、フェニックスさん。僕はエルム。僕の家に遊びに来ませんか?」

「ふむ、ワシがお邪魔しても構わないのかね?」


 フェニックスは興味深そうにそう言いました。


「しかし、ワシがお邪魔するにはいささか広さが足りないようだ」


 突然翼を広げたフェニックスに驚いて後ずさると、エルムは棚に背中をぶつけました。


「狭い場所では自由に飛び回ることはできない。自由がないのは死んでいるのと同じことだ」


 そう言ってフェニックスはその場で翼をばさばさと羽ばたかせました。


 さらばだと言ってフェニックスは大空に向かって飛び立ちます。

 フェニックスはエルムよりも自由の方が大事なようです。



 空の住人はエルムを見てはくれませんでした。

 エルムは窓を閉めました。

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