呟き
遊女は男に殺害された。別の女との婚姻話が進んでしまい、男が遊女の身請を白紙にしようとしたことが発端だった。男は着物の帯で遊女の首を絞めた後、その亡骸を川に投げ捨てるという解決策に出てしまった。
「あぁ…悔しい…」
魂だけになった遊女は男への怨嗟を呟きながら願い続ける。自分の恨み節を聞きつけた誰かがそれを奉行所へ届け出てくれることを。そして、裁きを受けた男を見届け、成仏したいと。
「いつからそこにいる?」
黒づくめの青年が遊女の前に立っていた。声が届いたことを喜んだ遊女は男に願う。
「私の話、聞いていただけますか?」
遊女は男との馴れ初め、殺害された当日のことを切々と話した。遊女が話し終えると青年は頷く。
「分かった。その話、広めよう…」
「なんと親切なお方…」
遊女は溢れる涙を袖口で拭いながら、青年に礼を言う。
「あの男が捕らえられれば、私は成仏することができます…」
しかし、青年は胸から板のような物を取り出し、“それは無理だ”と、冷徹に否定する。
「貴方は長い間、呟きすぎた…」
青年は板のような物の表面を指で滑らしながら、“それに…”と付け加える。
「リツイートしてもらいたいだけなんだ…」




