それも努力の形
女はベッドの上で男の肩に腕を絡ませていた。指で男の頬を撫でる。
「どうしたんだい?」
「綺麗な顔立ちだなって思って…」
男は某国立大学を卒業後、一流企業に就職。甘いマスクと仕事の速さで順調に出世し、現在の年収は約800万円。絵にかいたような理想の男。そんな男の子供を宿してしまったかもしれない。そう考えると女の身体の芯が再び湿った。
男は笑いながら尋ねる。
「逆に今までで一番酷かった顔立ちの男性は?」
「中学時代のあの子かしら…」
潰せば膿が出てきそうなニキビだらけの顔。今思い出すだけでも身の毛がよだつ。
「君がいじめた子か…。中傷文を仲間同士で回しあっていたね…」
「どうしてそれを…」
女は男から離れた。男はゆらりと上半身を上げる。
「その少年が俺だからさっ!」
男は自分の顔を撫でる。
「整形したんだよ」
「国立大を卒業したのも、大企業に就職したのも私に近づくために…」
「君に仕返しするためなら苦じゃなかったね…」
男はあざ笑う。
「あの醜い男の子供を身籠ってしまった気分はどうだ!」
女は男の胸板に顔を寄せた。
「幸せですぅ…」
男は女の肩を抱いた。
「俺もですぅ…」




