英語上達法
タクシーから見えるニューヨークの景色。緯蕪はタクシーの窓に頭をもたげながら呟く。
「私の名前って『イヴ』っていうでしょ?両親が海外でも通用できるようにって名付けてくれたの。だから、その両親の期待に応えたくて、英語の勉強を頑張ったのよ。だけど…」
緯蕪は深いため息をつく。
「どの講師も英語ができる自分ってすごいって自慢しているようでそれが鼻についちゃうっていうか…」
緯蕪の愚痴を夫は拳を握りしめながら黙って聞いていた。緯蕪は英会話教室に通っていれば自然に英語が身につくと思っている節がある。気に食わないとすぐに退会したがる。今回のアメリカ旅行のために退会を押し留めさせていたが、帰国後、彼女は今の英会話教室に通うことはないであろう。
夫がこのように気が滅入っていることも知らず、緯蕪はある思い付きを口にする。
「講師陣と対話するから肌に合わないのかも。帰国したら次は通信教育に挑戦しようと思うの!その方が授業料も安く済むし!」
夫の堪忍袋の緒が切れた。
「もっと安く済む方法がある!」
夫はタクシーの扉を開け、緯蕪を外へ突き飛ばした。
「日本まで自力で来なさい!」
走り去るタクシーを緯蕪は呆然と見つめ続けていた。




