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ひとくちサイズの小説  作者: 島吉里実
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手紙交換対策は

 最近の女子生徒は弛んでいる。授業中、教師である俺の目を盗んで手紙を書き、それを回しあうのだ。俺は対策を考えた。手紙を書いている生徒を見つけたらその手紙を取り上げ、声に出して読むことにしたのだ。

 この前は村田の手紙を読み上げた。俺の陰口だった。『根暗な豚さん』。縮こまる村田の姿は実に痛快であった。

 今日は石井がノートで隠しながら手紙を書いていた。当然取り上げてその場で読む。

「『初めて会った時から貴方のことを思っておりました…』」

 情熱的なラブレターであった。自分の心がいかにその男に掻き乱されているかということを切々と綴っていた。

 赤裸々な恋文を晒される石井の羞恥は村田の比ではないだろう。そう思うと実に胸がすく。しかし同時に、妬みに近い感情も湧きあがる。それは切ない想像へと変化する。若い頃、このような情愛を誰かから向けられていたら、自分の人生はどんなに輝いていたのだろうか、と。


 長い手紙の最後はこのように締められていた。

「『愛しています、先生』」

 石井は立ち上がり、俺の顔をまっすぐ見つめる。

「お返事をください、先生」

 他の生徒が囃し立てる。俺はこの時初めて石井の瞳が瑞々しいことを知った。


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