名声と快楽と
作家の周りには餌をねだる猫のような女が群がっている。作家は目を覆い、その現実を拒み続ける。作家は己の半生を振り返る。
作家である男はこれまで数冊の小説を出版していた。原稿料は雀の涙。アルバイト代が命綱。当然ながら生活は困窮を極めていた。
そんな生活に転機が訪れた。その貧困をネタにエッセイを書いてみた所、物珍しさからか本が売れたのだ。小説ではなくエッセイ本という点が気に入らないが、生活は安定し彼女もできた。彼は本職である小説を改めて世に発表した。しかし、売れない。そこで成功者となるまでの道のりをエッセイにして出版してみた。これも鼻に突く内容だと批判を受け、やはり売れなかった。
収入が少なくなれば、生活も荒れ始める。作家に見切りをつけた彼女から別れを告げられた。作家は怒り狂った。感情に身を任せ、その経緯をエッセイで発表した。ネット上で賛否両論の意見が飛び交ったこともあり、男はベストセラー作家に返り咲いた。
作家の周りには餌をねだる猫のような女が群がっている。作家は目を覆い、その現実を拒み続ける。
しかし、作家の心は苦痛を前にして躍っていた。