武士の告発
「師匠を焼死に見せかけて殺したのは作次、お前だ!これがお前の部屋から出てきた!」
龍之介は師匠殺害の証拠だと言わんばかりに掛軸を掲げる。この掛軸は道場に飾られており、道場と共に焼失したと思われていた。道場は弟弟子達の戸惑いのざわめきに溢れかえる。
「師匠を殺害すると、お前は金目の物を回収し道場に火をつけた。その後、お前は師匠の後継者であることを誇示するために、師匠の書画を売り飛ばし道場を立て直した」
龍之介は刀を構える。
「愛弟子に殺され、収蔵品は流失。自分の亡骸があった場所を踏みつけるかのように弟子達が修行をしている…師匠の嘆きが聞こえてくるようだ…」
「龍之介…師匠には商才がなかったのだ…」
龍之介と対峙する作次は静かに反論する。
「師匠は貧しき者も受け入れ、その生活を支援した。しかし、しわ寄せは師範代や我々へ来た。この所、我々への手当てが滞っていた…。書画は増える一方だというのに…」
「それでも武士か!」
龍之介は痺れるような怒声を放つ。
「武士にとって師は親も同然!いかに理由を並べようと師殺しなどあってはならぬ!」
龍之介と作次のどちらにつくべきか。弟子達は竹刀を握りしめると――。