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I'm in Metallic Cage

作者: あらゆき

※初投稿です。文章が拙いです。


これは、友人の一言に着想を得て書いたものです(本人から執筆許可は頂いています)。


「問題ない」という方は、どうぞ拙作をお楽しみください。











ピピピピ…… ピピピピ……




電子音。




『羽田様、起床のお時間です』




合成音。




けたたましく………は無くとも、快眠に水を差されるのは良い気分ではない。二度寝でも、と思うが、このまま鳴り続けるのも鬱陶しい。




「………………ん」




身を起こす。




白を基調とした───否、ほぼ白一色に統一された調度が、意図もなく近未来を醸し出している。






午前六時三十分。合成音が報せる。




『本日は朝食後、身体検査を受けて頂きます。既に御用意しておりますので、お早めにお召し上がりください』




「………本日()、だろうに」




独り愚痴るその声は、届かない。








籠っていても仕方がないので、部屋を出る。




やはり、白。




リビングの、そのテーブルの上に置かれた、出来たてであろう()()は、何とも食欲を唆るような存在感を滲ませる。




「………頂きます」




()()()()()()()()()()()(なにがし)への微かな感謝と共に、料理を口へ運ぶ。




やはり、()()()




軽過ぎず、重過ぎず。朝にどれだけ、どのような物が欲しいのかを、きっちり理解している。




見た目と味、双方に於いて、何処かのレストランに出されていても可笑しくない出来栄えだ。








故に、だろうか。










──────()()()。そう、思ってしまうのは。











◤◢◤◢◤◢










身体検査、着替え、出発───一連の習慣(ルーティーン)をこなし、学校へと歩を進める。『普段通り』という言葉が違和感なく当てはまる日常だ。




交通量は少なく、閑散とした通りを歩くのは、現在ただ一人。






………そういえば、今日が入学式だったか。




今朝、聞いたことを確認していると、僅かながらに耳に入る機械音。




先の曲がり角から聴こえるその音は、周期的なリズムを刻みながら、徐々に大きくなっていく。






カシュ、カシュ、ガシュッ。




続けて視界に入ってきたのは、自らと同じ制服を着た男。




180センチは下らないだろうか。その体格は、遠目からでも分かる程度にはがっちりしている。




一見して、相当量の鍛錬を積んでいることが伺える。








機械音の音源が男の足元でなく、更にその首に、()()()()()()()()()()()()()()()が見え隠れしていなければ、の話だが。










◤◢◤◢◤◢










───機甲人間(サイボーグ)




人間の肉体と、鋼鉄の鎧。二つをその身に併せ持つ者。幾百、幾千もの歳月に渡る、進化を是としなかった人類が()()()()()、一種の進化形。




本来の身体と比較しても遜色のない精密性・感応性。本来の肉体を遥かに凌駕する身体能力。




従来の人類に在った限界を大幅に拡張し得た、叡智の結晶だ。










かつて、人間は『死』を畏れ、『老』を怖れた。




技術・産業の進展と自然環境の保全。双方を絶妙なバランスを保ちながら推し進めていた。








()()()()






発展の遅さに辟易し、業を煮やした者達がより一層の革新を求めんと現れるのは、想像に難くない。




案の定、彼らの強行策は環境を軽視したものになり、努力も虚しく自然は崩壊の一途を辿っていく。




結果として、文明は発達したものの、産業廃棄物の杜撰な管理による外部への流出に加え、今まで認知されなかった有害物質が『都市公害』として猛威を振るうようになる。




自然は、その修復が極めて困難となるまでに侵され、その影響は何時しか、惑星規模にまで広がっていき、人類は存亡の危機に見舞われた。




その時、ヒトは自然の復活でなく、()()()()()()()()()を選択する。無論、後者が安易であるからだ。




奇しくも、発展した科学技術は、高度な人工知能(AI)や、自動人形(オートマトン)などを生み出していた。それらの技術を流用し、人工臓器・外骨格の開発に着手。




ついには、脳と機械を直接的に接続することで、人間の肉体と比較した時の駆動時間差(ラグ)を極限までゼロに近づけた義肢、及び全身機装の完成まで漕ぎ着けた。








こうして、機甲人間(サイボーグ)は誕生した。








更に技術は進歩し、人体に悪影響を及ぼすことのない新合金の考案、感覚・運動器官や骨格を機械に置換し、神経器官を残しておくことによって、然も自らの身体を動かすかのように義肢を動かすといった、先進技術の実用化が進められた。




未だに、肉体の置換は、以降の成長を捨て去ることと同義であるという課題が残り、また、生命に対する侮辱ではないか、との倫理的懸念の声もあるが、政府が主体となって推奨・援助したことも相まって、今やほぼ全ての人間が機甲人間(サイボーグ)となっている。










◤◢◤◢◤◢










「………まあ、関係ない話だけど」




この身は機械に置き換えていない。完全に生身の人間だ。








()()()()()()()




現状、全ての機甲は特殊な合金で造られ、それに含まれる金属に対して、皮膚に軽くない炎症を起こしてしまう。体内に埋め込めば、どうなるかは明らかだ。




かと言って、炭素や珪素、燐などを用いたものでは、合金製の機甲に比べ、どうしても性能(スペック)が大きく落ちてしまう。




よって、生身で生活せざるを得ないのだ。




メンテナンス要らず、というメリットはあるが。








何時の間にか、眼前に、旧き良き建造物校舎が見えていた。




()()()()()()右手で携帯を見る。




『08:11』の文字。普段通りだ。






この御時世、自動車や電車の類はめっきり使われなくなった。何処へ行くにも、自分の足を使う。




近所なら歩き、遠ければ空を飛ぶのだ。




見上げると、似たような影が十数個。飛んで通学する者も多いらしい。






辺りからは、囲まれたように聞こえる機械音。




消音機構を組み込んであっても、完全には消えないか。




特注の補聴器を両の耳に付けながら、そんなことを考える。




寄り道をせず、そのまま、この土地で最大の建造物───大講堂へ向かう。












◤◢◤◢◤◢











二千二百を収容可能とする講堂は、既にその半分以上をヒトで埋めていた。もう新たな友を作ってしまったのか、談笑に興じる者も多い。




生憎と、此処───私立桜門館学園高等部に新しく籍を置いた知り合いは居ない。仕方なく、まとまって空いていた席の、その端に座る。








「隣、良いかな?」




ふと、問いかける声。




「………ええ、構いません」




応える意思に、「じゃあ、失礼」と。




「僕は、近藤 義久(こんどう よしひさ)。君は?」




「………羽田。羽田 司(はねだ つかさ)です」




「羽田君、だね。宜しく。僕のことは、適当に『近藤』とでも呼んでくれて良い。それと、()()で大丈夫だよ」




「では、近藤、と。此方こそ宜しく」








………皆さんは、この学園で───








高校では最初の、そして、友人となるであろう話し相手に意識が向いたからか、もう入学式は始まっていたようだ。




学園長を見ながらも、彼の言葉を軽く聞き流す。






「しかし、待ちに待った高校生活。わくわくするねえ」




「………まあ。強ち、間違ってはいないかな」








発した言に、隣の彼は首を傾げた。










◤◢◤◢◤◢










「えー、この度!」




快活な声が、教室に響く。




「この1年B組の担任になりました、乙原 鈴奈(おとはら れいな)です!採用2年目で、クラスを持つのは初めてだけど、精一杯頑張ります!宜しく、みんな!」




パチパチパチパチ………




若干、言わずとも良い情報が混じった気もするが、一先ず拍手をする。




「取り敢えず、みんなのことをもっと知りたいから、自己紹介でもしよっか!」




じゃあ明石さんから、と言う乙原教諭。




「はーいっ!」




またも、明朗な一声。




明石 花菜(あかし はな)、5月18生まれ!()()()()()()()()()()()!葡萄とチョコが好きかな。早く皆と友達になりたいです!宜しくお願いします!」




パチパチパチパチ………




まるでアイドルみたいな紹介だ、と思うのも致し方のないことだろう。






それにしても、()()()()機甲人間(サイボーグ)か、明石さんも。




同じクラスに配属された、彼───近藤は、頭部以外の全てを置換していた。








()()()()()()()()()()()()()








「次はー、羽田君、お願い!」




「はい」






そっと腰を上げる。






皆の視線が、一点に集まる。








さあ、始めようか。








「羽田 司です。魚は大体好きです。訳あって機械には置き換えていません」












脆弱な人間の、挑戦(タタカイ)を。












「目標は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()です。宜しくお願いします」










今のところ、続きを書く予定はありません。


が、失敬ながら、気が向けば「短編」といった形で続きを書くかも知れません。


これからも(機会が訪れるかは不明ですが)よろしくお願いします。


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