2.初めてのメイドさん
(やあ。おはよう、よく眠れたかい。)
おう。また会ったな。
(数時間振りだけどね。)
まだそれくらいしか経ってないのか。
(うん。外は今大騒ぎだよ?大臣が魔王の息子を暗殺しようとしたとか、生まれて間もない魔王の息子が聖術を使ったとか。)
...起きたら面倒そうだな。
(そうだね。だから君には一通り説明しようと思って出て来たんだ。)
ほう?じゃあ俺の聞きたいことを聞かせてくれると?
(うーん?今答えられる範囲なら大丈夫だよ。)
じゃあ聞こう。お前は何だ。
(それは答えられないなー。)
いきなり黙秘かよ。
(だって、君とはまだ仮契約状態だし。)
...今大分重要そうな単語出て来たけど、聞かせてもらえるか?
(残念ながらそれも無理だね。)
お前教える気あるのかよ。
(その辺はまた今度ね?)
解った。じゃあ俺の今の状況についてだ。
(それならオッケー。君は転生者なんだよね?となると、この世界のことからかな。)
(この世界の名前は《ティア=レイク》。人間や、悪魔などの様々な種族が存在する世界だよ。)
ファンタジー異世界ってことか。
(そうそう。それで、今君が生まれた国《ヘルヴィス魔帝国》はこの世界での二大トップの国だ。)
二大トップってことはもうひとつあるのか?
(うん。《神聖王国アルテリア》そこは人間が支配してる国だよ。)
(《神聖王国アルテリア》と《ヘルヴィス魔帝国》は今、対立状態にある。)
(それで、君を襲った老人、ベルモントって言うんだけど、彼は人間側のスパイだったわけさ。)
だから魔王の子供を暗殺しようとした?
(その通り。現魔王を殺すのは些か骨が折れるからね。だから次期魔王候補筆頭の君を狙ったんだ。)
(それで、君は聖術を使ったって話なんだけどね?)
確かに赤ん坊がいきなり使うのは変だよな。
(うーん。それもそうなんだけどね?)
何か違うのか?
(端的に言うと赤ん坊とかじゃなくて、君が聖術をつかうのがおかしいんだ。聖術は本来、人間にしか扱えない。)
なら隠して生きて行けと?
(いや、いいんだ。一応君のお父さんも使うことは出来るんだ。中々危険だけどね。)
(けど、君は少し違う。君には本来悪魔として聖術を使うことは許されない。なのに君は、今まで存在したどの聖術使いよりも聖術に適性があるんだ。悪魔なのにね?)
なんでどの聖術使いよりも適性があるなんて解るんだ?
(そんなの、僕が今までどれだけ...あっ)
なるほど大体察した。
(...ゴホン。とにかく君は魔王の息子なのに人間の聖術を扱えるなんて、おかしいんだ。)
つまり俺は悪魔として特殊ってことか。
(特殊ってことで片付けないで欲しいんだけども...まあ、だから君は聖術を使えることを知る者は少ない方がいい。。これを忠告しておくよ。)
解った。じゃあお前の正体についてだが...
(おっと、もうすぐお目覚めの時間だ。それじゃあねー)
**********
ハッ!?なんだ夢か。
って違うだろ絶対に。内容もしっかり覚えてるし。
でも、あいつはなんなんだよ一体。あのベルモントとか言う老人に襲われた時もいたよな。
まあ、それはあいつがそのうち教えるって言ってたしな。気にしないでおこう。
それよりも現状確認だ。とりあえず周りは真っ暗だ。真っ暗というより何が覆い被せてある?
ふむ。どうやらここは布団の中らしい。まあ、危険じゃないなら出るとするか。
...モニュ...ん?
なんだこの好ましい感触、弾力があって...まずい、これってあれじゃないか?世にいうラッキースケベってことじゃあ...
それ以前になんで俺の寝床にほかの人がいるんだ。
そんなことを考えていると不意に腕が回された。
「フフ、朝からこの子は元気ですね。」
あ、この声どっかで?そうだよ!あの時のお姉さん!てことはさっきのってつまり...
「そんなに欲しがらなくてもちゃんとあげますよ。こういう所はパパにそっくりね。」
やべぇ。何か勘違いされてない?なんでおもむろに抱えられてるの。ちょっ!?まっ!
初めてのご飯は少し気恥ずかしかったです。
**********
ふぅ、幸福な時間...酷い目にあった。
さて、朝ご飯も済んで連れていかれたのは子供部屋だった。
「それじゃあメアリー、この子を頼みましたよ。」
「はい!行ってらっしゃいませ!」
どうやらこのメアリーさんが俺の世話係らしいな。
「はぁ~流石は王妃様のご子息、可愛い~」
...何かこの視線辛いな。にしてもメイドさんか。何となくこのメアリーってメイドさんは駄メイド感あるな。
「あぁ~こっちじっと見てる~可愛い~」
にしても、この子供部屋広いな。赤ん坊の体だからそう感じるのか。
「はぁ~キョロキョロしてるのも可愛いなぁ~」
とりあえず一通り探索してみるか。
「あっ!ヨチヨチしてる!可愛いぃ~」
...やりずらい。なんでこのメイドはいちいち反応してる来るんだ。
「あっ!そうだ!」
なんか寄って来た。なんだよ何するつもりだよ。
「申し遅れました!私ご子息様のお世話をさせて頂きます!メアリー・リンでございます!」
そういえばさっきもメアリーって呼ばれてたっけ。完全に忘れてたな。
「メアリーですよ!メ・ア・リ・ーです!」
わかった、わかったから。そんなに寄るな暑苦しい。なんでこんなに名前をゴリ押して来るんだ。
「はぁ~。やっぱりまだ名前は呼んでもらえませんか。残念です」
なんだ、名前を呼ばれたかったのか。そういえば俺って今赤ん坊だったな。少しは赤ん坊らしく振る舞うとするか。
「めありぃ?」
「!!ルーシー様今メアリーって言いました!?」
おおぅ、なんか凄い反応したな。そんなに嬉しかったのか。いや待て、俺ってまだ生まれて数日だよな?
「今言いましたよね!?めありぃって!」
まずい、生まれて数日の赤ん坊は普通喋らないだろ。何普通に名前呼んでんだよ!
「もう一回!もう一回です!ルーシー様!」
あー、どうするこれ。なんかもう一回って言ってるけど。よし、最終手段だ。
「...zzZ」
「あぁっ!ルーシー様!今まで起きてたじゃないですか、なんで寝てしまわれるんですか~」
俺の必殺技【寝た振り】昨日もこれで乗り切ったからな、今回も乗り切らせて貰う。
にしてもメイドさんか。少し賑やかになりそうだな、あ、ちょっと待ってまた眠くなってきた。寝た振りなのに本当に眠ってしまう。
あぁ駄目だ、眠い。おやすみなさい。
遅くなってしまった。というわけで2話め投稿しました。いかがだったでしょうか。今回は少ない字数ですがかなりゴリ押し感があると思います。多めに見てください。誤字、脱字があれば修正していきます。それでは次回。