1.初めての転生
俺こと倉田光はこの度、異世界に転生する事になった。
急なことなので俺も理解出来ていないが、少なくとも死んだことは事実だ。その証拠として、今俺の目の前の状況を説明しよう。
「おお、陛下今度は男の子ですぞ!」
まず俺を見下ろしているこの老人
「まあ、なんと精悍な顔つきなのでしょう。ねぇ貴方?」
自分を抱えている綺麗なお姉さん
「ああ、この子なら俺の跡継ぎとして役目を果たしてくれるさ」
最後に金髪碧眼のイケメンの男性
自分の周りの環境はこんな感じだ。
状況から見るに俺はこの男の人の子供ということが推察できる。
つまりは、あれだ。
これって転生じゃね?という認識に至った訳だが。
あぁ。なんだか眠くなってきた。ということで今日はとりあえず眠るとしよう。
********
「...きて...起きて...」
誰かに呼ばれた気がした。聞き覚えの無い声だ。
気のせいか、夢か。どちらにしろ。あまり重要ではないな。
さて、おはよう諸君。と言いたいが外は何故か真っ暗だ。夜なのかな?
とりあえず、する事も無いからまた自己紹介でもするとしよう。
俺の前の名前は倉田光。高校二年生だ。それで冒頭で話した死んだ時の話をしよう。
端的に言えば刺殺だった。まあ刺した相手が通り魔とかだったならなんでもいいんだけど残念なことに見知った相手だった。
道明寺 琴音 世間的に言えば彼女だ。
まあ、彼女に刺されたとか言えば大体察しは付くと思うけど。
そう、彼女はヤンデレだった。
いや、俺も知らなかったんだよ。何故か琴音以外の女の子が話しかけて来ないし、話しかけようとするとむしろ逃げちゃうし、俺って嫌われてんのかなーって思ってたんだけどね?
まさか自分の彼女が周りの女の子を全員脅してるなんて思わないじゃないですか。
そんなこんなで刺されたのは一人で帰ってた時だった。
その日は琴音が頼まれ事があるとかで遅くなるらしかったんだけど、終わる時間になっても来なかったからメールだけ送って帰った。
少し歩いたら琴音が走って来たから終わったのかなー?と思って立ち止まってたら、追い付いた琴音が飛び込んできた。
いきなりだったから、どうしたんだって声かける前に脇腹に激痛が走った。
そっからはテンプレ通り。押し倒されて、何度も刺されて最後には頭にグサりと。
思い出すだけで寒気がしてきた。この話はやめよう。
そして気が付いたら女の人に抱えられていたと。
そんな感じで最後を迎えたんだった。
それにしてもあの女の人綺麗だったなー。やっぱりあの人が俺のお母さんなのかなー?
さて、目も覚めてきたので周囲の確認でもしよう。
見たところ、ベッドで寝てるみたいだ周りには誰も居ないんで寝かされたのかな?
そんな事を考えていると部屋の扉が開いた。
中に入って来たのは最初に見たあの老人だった。
その老人は俺を見下ろすと、
「ふん。まさかあの女が男を産むとはな。」
おもむろに黒いナイフを取り出した。
「まあ良い。消してしまえば何も問題なかろう」
いや、ちょっと待って何だそのナイフ
いやいやいや、待ってくれそのナイフで殺す気か?それ以外無いだろ!
ヤバいこのままでは...そうだ。ここは俺が赤ちゃんの可愛いさを最大限使った笑顔で!
「ふん!これから殺されるとも知らずに無邪気に笑いよって。これだから赤ん坊は嫌いなんじゃ」
逆効果だった...いや、言ってる場合じゃない!どうにかしないと、せっかく転生したのに生まれてすぐ死ぬとか酷いだろ!ヤバい!ナイフ振りかぶってる!叫ぶか?いや遅い。だからって赤ん坊の体じゃ!
「じゃあの。王家に生まれて来た自分を恨むが良い」
あ、終わったなコレ。
短い人生だったな。生まれて数日後に殺されるとか。二度目の人生もナイフで刺されて死ぬとかついてなさ過ぎだろ。そんなことを思い俺は目を閉じた。
これで終わりか。
本当に?
あぁ。だってどうにもならないだろ赤ん坊なんだし。
諦めちゃうの?
じゃあどうしろってんだよ。この状況から何が出来るんだよ
自分を守ればいいんだよ。
そんなこと。
できるよ。君ならね。
...わかったよ。どうすればいい。
思えばいい。
何をだよ。
死にたくないってさ。
俺は強く思った。
死にたくない。
死ねない。
こんな所で死ねない!
死にたくない!
「なっ!?何じゃこの光!聖術じゃと!?あり得ん!魔王の血統が聖術を使うなど!」
目を開くとナイフは自分を覆う光に防がれていた。
どうやら上手くいったみたいだね。
あ、あぁ。けどここからどうすんだよ。てかお前誰だよ。
えぇ~今頃聞くのそれ?まあ、その辺は後々に。それでどうするかって話は大丈夫だよ。もうすぐだから。
もうすぐってなんだよ。
そのすぐあとだった。
「くッ!あり得んぞ!聖術を使う悪魔など聞いたことがない!ぐぅ!やめんか!この小童!聖術で焼かれるなど!やめろ!やめろおおぉぉ...」
マジか何か勝手に燃え尽きたぞ。
そりゃあ、悪魔にとって聖術は天敵だからね。上位の悪魔なら尚更だよ。
じゃあなんで俺が使えるんだよ。
あはは。それじゃあ僕は寝るとするよ。また今度ね!
おい!話終わってねえぞ!
一体なんだったんだあの声...。
しばらくするとあの時の男性がやって来た。
「無事か!ルーシー!」
へぇ。俺ってルーシーって名前だったのか。
「なっ!この焼け跡は...ベルモントか?」
俺はコクリと頷いた。
「なんだと...お前がやったのか?」
うーん、素直に頷いた方がいいのかな。でも俺赤ん坊だからなぁ。よし、誤魔化そう。
と思い俺は寝た振りをしてみた。あ、ヤバい本当に眠い。まだ起きてそんなに経ってないと思うんだけどなぁ?
俺はそのまま、眠りに落ちた。
「あっ!ルーシー!寝るならちゃんとベッドの上で...」
...そこ気にするんだ...
誤字、脱字などがあれば修正していきます
若輩者ですが末永くお付き合いください。
次話もお楽しみに!