奇縁組、クラブ車の塗装す
自家用車のボディー外装を改造するべく、有志3人に集まってもらった。私をいれて4人。みな忙しい身だから今日中に塗装まではやってしまう予定だ。撥水樹脂を塗るのは塗装が乾いてからなので、それは後日となる。特にこの道に通じている塗装厨の小池は、普段は細かいことに頓着しない奴だが、車のことになると性格が変わる。頼りになる仲間だ。車体を磨いていると小さな傷が結構あることが分かる。これを放置しておくと、塗装の乗りが悪くなってしまうから要注意だ。研磨剤を塗りつけて傷をすべて削り潰していき、なめらかな車体を取り戻す作業が終わった。その頃にはもう昼過ぎだった。案外に時間がかかる。注文しておいたピザを食べながら、私たちは午後からの作業について話し合った。
「 天気予報によればこれから雨が降ってくる可能性があるって。塗装作業中に雨にさらすと良くない。今日はこれまでにしておかないか」
「降水確率たかだか40パーセントだろう、心配ない」
「塗装中に濡れれば余計な作業が増えるんだ。やめておいた方がいい」
結局、私たちは午後から塗装を始めた。
心配していた雨に降られることなく、3時間ほどで全体を目がくらむような真っ赤に塗り替える。空になったスプレー缶は二本、案外すくない。シンナーの鼻を突く香りが苦手な八代などは途中でダウンして、風に当たるよう皆にすすめられてもトイレにこもって力ない返事をするだけだった。八代にもみなにも今度また詫びと礼をしよう。日が翳り出した頃には車体もだいぶ乾いてきていた。うちの家には屋根付きの車庫というものがないので、万が一雨に降られないためにもテントを設営した。これで台風でも来ない限りだいじょうぶだろう。最後にみなで、私たちのフットサルクラブチームのエンブレムがはいったステッカーシールを貼って作業を終え、その足で飲みに行こうということになった。今日は皆んなに飲んでもらって、私は運転手をしよう。しかし八代がそのときこういった。
「車がつかえなきゃどうやって飲み屋まで行くんだ」
すっかり忘れていたが車はいま使えないのだ。みんなで顔を見合わせため息をついた。
「タクシーだな。四人なら電車より安くつく」
こうして私たちは呼び寄せたタクシーに乗り込んで夜の街へ繰り出した。運転手は顔やら服やらに赤い塗料をつけて、体からシンナーの臭いを立たせている中年の男四人が仲良く乗り込んでくるのに若干引いていた。シートに臭いがつくのを嫌ってか、運転手は不機嫌そうに終始むっつりとしていたが、仕方ないだろう。私たちは構わず年甲斐もなく盛り上がった。そも晩は飲みに飲んだ、私にはいい思い出だ。