#02『理系男の伏線技法』
突然の思いつきで始まったこのコラムなんですが、今回は理系の人が考える伏線の考え方と技術について書いていこうと思います。
前回の話で物語のプロットを作る際、理系のほうが向いてるんじゃないか、みたいな事に触れたのですが、これからこの部分をもっと掘り下げて考察していこうかと。
じゃあまず、なぜ理系の人のほうが向いていると考えるに至ったか? 理系脳で物を考える人はある規則に従って決まっていることを好む傾向があります。自分なんか特にそれが顕著で物の形一つ取っても、もしもそれが可能であれば、左右対称じゃないと気が済まないというか
二等辺三角形という言葉が好きというか、気功砲はやはり両手で構えて撃つべきだよなとか。
何を言ってるかわからない人はごめんなさい。
あくまで自分の考え方なので、皆さんにご理解頂けるか分かりませんが、ようするにプロットは『物語を規則に従って作るルール決め』であると考えます。となると当然、規則性を好む理系の方々には向いてるんじゃないかという話です。
そこで今回のテーマ『理系男の伏線技法』なんですが、このプロットに規則に従って計算された伏線を予めルールを決めて組み込んでしまうというのが自分のやり方です。
物語には起承転結があるのが基本、みたいなのは誰でもある程度理解できている事だと思います参考までに桃太郎を例にあげ、ざっくりとプロットを作ると――
謎の巨大桃があった。(原因不明)
斬ったら中からチート主人公誕生。(原因不明)
主人公、鬼討伐を決意。
婆さん達、主人公出撃の際、きびだんご(成分不明)を持たせる。
犬、猿、雉がこの団子を欲しがり討伐に参加。
襲撃された鬼は圧倒的戦力差で財産を投げ出し無条件降伏。
財宝を持って無事帰還、婆さんたち喜ぶ。
少しラノベ寄りに面白おかしくしましたが、この短いプロットの中にも伏線がしっかりあったりします。そう、物語の鍵を握る謎のアイテム【きびだんご】これが物語の展開を広げる決定打となり、結果一味を勝利に導きます。チート主人公なら単独突入で勝てた可能性も捨てきれませんが、そこは割愛。
この【鍵】を物語を作る際に予め決めておき、計算して組み込んでおくのです。それは必ずしも一つである必要はありませんし、その伏線がそこまで物語に重要では無い場合も含めて全部ルールの中に入れておくことで、物語は破錠しません。なぜ、そうなったかが、初めから決まっていて、作者はそれ知っているのですから。
読み手にとっては、初めて物語に登場する【きびだんご】が仲間を手に入れる重要アイテムであることは知りえません。【きびだんご】を持たせた婆さん自身もそういう目的で持たせてはいないので、物語中の人達にとってもただの食料程度の認識です。その事に誰も特に気にもとめず話を進めるのですが、次の場面でコレが役に立つ。この意外性と、不自然ではないそのキーアイテムの存在理由。
これが美しい伏線だと自分は考えます。
戦う漫画で最終決戦の際、『便利で強力なインチキ魔法兵器が懐から出てきて勝ちました』では納得できない人も多いでしょう。そうならない為にも必要な技術でありルールなのです。
そういう全て原因不明の謎仕様で話を進める物語もありますが、理系脳だとこれを面白いと考えるのはキツイんじゃないかと思います。
そういう訳で、理系の皆さんは是非、物語を考える際にプロットの中に細かく、規則正しく計算された伏線を組み込んで創作活動に励んでいただければと思います。