翌日
翌日。
俺は間藤高校に居た。
昨日結局バイトの面接はキャンセル。
代わりに、急遽間藤高校の用務員の募集に応募したのだ。そして、この高校の用務員になったわけだ。
そんな簡単に用務員の募集してるのかって?
甘い甘い。追加キャラや敵キャラ、あるいはライバルキャラが用務員や教員として学校に来るようになるのはよくある話。
とにかく学校が舞台の場合、転校生ばっかりってわけにも行かないし年齢の問題もあるから、新キャラは用務員や教員で入ってくる事が多々あるってことを知ってくれれば問題ない。
つまり、逆説的だがヒロインが来る時点で、その高校は人手不足でなくてはならないことになる。
昨日応募して今日からいきなり出勤というのも無茶に思えるかもしれないが、追加キャラなんかがいきなり出勤して主人公たちがびっくり、という展開にするためには必要なシステムなわけだ。
とりあえず昨日、同僚となる用務員のおじいさん――吉田さんに挨拶をして、仕事などについて聞いて、やることは大体わかっている。
花壇の手入れをしながら登校する生徒たちをチェックするとしよう。
実は、生徒たちの顔と名前を覚えたいと言って、生徒の写真付きリストをもらってある。罪悪感で胸が痛むが、ここまで来たらもう引き返せない。
生徒リストでの要注意人物は二人。
一人目は、例の少女、千本北大路六角。千本北大路が名字で、名前が六角だ。
名字もさることながら凄まじい名前だなオイ。ロッカクって男の名前でも無いぞ。西遊記の妖怪か。
読み通り、今日から転入してくる。
二人目は例の少年、綺堂晶。名前からしてもう主人公感バリバリだぜチクショウ。おれなんか雑太だぞ。
昨日、六角と遭遇させなかったから、多分大丈夫だとは思うが、当然のように転入先がコイツと同じ2年3組だからな。
注意しないと。……ってどうしようもないが。
とにかく、その二人の登校を確認するとしよう。まぁ、たいした意味はないんだが……。
……ん? 登校?
俺は何かとんでもない見落としをしている気がする……。
登校……朝……初対面……
「しまった!」
俺は自分の愚かさに怒りさえ覚えた。




