ふしぎなこと
「……さん。……さん」
声が……聞こえる……。女の声だ……。天国ってやつか……? いや、むしろそれを言ったら助かってるパターンだから、一応言っておいたら助かるかも……。
「ここは……てんご」
「雑太さん」
セリフかぶっちゃったよ。
「ん……」
目を開くと、ぼんやりと白いものが見えた。……だんだん視力が戻ってきたぞ。……人っぽい? 白い人……
あいつか。というか一人しかいねぇよ。
「あなたはまだ死ぬべきではありません」
「あんたは……」
一応尋ねたが、知っている。雪ヶ原蛍子だ。
だが、重要なのはそういうことじゃない。蛍子が「真っ白い髪」の少女だという事。
六角と綺堂と同じクラスで白い髪、当然キャラ的に秘密があるに決まっている。
「私は巫女……世界の壁を司る者……」
……巫女ね。まぁ、そんなこったろうとは思ってたけど。
世界の壁を司る、というのは縛力絡みだろうが……。
「……で、その巫女さんとやらが何の用かな?」
まぁ、用もないのに現れないわな。
「……はい。あなたを助けたのは他でもありません。あなたは討練師の組織とも関係ない様子……あなたになら託せるでしょう……」
「託せる?」
「あなたに鍵をお渡しします」
鍵? もしや、これが例の探し物か。とすると、戦局を左右するほどのものということになる。
「これであの子を助けてあげて下さい」
小さな手が俺の胸に触れてきた。冷たっ! いや……だんだんあったかくなってきたぞ? そのあったかさが、俺の中に入って来る。
そんで俺の中でカタマリになっていく感覚がある。
「その鍵さえあれば、相手の縛力をコピーできるはずです。……ただし、一度にコピーできるのは一つ。その代わり、例え勝虎級の技であろうと……一切の縛力の消費なしに……すなわち無限に使用できます……。
――さぁ、お行きなさい」




