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無理やり主人公  作者: がっかり亭
31/39

逆転

『行くぜ……この俺の、渾身の一撃』

 ザンバスターは拳を握り、力を溜める。

「や、やめ……」

 くそっ、この流れじゃ「冥土の土産に教えてくれ」パターンを使って時間をかせぐこともできねぇ!

 ザンバスターが拳を振りかぶり――

 死ぬ、と思った瞬間、

『ぐっ……!』

 ザンバスターは胸を押さえて呻いた。

 何だ? 何が起きた?

『くそっ……なめすぎたか……っ』

 なめすぎた?

 俺じゃないとするとそれは……

「大丈夫か!」

 教室に六角が飛び込んできた。

 勝ったんだな! やっほい! 助かったぜ!

 六角は、森で見た時の弱々しさは消えていて、ボロボロながら凛とした空気を纏っていた。それでも、普段の六角に比べれば、どこか覇気がない。本調子とはいかないようだ。

「貴様の半身は倒したぞ。……覚悟しろ」

 六角は、初めてザンバスターと対峙した時と同じように、刀を突き付けた。

『……ぐ』

 ザンバスターはたじろぎ、それから急に憑物が落ちたような顔になった。

 そして、からからと笑う。

 その様子に、六角はぎょっとして大きく眼を開いた。

『負けだ負けだ。俺の負けだ』

 ザンバスターは極めて爽やかに言った。

『俺の未熟さを思い知らされたぜ。今回は俺の負けだが、次は必ず勝つ。それまで決着はお預けだっ!』

「ち、ちょっと待て、何を勝手に……」

 六角の抗議など聞かず、ザンバスターはひゅん、とかき消えた。

 ちなみにこの瞬間移動に理屈はない。今死ぬべきでない敵は、誰でも使える能力(お約束)で、ある種のご都合主義の上に立った能力だ。そのため、味方になると全然使わなくなったりする。

 それはともかく、ザンバスターが消え、縛鎖空間が消えていく。

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