逆転
『行くぜ……この俺の、渾身の一撃』
ザンバスターは拳を握り、力を溜める。
「や、やめ……」
くそっ、この流れじゃ「冥土の土産に教えてくれ」パターンを使って時間をかせぐこともできねぇ!
ザンバスターが拳を振りかぶり――
死ぬ、と思った瞬間、
『ぐっ……!』
ザンバスターは胸を押さえて呻いた。
何だ? 何が起きた?
『くそっ……なめすぎたか……っ』
なめすぎた?
俺じゃないとするとそれは……
「大丈夫か!」
教室に六角が飛び込んできた。
勝ったんだな! やっほい! 助かったぜ!
六角は、森で見た時の弱々しさは消えていて、ボロボロながら凛とした空気を纏っていた。それでも、普段の六角に比べれば、どこか覇気がない。本調子とはいかないようだ。
「貴様の半身は倒したぞ。……覚悟しろ」
六角は、初めてザンバスターと対峙した時と同じように、刀を突き付けた。
『……ぐ』
ザンバスターはたじろぎ、それから急に憑物が落ちたような顔になった。
そして、からからと笑う。
その様子に、六角はぎょっとして大きく眼を開いた。
『負けだ負けだ。俺の負けだ』
ザンバスターは極めて爽やかに言った。
『俺の未熟さを思い知らされたぜ。今回は俺の負けだが、次は必ず勝つ。それまで決着はお預けだっ!』
「ち、ちょっと待て、何を勝手に……」
六角の抗議など聞かず、ザンバスターはひゅん、とかき消えた。
ちなみにこの瞬間移動に理屈はない。今死ぬべきでない敵は、誰でも使える能力(お約束)で、ある種のご都合主義の上に立った能力だ。そのため、味方になると全然使わなくなったりする。
それはともかく、ザンバスターが消え、縛鎖空間が消えていく。




