絶体絶命
俺は、カーテンの中に隠れた。
時間があれば天井の板外して天井裏にでも行きたいが、消化器の煙はそう長くもたない。
『くそう、どこに行きやがった?』
ザンバスターが俺を探してこの教室まで入ってきたようだ。
『ん? それで隠れたつもりか?』
声は俺に向いていない。
案の定ロッカーの方に向けて言ってるみたいだ。
『出てきやがれーっ!』
鉄板が折れ曲がる音がした。ロッカーのドアをぶち破ったんだろう。
『……あ?』
んで間抜けな声を出した。
『何だこりゃあ! ちきしょう謀りやがったなぁっ!』
謀るってほどのことでもないんだが。
まぁ、とにかくすっごい怒ってるな。
さて、あれだけ怒ってりゃ油断しまくりだろう。
その隙に、俺はザンバスターの背後に回り込んだ。
そしてその背中に人差し指を突きつけ、
「バン」
と言う。
『なにっ……!?』
慌てて振り向くザンバスター。
「俺がその気ならお前は死んでるぜ」
『う……うぐ……』
ザンバスターはぐうの音も出ないようだ。
よし! やったか?
「今回は見逃してやる」
つうか見逃してくれ。
『……何だと』
「実力に差がありすぎる」
嘘は言ってない。
「鍛えなおしてからまたかかってこい。だいいち半分の力で勝つつもりだったとは――俺をなめるな」
『……う……なぜこの技の秘密がわかった……?』
「見りゃわかる」
漫画とかをな。
『く……く……』
「もうやめとけ。こんな所でくたばったらもう戦えないんだぜ? いいのか? つまんねぇそ?」
あんまりプライドを傷つけて自棄のやんぱち起こされても困る。
何とかうまいこと説得しないと……。
「惜しいな」
『……何がだ』
「お前はまだ自分の能力を使いこなせてない。もしお前が自分の能力をフルに使えていたなら、俺は手も足も出なかっただろう」
『……なに?』
ザンバスターはきょとんとした。
「ヒントは「記憶」だ。残留思念を覗き見るだけで満足してちゃあ先には進めないぜ」
確証はなんもない俺の勝手な想像だが、自信満々に言う。
『く、くそ……だが、お前の言う通り……かもしれない……』
お?
ひっかかってくれたか?
『……いや、だが、それでも一度戦ってみてぇ……俺の力を、試してみてぇ』
ちょ……ちょ待てよ!
それは止めとけ!
死ぬぞ!
俺が!




