危機
とりあえず一旦、二人の戦いに目を戻してみるとしよう。
『どうした? この程度じゃあないんだろ? 出せよ、奥の手』
「何?」
相変わらず激しい戦いを繰り広げながら、二人は言葉を交わしていた。
『その刀の力だ。全力のあんたと戦わなきゃ意味がねぇ』
「……いいだろう、ならば受けるがいいっ!」
六角は後ろに大きく飛び、間合いを取った。
「……天裂く雷、見えざる銀嶺、降り注ぐ流星――断て! 中窪霊戮錬刀!」
お馴染みのわけのわからん呪文に合わせ、刀身が淡く輝き、ぱちぱちと静電気が爆ぜる。
『そうだ。いいぞっ! 全力を味あわせろっ!』
歓喜の表情で、ザンバスターが飛びかかっていく。
「つぁっ!」
六角が刀を振った。
だが、まだ間合いが遠い。これではザンバスターに当たらない。
って、わざわざ意味のないことをするわけがない。
振った刀から、目に見える斬撃が放たれたのだ。
衝撃波に似た半月状のそれは、一直線にザンバスターに向かう。
ザンバスターはかわそうともしない。
その斬撃は、ザンバスターの胸に命中、同時にそこから雷が落ちたかのように雷撃が弾けた。その斬撃は雷の塊だったのだ。
『ヒャッホーウ!』
それでもザンバスターはピンピンしていた。
口から煙を吐いていたが、大してダメージは受けちゃいない。
『やっぱり初見の技は受けてみねぇとな』
「その軽口、止めてくれるっ!」
六角は一気にザンバスターの懐へ飛び込む。
そして真下から斬り上げた。
その刀身はいまだに淡く輝き、電撃を帯びているのは明らかだったが、ザンバスターはかまわずそれを手甲で受け止めた。
当然、通電するがザンバスターはお構いなしに蹴りを繰り出し、六角を吹っ飛ばした。
「くうっ……!」
吹っ飛ばされた六角は、地面に激突する寸前になんとか態勢を立て直し、着地した。
だが、かなり息を切らしている。
『おいおい、どうしたんだ? 楽しませてくれよ。もっともっともっと!』
ザンバスターは叫びながら飛びかかる。
「ぐふっ!」
六角が再び吹っ飛ばされ、今度は木に叩きつけられた。
あまりの早業に俺にはもう全然見えなかった。
こいつ……強い! どこが倍雀級だ。朽狗級はあるんじゃねぇか。
いや、バトルバカは階級なんか関係なく強い。最終的には最強クラスにまで強くなるキャラの類型だ。
間違いなく本来は綺堂の力なしには勝てない敵だ。
場合によってはライバルと認める対象は綺堂かもしれない。
そんなことはどうでもいい。
それよりもどうやってこの場を切り抜けるかだ。もう、殺さないように勝つとかそんなこと言ってる場合じゃない。
どうする?
どうする?
どうする?




