表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無理やり主人公  作者: がっかり亭
22/39

ベタ

「うおあああああああああああああああああああっ!?」

 実際は1分にも満たないのかもしれないが、永遠に続くかと思った。

 カップが止まるや否や俺はトイレへGO。胃の中身を一気に戻し、それどころか胃液が鼻から出た。ヘリコバクターピロリ菌すら出し尽くしたような気がする。

 トイレから出てくると、近くの広場から、勝ち誇ったような顔で六角が歩み寄ってきた。

「どうだった?」

「このやろう……コースターだめで、何でアレが大丈夫なんだよ……」

「三半規管には自信があるんだ」

 俺の恨み言にも、涼しい顔だ。

「なめてもらっては困る。私は戦士だぞ?」

「……そうかい。じゃあアレも大丈夫だよな?」

「へ?」

 俺が指差したのは、ブラックホール屋敷。おばけをエイリアンに代えたおばけ屋敷だ。得体の知れない触手が幾重にも巻きつき、牙なのか角なのかわからない突起が不規則に生え、くすんだビー玉のような目と思しき球体が乱雑に埋まる外観。

 並みのお化け屋敷より怖い。建物を見ただけで泣き出す子どももいるくらいだ。

「……ふ、ふん。いつも怪物とたたた、戦っている私が、あんなもの……」

 明らかに声が上擦っている。やはり怖いようだ。

「よぅし……じゃあ行こうか」

 ここだけの話、実は俺もああいうのは苦手だ。テレビの心霊特集とかモンスターパニック映画とか見るくせに、その後消したテレビの映りこみとかカーテンの隙間が気になってしょうがなくなって電気つけたまま寝るタイプだ。

 あれ? マントピエロの時に怖がりなのはわかってるって?

だがここで退くわけにはいかんのだ。後は野となれ山となれ。

 俺も六角も、相手に怯えているのを悟られないように(六角のはバレバレだけど)平静を装ってブラックホール屋敷に入る。

 その後はよく覚えていない。

 俺も六角も入ってすぐのエイリアンのオブジェを見てメッキが剥がれ、絶叫しながら我先にと出口に向かって全力で走ったからだ。眼をつむっていたかもしれない。とにかく走った。一秒でもここから早く逃げるために。

 覚えてるのは、出てすぐ見た六角の顔だ。涙を流し、それどころか美少女キャラにもかかわらず鼻水すら流していた。

 しかし、それは俺も同様だったようだ。

 結局、お互いの顔を見て笑ってしまった。我ながらベタだなぁとは思いつつも、悪くはないとも思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ