幕間
薄暗い次元の狭間。
そこにいくつかの人影があった。
『彼の地に送り込んだ部下が倒された』
青年の声が響く。闇の中で反響し、彼がどこから話しかけているのかはわからない。
『朽狗級がやられるなんて久しぶりじゃん。あそこにそんな強力な討練師なんていたっけ?』
変わって少年の声が響く。
『……面白くなってきたじゃない。二十四の均衡が破れるなんてね』
また別の声が響く。女性の声だ。
『相手は不明。ただ残留縛力から判断して、相手の能力は肉体強化程度だろう』
青年が言う。
『その程度に仮にも朽狗級が敗れたと? まさかあれと接触したのではあるまいな?』
更に別の声が重く響き渡る。青年よりもっと年上の男の声だった。
『バカねぇ。それなら向こうも十二聖剣が出張って来てるはず。あっちはわからないからこそ適当に下っ端をばらまいたんでしょ?』
『ツィレードの部下、油断しすぎー。キャハハ』
少年が笑う。
『もう一度私の部下を送り込む』
『え~? いいかげん僕出たいよ~。じっとしてるのつまんないしさ~』
『部下の不始末は上司の責。ここはツィレードの手腕を見るとしようではないか』
男が少年に言った。少年もしぶしぶながらも従う。
『……原初のゲームより幾星霜――停滞せし盤上、切り札はどちらの手に?』
『時は来た。後は賽を投げるだけ。全てを知るはルビコンの流れのみ』
青年が誰にというわけでもなく、言った。