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私はアイテムが拾えません

 さて、迅速に引きこもるためにはまず、やらなければならないことがある。


 何をするにせよ、資金は必要だ。


 仮想世界なので空腹で死にはしない。そのため、食費はいらないが、宿の一室を借りて一日中ゴロゴロするにはある程度のお金がいる。


 よって、今から私は資金を調達しに行くことにする。





 街を出てすぐに広大な草原フィールドが広がっていた。


 草を踏みしめるリアルな感触を足の裏に感じながら、私は辺りを見回し、目標を探す。


 私が最初に狙うは、序盤に出現する敵モンスターである。

 普通なら最初は薬草などを採集するだろうが、その手の物は探すのに少し手間がかかるし、なにより売ってもさした金にならない。


 やはりここは、こちらが見つけずとも勝手に近づいてきてくれる、便利なモンスター(カモ)を倒してドロップしたアイテムを売って稼いだ方が手っ取り早い。


 私は歩いているとあまり時間が経たずして、モンスターがエンカウントした。


 敵はお馴染みの雑魚であるスライム。

 全体の色はピンクがかった赤。表面は艶々でプルンプルン。女子としてある種、嫉妬を覚える。


 私は鞘から抜いた細身の片手剣を構える。

 始めからプレイヤーは片手剣と弓を持っていて、どちらでも自由に装備することが出来る。

 デスゲームとなった今では、命の危険を減らすため大抵の者は弓を選択して使っていくだろうが、私は片手剣を選んだ。


 理由は一つ。カッコいいからである。


 マンガや小説によくある俺には必要無いんだと、断固として盾を使わず、フリーハンドを手持ちぶさたにしている、余裕ぶってる感が実にたまらない。


 ソークール。

 ベリークールである。


 とりあえず、私は当分片手剣一本でいこうと思う。


 ここいらのモンスターは、テロリストが設定をいじっていなければ、初心者にも易しい難易度のはずなので、問題は無いだろう。

 VRMMOは仮とはいえ、自分の体を動かしているのだ。最初からぴょんぴょん飛び跳ねたり、びゅんびゅん走ったりする敵モンスターを相手にしなければならない鬼畜ゲーなど誰得だという話だ。そんなもの軍人しかやらないだろう。よって、今目の前にいるスライムも該当するが、最初のモンスターは大体ぬるぬる動く。


 故に問題無いのである。更には初めにポーションを五個支給されている。

 これならいくらなんでも、剣を振ったことは無いのは勿論、ケンカの経験が無い私でも、ぬるぬる動くスライムに殺されることは無い。油断していたとしても万に一つもありえない。

 仮にいたらそいつは勇者だ。天国で皆から誉め称えられるだろう。私は引くが。


 そうこう考えていると、スライムが私めがけてぬるぬると突進してきた。


 突進してくるスライムを視界に収めながら、私は冷静に思考を働かせる。


 私は余裕たっぷりに避けると、背後から片手剣を叩き込んだ。

 剣から伝わってくるスライムの切れる感触は、少し硬いゼリーを切ったような感触で、何というか気持ちいい。


  続けてもう一度。うん、気持ちいい。


 もう一度。気持ちいい。癖になる。


 そこで私は攻撃を中断して、スライムから離れる。


 危ない危ない。もう少しで何か目覚めそうだった。

 自重せねば。


 私が葛藤していると、突然スライムがぺたんと体が潰れ地面に広がった。


 あれ? もしかして倒した?


 そう思い、近づこうとしたその時、


 ぴょーんとスライムが地面から跳ねた。


 え?


 飛び上がったスライムは私にぶつかってきた。


「きゃあっ!」


 油断していたため、私はスライムの攻撃をモロに喰らってしまった。自分でも驚いたほど可愛らしい悲鳴が漏れてしまう。


 HPが減った。

 すぐに距離を取る。


 やばい。完全に油断していた。

 スライムのあの行為は飛びかかってくるための予備動作だったようだ。

 危ない。次から気を付けねば。危うく勇者第一号になるところだった。


 しかし、やるなスライム。まさかぬるぬるからぴょーんとは思いもよらなかった。どうやら私はスライムを甘く見ていたようだ。


 私はスライムが次の動き入る前に攻撃を数回加えた。


 すると、スライムはしぼむようにして、地面に潰れると、溶けて消えた。


【経験値を獲得しました】


【アイテムがドロップしました】


 目の前にメッセージが流れる。

 どうやら倒したようだ。


 経験値は微々たるものだった。

 序盤なので当たり前なのだが。


 私はドロップしたアイテムに視線を向ける。


 さて、どんなアイテムなのだろうか? どの程度で売れるのだろうか?


 私は期待に胸膨らませながら、目の前に落ちているアイテムに触れた。


【アイテムを取得することが出来ませんでした】


 ……あれ?


 もう一度触れる。


【アイテムを取得することが出来ませんでした】


 再度流れるメッセージ。


 ……あら?


 もう一度触れてみる。


【アイテムを取得することが出来ませんでした】


 ……おろ?


 もう一度。


【アイテムを取得することが出来ませんでした】


 ……


【アイテムを取得することが出来ませんでした】


【アイテムを取得することが出来ませんでした】


【アイテムを取得することが出来ませんでした】


【アイテムを取得することが出来ませんでした】


【アイテムを取得することが出来ませんでした】


【アイテムを取得することが出来ませんでした】


【アイテムを取得することが出来ませんでした】


【アイテムを取得すろことが出来ませんでした】


 ……




 ふ、


「ざけんなああああああッ!!」


 私は怒りの声と共に、ドロップアイテムを踏み潰した。



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