第六章……破綻
放課後、俺の計画通り健人は國藤から暴力を受け、屋上のフェンスの外側に立っていた。俺が来たとき、健人はこちらを振り返った。
俺は、追い詰められた健人にこう言ったんだ。
「お前が死ぬことはない」
健人は無表情のまま、こちらを見ていたがやがて顔を正面に戻した。俺の声が聞こえていないのだろうか。
「死ぬな」
今度は力強く言った。健人の反応はなかった。
「必ずお前は救われる」
俺の言葉を、健人は嘲笑った。俺が嘲笑いたいぐらいだよ。俺に、利用されているとも気づかず、自殺しようとしているのだからな。
「嘘だよ、そんなの」
ようやく、健人は口を開いた。今にも消え入りそうな声だった。耳を澄まさないと聞こえないような声だ。しかし、俺には十分すぎるぐらい聞こえていた。
「お前が死ぬことなんかない」
俺は一呼吸間を置いて、そしていよいよ言った。
「あいつが死ねばいい」
健人は、ようやくこちらに振り返った。表情は、さきほどと一変しひどく歪んでいた。恐怖ゆえに、だろうか。
「あいつの殺害計画を、立てようぜ」
笑みを浮かべて、俺は言った。健人の目に、少しの希望が宿った。
やつはこの時、俺の計画に賛同したんだ。
フェンスを乗り越えて俺の元に来て、俺は隠し持っていたノートを取り出しペンで、思いつくままに殺害計画を綴った。健人も、いろいろな殺害計画を提案した。
一時間以上、屋上で殺害計画を考えていたと思う。
俺は内心、有頂天だった。人を殺すことが出来る、そう思うと胸が高鳴った。
しかし健人は、俺を裏切った。
「これ、いいね」
俺は一つの殺害経過に赤丸をつけて、言った。鈍器で殴り殺す、というものだった。
それ以外は、俺の中であまりイメージの浮かばない殺害計画ばかりだった。常識を逸しているというか。
この程度であれば簡単だし、上手くやれば警察には捕まらない。俺は頭の中で、いろいろとシミュレーションを展開していたのだ。
「あいつを殺せば、お前は自由だ」
俺の言った言葉に、健人は目を輝かせた。自由、という単語に魅力を感じたに違いない。
「やるのか、やらないのか」
健人は、何か考え込んでいる様子だった。
まあ、それは仕方のないことだろう。人を殺すことは、軽い気持ちで出来るものではない。俺は、健人が決断するのをじっと待った。
「どうする」
たまらず、俺は言ってしまった。早く決めて欲しかったからだ。
この時、健人と目が合った。
一瞬、健人の目に怯えた色が見えた。
そしてやつは、俺にこう言ったんだ。
「いいよ、もう」
さきほどと一変し、冷め切った口調だった。
奈落の底に突き落とされた気持ちに陥ったね、俺は。
悔しくて、悔しくて……俺は立ち上がって、怒鳴り散らした。
「いいのかよ、それでも! このまま卒業するまで、あいつからいじめを受け続けるのか!」
俺の言葉に、健人は頷いた。
この瞬間、俺の計画が破綻した。




