第二章……方法
俺は、上手く健人と接触することが出来た。容易いものだった。あいつ、いつも一人でいたから、俺が近づいて話しかけるとひどく嬉しそうな表情を浮かべていたなあ。
「俺たち、友達だよな」
一日の会話に、必ずその言葉を健人は入れてくる。まあ、適当に頷いておけばやり過ごせるから、容易いものだ。ちょっと――っていうか、かなり面倒くさいけど。
これも全て、俺の生きがいのため――そう言い聞かせれば、簡単に耐えることも出来たし、表面上仲良くさえしておけば、健人は俺にとって従順な手下であり続けるのだ。俺が頼みごとをすれば、絶対に断らない。何故なら、俺を失うのが怖いから。
健人は、ずっと友達が欲しかったのだ。けど、あいつは内気だし、付き合いも悪いから作りたくても友達を作ることは出来なかった。俺が声をかけなければ、やつはいつも一人だった。
だから、俺の計画にも付き合ってくれると、確信があった。
共犯になってくれる――と。
が、その前に俺はあることを調べなくてはならなかった。それは、健人と國藤の関係についてだった。俺が思うに、國藤は健人に相当な恨みを抱いているはずであった。
國藤は、健人に蹴りを食らわせながら興味深いことを言っていた。
飛んで火にいる夏の虫とは、このことをいうのだな――。
覚えているか、俺のこと――。
そして、二年前とも言っていた。それはつまり、二年前に國藤と健人の間に何かがあった、ということになる。それが何なのかを、俺は探らなくてはいけない。
しかし、本人たちから聞くことはさすがにまずいと、俺は判断した。健人が、俺に不信感でも抱くものなら、計画は破綻してしまう。俺の生きがいは、達成することも出来ぬまま終わってしまうことになる。
國藤にもまた、同じことが言えた。國藤に直接聞いたとすれば、やつは俺に疑惑の念を抱き、そしてこう考えるだろう。健人が俺に、二年前のことを話したのだろうと。
そのような事態は、絶対に避けたかった。
なら、どうやって調べようか。俺が考えた方法は、二つだ。
まず一つ目は、職員室へ侵入して國藤の経歴を調べることだった。
しかしその作戦は、非常にリスクが伴われるものであった。夜学校へ忍び込み、誰もいない職員室へと入って、國藤の履歴書を探し出しコピーする――時間もかかるだろうし、警備員に見つかればアウトだ。
色々と不安要素が多い方法であったが、二つ目の方法が失敗したときのことを想定し、保留にした。
で、その二つ目の方法はというと。
健人の家にお邪魔する、というものだった。
この方法は、伴われるリスクも少なくてすむし、一つ目の方法よりも手間はかからずに知ることだってできる。なかなか利巧な方法だった。
俺が家にお邪魔していいかと聞くと、健人は喜んで頷いてくれた。
「もちろんだよ。いつがいい?」
健人の声は、心なしかいつもよりトーンが上がっている気がした。にこにこしながら、健人はいつ家に来るのかと、しつこく聞いてきた。
これも全て、想定内だ。