4.最強チート能力者の、止められない情熱。R15の境界線と、空気の読めない義父(予定)
廠が婿取り試合で優勝した翌日。
張世平の屋敷の裏庭には、ずらりと私兵たちが並んでいた。
筋骨隆々の男、槍の名手、元兵士、弓の達人――
どいつもこいつも、そこそこ強そうだ。
張世平が腕を組んで言う。
「こやつらは、わしの私兵じゃ。婿になるなら、こやつらをまとめて率いてもらわねばならん」
(……いや、婿の仕事の範囲、広すぎだろ)
廠はため息をついた。
(まあ、異形と戦うには戦力が必要だし……ここで一気に従わせるか)
張世平が声を張り上げた。
「おい、お前ら! 廠殿の腕前を見せてもらうぞ!全員でかかっていけ!」
私兵たちがざわつく。
「全員で!? あの若造ひとりに!?」
「さすがに無茶だろ……」
「いや、昨日の試合、見ただろ。あれは普通じゃねぇ」
廠は木刀を肩に担ぎ、軽く首を回した。
「……来いよ。まとめて相手してやる」
その一言で、私兵たちの顔が引き締まる。
「行くぞ!!」
十数人の私兵が一斉に飛びかかった。
その瞬間――世界が止まった。
風が止まり、砂埃が宙で固まる。
私兵たちの動きも、すべて静止した。
(……よし)
廠はゆっくりと歩き、一人ひとりの背後に回り、木刀を軽く首筋に当てていく。
(これで十人……十一人……)
最後の一人に木刀を添えたところで、廠は時間を動かした。
「……え?」
「う、動けねぇ……!」
「な、なんで背後に……!?」
私兵たちは全員、木刀を首に当てられた状態で固まった。
廠は木刀を下ろし、淡々と言った。
「これで分かっただろ。俺に従うなら、命は守る。逆らうなら……まあ、今の続きだ」
私兵たちは一斉に地面に膝をついた。
「廠様に従います!!」
「命を預けます!!」
「ついていきます!!」
張世平が目を丸くして叫ぶ。
「お、おお……! こりゃ本物じゃ……!」
廠は肩をすくめた。
(……作者、チート盛りすぎだろ)
【主人公補正ってやつ】
(だから出てくんなって)
そのとき、屋敷の奥から織が姿を見せた。
昨日と同じ白い衣、優しい瞳。
「廠…さすがね」
廠は照れくさそうに頭をかいた。
「まあな。異形と戦うには、これくらい必要だろ」
織はそっと廠の手を握った。
「はい。これで……また一緒に戦えますね」
廠は織の手を握り返した。
(……よし。今度こそ、全部終わらせる)
風が吹き、二人の衣を揺らした。
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二人は引き寄せられるように、自然と屋敷の奥、織の私室へと歩を進める。
重厚な木の扉が閉まり、外の喧騒が完全に遮断されると、部屋の中には香炉から漂う淡い花の香りと、二人の鼓動だけが響いている。
織は、廠の胸に顔を埋める。
廠はその細い肩を抱き寄せ、耳元で低く囁きました。
「…久しぶり、だね」
「…うん」
廠は織の腰を強く引き寄せ、深い口づけを交わした。
解かれた白い衣が床に滑り落ち、月明かりが二人の肌を淡く照らし出している。
この瞬間の熱量だけは、一秒たりとも止めたくないと願っていた。
重なり合う鼓動、溢れる吐息、そして肌に刻まれる確かな悦び。
「織……」
「ああ……廠……っ」
激しく、それでいて慈しむような情事が、始まった。
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廠は、彼女の吸い付くような肌の熱を掌で確かめる。
普段、能力を使えば世界は冷たく静止し、自分だけがその中を孤独に歩くことになる。
だが今、目の前で乱れる織の呼吸、潤んだ瞳、そして自分の名を呼ぶ掠れた声は、何よりも生々しく、動いている。
(……止めてたまるか)
この熱を、この鼓動を。一瞬たりとも零したくない。
廠は織の細い腰を抱き寄せ、その首筋に顔を埋めた。織の指が廠の背中に食い込み、微かな震えが伝わってくる。
「廠…もっと、あなたを感じたいの…」
織の切実な願いに応えるように、廠は彼女を寝台へと誘った。
重なり合った肌から伝わる拍動が、二人の境界を曖昧にしていく。
織の白い肌が月光を弾き、汗に濡れて真珠のような光沢を帯びていた。
廠が彼女の身体を深く、優しく愛撫するたび、織は弓なりに背を逸らし、甘い吐息を漏らす。
その声が、静まり返った屋敷の奥へと溶けていった。
「織……俺もお前を、離したくない」
織の身体に触れながら、廠は脳裏の声に抵抗する。
互いの体温が限界まで高まり、視界が白く爆ぜるような感覚。
廠は、自分の制御を超えて加速する鼓動を心地よく感じていた。時を操る男が、初めて「時の流れ」に身を任せ、ただ一人の女と深く、深く溶け合っていく。
外では夜風が竹林を揺らし、遠くで夜鳥が鳴いていたが、その部屋の中だけは、二人だけの濃密な熱気に支配されていた。
やがて訪れた絶頂の余韻の中で、二人は固く抱き合ったまま、静かに夜を深めていった。
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【お前、ほんとにエッチなこと好きだよな】
(だ…黙れって…)
織の身体に触れながら、廠は脳裏の声に抵抗する。
【アカウントがBANされたら、お前のせいだかんな】
(ちゃんと、R15範囲内だろ)
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翌朝。
障子の隙間から差し込む朝日が、絡み合った二人の腕を照らす。
廠がゆっくりと目を覚ますと、すぐ隣で織が安らかな寝顔を見せていた。
(……悪くない朝だな)
そう思った瞬間。
廊下から、ドスドスと遠慮のない足音が近づいてくる。
「おーい! 廠殿、織! いつまで寝ておる! 朝餉の支度ができておるぞ!」
張世平の豪快な声が響き、廠は思わず「時間を止めようか」と一瞬本気で悩む。
「……あの親父、空気読めってんだよ」
廠は苦笑しながら、隣で赤くなって目を覚ました織の額に、軽く口づけを落とした。




