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今度は三国志の真っ只中にいます  作者: 水原伊織


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3/22

3.魂が覚えていたから、私はあなたを探しに来た

織は、ある日、街で廠の姿を見た瞬間、胸が震えた。


(……廠……)


未来で再会した夕日の光。

三国の戦場で散った仲間たち。


そして、廠と過ごしたすべての時間。

その記憶が、鮮明に蘇る。


(また……会えた)


だが、簡単に会いに行ける立場ではなかった。

この世界では、張世平の娘として、常にお付の者がつきまとい、勝手に街へ出ることも許されない。


(どうすれば……廠に会えるだろう?)


悩んだ末、織は父の部屋を訪れた。


「お父さま。お願いがあります」


張世平は驚いた顔をした。


「なんじゃ、急に」


織は深く頭を下げた。


「婿取りの試合を開いてください。勝ち残った者を…私の夫に」


張世平は目を丸くした。

「お、お前がそんなことを言うとは……!」


織は静かに微笑んだ。


(廠なら……必ず勝ち上がる)

未来で、廠は自分を見つけてくれた。

だから今回も必ず。


----


廠と織は、張世平の屋敷の奥にある小さな離れに通された。

婿取り試合の喧騒が遠ざかり、ようやく二人きりになれた。


織は廠の顔を見るなり、ふっと微笑んだ。

「……また、戻ってきちゃったね」


廠は苦笑しながら頭をかいた。

「三国時代か…、未来であんなにいい感じだったのにさ」


織はくすりと笑った。


「でも、これが、タイムリープって言うんでしょう?廠が最初に劉禅としてあの時代にもこうやって来たのね」

「そう。未来でミナになったのも、多分織のタイムリープだと思う」


織はそっと廠の手を握った。

その温もりは、未来で触れたときとまったく同じだった。


「廠。私…全部、覚えているよ」


未来でのミナとしての記憶。

三国での、あの戦場の日々。

そして、廠と共に過ごしたすべて。


廠は息を呑んだ。

「…やっぱりか。俺だけじゃなかったんだな」


織は小さく頷いた。

「はい。だから…街で廠を見かけたとき、胸が震えた。でも、お付の者がいて、勝手に会いに行くことはできなくて」


織は少し恥ずかしそうに視線を落とした。

「だから…お父さまにお願いしたのよ、“婿取りの試合を開いてください”って」


廠は思わず吹き出した。

「そんな理由で、あんな大騒ぎを…?」

「だって、廠なら必ず勝ち上がるって、分かってたから」


織はまっすぐに廠を見つめた。

「あの未来で、見つけてくれたから…今回も、きっと……」


廠は胸の奥が熱くなるのを感じた。


そのとき、二人の胸の奥で、同時に何かが軋んだ。

(……まただ)

(……この声……)


二人は顔を見合わせた。


【「異形を倒せ」


廠と織、二人の魂に同時に響く声。


織は静かに息を吸った。

「…廠。私にも聞こえました。“異形を倒せ”って」


廠は拳を握った。

「やっぱり…織もか」


織は頷いた。

「はい。だから……また一緒に戦えるんですね」


廠は織の手を握り返した。

「当たり前だろ。三つの時代越えて、やっと会えたんだ。今度こそ、全部終わらせる」


織は微笑んだ。

「ええ。廠と一緒なら、どこへでも」


夕日が差し込み、二人の影が重なった。

その影は、いつの時代でも、ずっと寄り添っていた。

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