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今度は三国志の真っ只中にいます  作者: 水原伊織


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24.神軍と呂布、竜を討ち、董卓、遷都を決断す

神軍は、紅陽を先頭に騎馬隊を率い、竜へ向かって一直線に突撃した。

その疾走は、恐怖に凍りついた連合軍の兵たちには、まるで風そのものが駆け抜けたように見えた。


竜の巨体が咆哮し、黒い瘴気を吐き散らす。

だが紅陽は怯まず、馬を操りながら刃を閃かせ、竜の鱗に火花を散らす。


その姿を見た呂布は、目を細めた。


「……ほう。」


次の瞬間、赤兎馬が地を蹴り、呂布もまた竜へ向かって突撃した。

方天戟が唸りを上げ、竜の脚を深々と裂く。


紅陽の武に、呂布も負けじと武を振るう。

二人の動きは、まるで競い合うように、しかし互いを補うように交差した。


竜の足元で、二つの影が並び立つ。


呂布が笑う。

「ほう、貴様…面白いな。異形が怖くないのか?」


紅陽は方天戟を構えたまま、短く返す。

「お前こそ、呂布。」


呂布は鼻で笑い、方天戟を軽く振る。

「ふん、方天戟まで使うとは。貴様、名は?」


紅陽は竜の動きを見据えたまま答えた。

「わが名は紅陽。――神の赤い牙だ。」


そう言うと、紅陽は再び駆け出した。

呂布も叫ぶ。

「行くぞ! 遅れをとるな!」


二つの方天戟が、竜の巨体を切り裂くように戦場を飛び交う。

竜は怒り狂い、咆哮を上げるが、二人の武はその巨体を確実に削っていく。


やがて、竜の身体が大きく震え、黒い瘴気が漏れ始めた。


紅陽の方天戟が喉元を裂き、呂布の方天戟が心臓部を貫く。

竜は絶叫し、巨体を崩しながら地に沈んでいった。


その姿はみるみる形を失い、黒い霧となって消えていく。


呂布は方天戟を肩に担ぎ、紅陽を見た。

「…紅陽といったな、また会おう。」


そう言い残し、呂布は赤兎馬を返し、戦場を去っていった。

その背中は、戦場の誰よりも誇り高く、そして孤独だった。


----


竜が霧となって消えたあと、紅陽は深く息を吐き、槍を収めた。

紅仁は周囲を警戒しながらも、戦場の空気が変わったことを感じ取っていた。


廠は竜の残滓が消えていく方向を見つめ、静かに言った。

「……今日はここまでだ。俺たちは本拠地へ戻る。」


紅陽が頷く。

「虎牢関の戦は、まだ続くでしょうが……我らの役目は果たしました。」


紅仁も槍を肩に担ぎ、廠の言葉に従う。

「廠様。戻って、次に備えましょう。」


廠は戦場を一度だけ振り返った。

「人の争いはどうでもいい。俺たちは異形を討つ者だ。」

その言葉を合図に、神軍は静かに馬首を返した。


----


連合軍の兵たちは、神軍の撤退をただ見送るしかなかった。


「……あれが、神軍……」

「呂布と並んで戦った……」

「人の軍じゃない……」


曹操はその背中を見つめ、深く息を吐いた。

「異形を討つ軍、か。乱世の中で、最も“人の争い”から離れた場所に立っている。」


袁紹は震える声で言う。

「だが……助かったのは事実だ。あの竜が暴れ続けていれば、我らは全滅していた。」


曹操は首を振る。

「助かったのではない。“見逃された”のだ。神軍は我らを守るために戦ったわけではない。」

その言葉に、幕舎の中は静まり返った。


----


竜が倒れ、戦場が静まり返った頃。

呂布は赤兎馬を返し、董卓の本陣へ戻ってきた。


董卓はすでに出撃の準備を整えていた。

鎧を締め直し、地図を広げ、兵の配置を確認している。


戻ってきた呂布に、董卓が聞いた。

「異形はどうなった?」


呂布は戟を肩に担いでいた。

「俺と、もう一人……紅陽とかいう者と倒した。」


董卓は眉をひそめる。

「紅陽? 知らぬ名だ。」


この世界の董卓は若く、呂布と同じ歳。

幼馴染として互いをよく知っている。


呂布は続けた。

「神軍の騎馬隊を率いていた男だ。」


董卓は目を細め、思い出すように呟く。

「神軍…異形を屠る者たちか。」

呂布は頷く。

「紅陽、強かったぞ。俺と肩を並べて竜を斬った。」


董卓は少しだけ笑った。

「ならば、味方であってほしいものだな。」


----


董卓は地図を指で叩きながら言った。

「異形を倒したなら、撤退するとしよう」


呂布は肩をすくめる。

「撤退?」

「ああ、撤退だ。何かいい案があれば聞くが、奉先」

「知らん。俺は戦えればいい。」


董卓は苦笑し、洛陽の位置を指差した。

「洛陽は守りづらい。連合軍が来ても、異形が来ても、四方に開けていて、どこからでも入ってくる。

だから献帝を連れて、長安へ遷都する。」


呂布は目を見開いた。

「……ほう。洛陽はどうするつもりだ?」

「民も皆連れていく。」

「どうやって?」

「帝が移ると言えば、ついてくるだろう。」


呂布は呆れたように言う。

「何だと?」


董卓は笑いながら呂布の肩を叩いた。

「心配するな、奉先。お前の家も、騎馬隊も最優先で移す。長安の方が守りやすい。異形と戦う時にな。」

「確かにな、だが、虎牢関はどうする?」

「あいつらは、本気で攻める気なんてない、わかるだろ?」

「それはそうだが」

「守兵を残して時間稼ぎする。その間に、長安に移ろう」


呂布は、この幼馴染が突然何を言い出すのかと、心底不思議に思っていた。


だが、董卓の判断は正しかった。


董卓軍は虎牢関に数万の兵を残し、董卓と呂布は洛陽へ戻った。

献帝に状況を説明し、遷都を決断。

民を連れて長安へ向かう大移動が始まった。

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