表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今度は三国志の真っ只中にいます  作者: 水原伊織


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/19

13.神軍壊滅、そして劉備軍来援

冀州の戦場は、もはや地獄そのものだった。

異形の群れが神軍の歩兵隊を喰い散らし、叫び声と肉を裂く音が入り混じる。

廠と紅仁だけが最前線に踏みとどまり、背後では紅陽の百騎が必死に側面を押さえていた。


その時だった。

遠くから、澄んだ角笛の音が響いた。

混乱の渦に沈んでいた戦場に、まるで風穴を開けるように。


「…この音は…!」


紅仁が顔を上げた瞬間、丘の向こうから整然とした軍勢が姿を現した。

青い甲冑、統一された槍列、揃った足並み。

その先頭には、白馬に跨った男がいた。


「廠殿ーー!! 援軍に参った!!」


劉備だった。

その背後には、関羽、張飛、そして彼らが率いる義勇兵たち。

数こそ多くはないが、全員が鍛えられた精鋭。

乱れた神軍とは対照的に、隊列は一分の隙もない。

廠は息を呑んだ。


「……劉備……!」


劉備が槍を掲げ、声を張り上げた。


「全軍――突撃!!異形を討ち払え!!」


その号令と同時に、義勇兵たちが一斉に駆け出した。

槍の穂先が揃い、盾が重なり、足並みが乱れない。

異形の群れが咆哮を上げて迎え撃つが――その前に、劉備軍の槍壁が突き刺さった。


「はあああああッ!!」


関羽の青龍偃月刀が異形の腕を断ち、張飛の蛇矛が異形の胴を貫く。


義勇兵たちもまた、恐れずに前へ進み、槍を突き、盾で押し返し、異形を一体、また一体と地に沈めていく。


廠の目に映ったのは、“軍”としての動きだった。


乱れず、怯まず、恐れず。

統率された軍勢の前に、異形の群れは次々と崩れていく。


(これが、あの蜀軍の元となる軍の動きか…すごいな)


やがて、最後の異形が関羽の刃に両断され、その黒い体液が地面に散った。


戦場に、静寂が訪れた。


異形の群れは、全滅していた。


廠は槍を下ろし、深く息を吐いた。

紅仁も肩で息をしながら、劉備軍の姿を見つめる。

紅陽の騎馬隊は健在だったが、歩兵隊は……もう誰もいない。


廠は劉備の方へ歩み寄った。

劉備は馬を降り、廠の肩を掴んだ。


「間に合ってよかった…廠殿。あなたがここで死ぬわけにはいかない」


廠は苦笑し、しかしその目は真剣だった。


「助かったよ、劉備。……だが、まだ終わっていない」


廠の視線の先には、黒々とそびえる砦。


張梁と張宝の旗が、風に揺れていた。


----


「……どうしてここに?」


廠が問うと、劉備は息を整えながら答えた。

「張世平殿から聞いたのです。廠殿が冀州の本拠地へ向かった、と。」


廠は目を見開いた。

張世平が――自分の動きを伝えたのか。


劉備は続けた。

「あなたが単身で冀州へ向かったと聞き、居ても立ってもいられませんでした。義勇兵をまとめ、急ぎ駆けつけたのです。」

その声には、焦りと安堵が混じっていた。

「間に合ってよかった……本当に。」


廠は小さく息を吐いた。

「助かったよ、劉備。もし来てくれなかったら……俺たちは全滅していた。」


紅仁が静かに頷く。

「殿。歩兵隊は……もう誰も残っていません。」


紅陽の騎馬隊だけが、背後で整然と控えていた。

百騎は健在だが、歩兵は壊滅。

神軍は、実質的に半壊していた。


----


ふと気づけば、砦の前は異様なほど静かだった。

黄巾賊の怒号も、異形の咆哮も、もう聞こえない。

砦の上に翻っていた張梁・張宝の旗だけが、風に揺れている。


廠は砦を見据えた。

「……静かすぎるな。」

劉備も同じ方向を見つめ、眉をひそめた。


「異形の出現に、黄巾賊も混乱したのでしょう。

しかし――張梁、張宝が黙っているとは思えません。」


紅陽が馬を寄せる。

「殿。砦の中で何かが動いている気配があります。」


紅仁も槍を構え直す。

「異形か……それとも張梁か張宝か。」


廠は深く息を吸い、槍を握り直した。

「どちらでもいい。ここで終わらせる。張角のいる場所へ―必ず辿り着く。」


不気味なほど静まり返っている砦を廠は見つめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ